第15話 メイドの話
セバスチャンの代わりのメイドは、リタという女性でした。
リタは、私と歳が近いこともあり、
日が経つにつれ、色々なことをお話するようになりました。
「ねえ、リタ。私が完璧じゃないから、セバスチャンに、愛想をつかされてしまったのかしら?」
「滅相もないです、お嬢様!」
「お嬢様は、完璧すぎるくらいですよ!」
「今は、こうしてお話できるようになりましたが……、以前は、話しかけるのも恐れ多いほどでございましたよ。」
そうよね、私、完璧になるように努力してきましたもの。
セバスチャンの基準には届いてないかもしれませんが、普通以上ではあると思いますわ。
「ありがとう、リタ。私も、あなたと話せるようになって嬉しいわ。」
「そうね……きっと、セバスチャンが求める完璧は、私たちが考えるよりも、もっと高いところにあるのね。」
私の言葉に、リタは、首を傾げました。
「お嬢様……。セバスチャンは、お嬢様に、完璧になって欲しいと言われたのでしょうか?」
「いいえ。直接言われたわけではないけれど……」
私は、リタに、幼い日の美術館の出来事をお話しました。
「そうでしたか。でも、お嬢様。セバスチャンは、完璧な絵はお好きかもしれませんが、お嬢様にまで完璧を求めていらっしゃらないと思いますよ」
「なんですって?」
それは、大変です。私の今までの努力は何だったのでしょう?
「そんな……。でも、セバスチャンは、私に駄目出しばかりしていますわ」
「それって、私に完璧になってほしいからじゃなかったの?」
リタは、ああ、とため息混じりに言いました。
「それは、愛情の裏返しではないですか?」
愛情の裏返し??
セバスチャンが、私に愛情??
「セバスチャンは、私に、これっぽっちも、好きと言ってくれないのよ」
リタをはじめ、その場にいたメイドたちが一斉に、あ――。と言いました。
「私たちから見たら、お二人は、どこからどう見ても、お互いに思いあっているようでしたよ」
うんうん、と頷くメイドたち。
お、お互いに思いあってるっ!?
それが、メイドたちから見た私たちなの??
私は、あまりの衝撃に、顔から首まで真っ赤になりました。
ま、まさか、セバスチャンも、私のことを……?
そ、それは、あまりにも都合のよい考えでございますわっ。
それでも、その可能性があることに気づいてしまい、私の中に、ポンッと植物の小さな芽が出たような気がしたのでした。




