第8話 ステータス開示イベント
色々なものを貰い家を出て向かったのは"暗栄の守護者"の東北支部。
天野さんからの紹介なのだが、
教えてもらっているのは住所だけ。
天野さん曰く「行けば何とかなる」とのこと
天野さんには珍しく説明が雑だが、
あの人の事だからこれが最善なのだろう。
実家からそれほど遠くなかった為その日の夕方頃には着いた
…着いたのだが、
その建物は普通の町中にある普通のビルだった
裏組織と銘打っているのだからやはりそれ相応の風格を持ち合わせているものだと思っていたのだが…
リア「普通ですね」
綾愛「…うん。あまりにも普通」
本当にここであっているのか疑い、
メモを何度も確認するが残念ながらここであっているらしい
期待が大きかった分かなりの肩透かしを食らいながら2人で中へはいる
中身もかなり普通だ。
あたりを見渡してるとすぐにスタッフの人がこちらへやってきた
「おまたせしておりました。綾愛様とリア様ですね。こちらでございます」
おぉ!なんかVIPになった気分!
ロマンあふれる今の流れに私は内心ワクワクする。
それは隣のリアも同じだったらしい
リア「今のかなりそれっぽかったですね」
小声でこちらに囁いてくるリア
綾愛「それっぽくなってきたな」
私も小声で返すが、
2人の声色には明らかに隠せないものが含まれていた。
スタッフさんに連れられエレベーターに乗ると、
そのまま階のボタンを複数リズム良く押す。
恐らく特定の操作をすることでしか行けない場所なのだろう
リアは初めて乗るエレベーターに興奮している
エレベーターが動き出し、
それを確認した後スタッフさんが口を開く。
「天野様からの伝言です。
『とりあえずは自分達の手札を理解してください。
色々教えてくれる先生を準備したので詳しいところはその人達に師事してくれ』とのことです」
予定通りではあるのだが、
天野さんが教えてくれるわけじゃないのか…
うまく話せるだろうか…天野さんは仕事できる人って感じで合わせてくれたから話せたけど…
5分ほどエレベーターは動き、ついに止まった
リアは乗り物酔いをしたのか吐きそうになっている。
正直私も結構きつい
スタッフさんはケロッとしてる所から乗り慣れているのだろうか
私達は後ろを付いていき、そこそこ歩く
エレーベーターの時もそうだったが、どれだけ広いんだここは
見かけ上はは普通のサイズのビルだったのだが…
スタッフの人が察したように説明をしてくれる
「主な業務は能力犯罪への対処ですが、一個人から国家規模まであらゆる任務を受理し、解決しています」
「その為の表向きの顔も複数あり、
この建物の外装はカモフラージュの一部でございます」
なるほど
裏組織とは言っているものの、
その実態は知る人ぞ知る暗黙の超大規模なよろずやといったところだろうか
そんなこんなで私達は一つの部屋の前に着く
「こちらでございます。
ここから先はお二人で、それでは失礼します」
そう言ってスタッフの人は来た道を戻っていった
私とリアは顔を見合わせ、
二人でその部屋にはいる
そこは…まごうことなき体育館だった
内装もサイズも体育館そのもの
なんで?
私の頭にはそれしかなかったがリアは物珍しそうに辺りを見渡していた
え〜…
なんかもっとかっこいい感じの施設かと思ってたんだけど…
2人がそれぞれの感想を持ち合わせていたとき
私たちが入ってきた扉とは別の扉の奥から声が聞こえてきた
???「その癖は直したほうが良いと昔から何度も言っているだろう。いい加減聞いてくれ」
???「これくらいの癖ニャンて対して問題にならないニャンよ!」
???「その慢心こそが君の悪癖だと何度言えばわかるんだ…」
コロコロとした鈴のような女の声と、
ツンツンとした凛のある男の声だった
奥の扉からその声の主が現れた
??「あ!あれが天野の言ってた子たちニャンね!」
???「初対面、ましてや大事な客人で今回の仕事を共にする人を"あれ"なんていうものじゃない」
???「いつもいつもゴーくんは小言がうるさいにゃん…」
???「君がちゃんとしていないからですよ…まったく」
そこには赤髪の癖っ毛で猫耳と尻尾のある少女と、
目にかかるくらいの長さの青髪の少年がいた
猫耳に尻尾って…もしかして天野さんの言っていた亜人族というものだろうか。
実在するとは…可愛いな
とりあえずお互いに自己紹介をする
綾愛は陰キャが出ないように、
リアはいつものように気品ある挨拶をした。
猫耳の少女が自己紹介をする
朱音「アタシの名前は朱音。見ての通りの亜人族ニャン。よろしくニャン!」
青髪の少年が自己紹介をする
律「僕は一条…一条律です。
主に裏方を担当しています。
こっちの子とは腐れ縁といった所ですね。
よろしくお願いします」
腐れ縁という言葉に朱音はぶーたれているようだったが律はそれを慣れたように流している。
仲よさげな二人だな
そんなときリアが珍しく真剣な表情をし、
一歩前に出る
リア「朱音さん…それ、触ってもいいですか?」
朱音「ニャ?」
リア「その耳です」
朱音「あぁ〜見たことニャかった感じニャ?
全然いいニャンよ!どうぞニャ!」
許可が降りたと同時にリアはその表情を柔らかいものへと変え、即座に飛び掛っていった
楽しそうにじゃれつく二人
残された私達
綾愛「なんか…す、すいません?」
律「いえいえ全然…むしろこっちとしても不安ですので…そちらが大丈夫なのであれば全然…」
なんやかんやありながら変な人たちではないだろう
早速本題に入る
当然のように律さんが説明してくれた
律「今回の依頼は最近できた宗教団体の視察、
そして状況によっては殲滅となります」
律「教主が不思議な力…"能力"を扱うらしく、
その力で教徒を集め、
良からぬことを企てているという情報が入った為、
その実態の確認と対処が今回の依頼です」
最初の仕事が宗教団体相手か…
それっぽいな
他にも教えてもらったことがあり、
それは依頼の危険度についてだ。
危険度に応じてランクがあるらしく、
D.C.B.A.Sがある中今回は推定Bランク。
推奨クラスは中級能力者レベルらしい
本来は朱音と律の2人で行う予定だったのだが、
天野さんが丁度いいからとねじ込んだとのこと。
天野さん一体何者なんだ?
報酬の取り分が減ると嘆く律
人が増えて楽しそう!友達になろ!とはしゃぐ朱音とそれに呼応するリア
楽しそうだ
そして任務をこなす前に、
どれほどの実力なのか…そもそも戦えるのかの確認をする必要がある為、
その確認と指導の役として2人は最適とされ配置されたらしい
でも具体的にはどうやって?なにをするのか?
そう問う綾愛に律が返す
律「僕の能力は主に情報の解析鑑定です。
今回の場合はその人物の色々な情報を得ることができ、
そこから戦闘能力を的確に判断し、最高効率で修行を進めるという算段です」
やっぱり律さんも能力者なのか
情報系…イメージにぴったりだな。
というか…
正直ここまでやってもらえる理由が分からない。
立場としては私達は依頼を外部から受注させてもらっている立場だ。
しかも今回の場合本来なら組織内だけで片付く仕事
ここまでやる理由がわからない
そんな事を考えていたら、
律さんが察したのか説明してくれる
律「詳しい話は分かりませんが、
天野さんが最重要事項と判断し、僕たちにわざわざお願いしてきたんです。
あの人が無駄な事をするとは思えないので、
こちらにも打算あっての行いでしょう。
ですのであまり気負いしなくてもいいですよ。
ウィンウィンの関係でいきましょう」
わざわざありがたい
第一印象とは異なり優しいなこの人。
わざわざ気を使ってくれている
それと天野さんが考えているのは
「例外」とリアについてだろう
外部からしたらどちらもコネクションを作っておきたいのはわかる。
それと律さんの口ぶりから天野さんはそのへんの詳しいことに関しては説明していないのだろう。
変に広めるのも良くないという判断だろう
ありがたい
律「こんなところですかね…
ということで時間はあまりありません、
早速修行に移りましょう」
綾愛「あっ、おねがいします」
その間に朱音とリアは、
リーちゃんと朱音と呼び捨てで呼ぶくらいには仲良くなっていた
律さんの能力は対象…この場合は生物の情報を肉体と魂に分けて細かく解析鑑定する能力らしく、
性別や名前、種族、実年齢と肉体年齢
純粋な身体能力とその戦闘技術とセンス
その個体の持つ基礎生力量と精度
所有する能力や特性、加護などなど…
挙げればキリがないほど
とはいえ見るためには条件がいくつかあるらしいのだが…今回の場合は大丈夫らしい
綾愛「できれば、プライバシーな部分と能力に関しては知られたくないんですけど…」
律「まぁ…いいですよ、わかりました」
こちらは能力を開示したのに…
という意が汲み取れる間だった。
すいません…でも迂闊に見せていい手札じゃないし…
まずは私から始め、10秒程度で終わった
名前:天織綾愛
能力:不明
特性:超反応 天賦の大器
総合能力値
物理攻撃力:D
物理防御力:D
機動力:D
生力量:S
生力精度:D
能力精度:D
…沈黙が走る
恐らく見方はさっきのランクと同じくアルファベット5段階評価なのだろうが…
身に覚えのないものもあるけど…
これ強くはないんじゃ…
いやまあそりゃそうでしょ!
だって私巻き込まれた側ですけど!!
そんな期待外れを見るような表情しないで!!
内心はそんなものだが実際の綾愛は最高に気まずかった
律「…まぁ色々ありますけど特性持ちに生力量Sですか…特性も僕はどちらも見たことない…
随分尖ってますねw」
綾愛「あ〜…そうですかねぇ…」
初めて律さんが笑った
笑ったがこんな所では見たくなかった…
律「いや、決して弱いというわけでは無いですよ。
能力は所持しているみたいですし、
特性も僕が分からないだけで強力かもしれません。
それに生力量Sは初めてみました。
他はともかく生力量は修行でなんとか出来るものではないので完全な才能です。かなり希少ですよ」
色々言ってくれている律さん
律「それにこれは慰めではないんですけど、
僕の能力は全部が見れるわけではないです。
僕の実力では鑑定できないレベルの強者には使えませんし、
強すぎる能力や特性などの力も鑑定に不明とでたり、そもそも存在を認知することもできません」
なるほど…
つまり「僕が暴けなかっただけでもっとあるかもよもしかしたらw」ということか…
いや正直期待してたよ
もしかしたら私めっちゃ強いんじゃないかって
ここから俺つえー始まるんじゃないかとちょっとは期待してましたよ
…現実はそう甘くはないらしい
ということで次はリアの番だ
呼びかけると朱音とリアがこちらにやってきた
ずいぶん仲良さそうだった
…なんでもうそんなに仲いいんだよ
見せつけられた現状によって荒んだ心があらゆるものに敵意を向けてしまう…うぅ…
そんなこんなで解析が開始する
名前:エクセリア・アルカディア
能力:不明
特性:不明
総合能力値
物理攻撃力:A
物理防御力:B
機動力:A
生力量:A
生力精度:S
能力精度:D
おお~
二人からそんな声が出た
朱音「何となく分かってたけどリーちゃんやるニャンね!」
自分のことのように嬉しそうな朱音
律「…ここまでとは想像以上です
うちの上層部クラスは余裕でありますね…
なるほど…」
何かを考えるように額に指を当て思案する律
リア「いやいやそれほどでもぉ」
わざとらしく謙遜するリア
…私の時とは随分態度が違いますね
そんな事言えるはずもないのだがそう思わずにはいられない…
朱音さんに関しては見てもいなかったし
いやまぁいいけどさぁ!
それにしてもやっぱりリアって強いんだなぁ
異界のお姫様って言ってたし…
これが才能の差か…いや努力の差も勿論あるんだろうな…
朱音「リーちゃんうちの部隊に来てほしいニャ!!
ちょうど最近一枠抜けが出来ちゃって困ってたとこだし!リーちゃんになら良いポジション用意するニャ!!」
律「僕の部隊に…
いや、もはや僕の部隊じゃなくてもいい、
東北支部に来ませんか?
福利厚生はしっかりしていますし、
リアさん程なら直ぐに昇級も決まると思います。
僕からも上に推薦しますよ」
いつの間にか2人による熱烈なスカウトが始まっていた
ちょいちょいその子私の片割れなんですけど
リアが入るのは良いけどじゃあ私も入れてくださいよ、お二人さん
そんな事を冗談半分本気半分で考えていると
リア「誘いは嬉しいですけどごめんなさい
私はここに定住する気ないですし、それに…」
一息ためたリアはこちらを振り返り、
二人にではなく、私に言うように
リア「私は綾愛と一緒が良いので」
恥ずかしげもなくそう言い切った
律「ならしかたないですね」
これは無理だと早々に見切りをつける律
朱音「ニャンで〜!!
じゃあアーちゃんもアタシの部隊に入れるから〜!
それじゃだめニャンか〜?」
私をオマケ扱いするのを隠そうともせず、
リアにすがりつく朱音
…てかいまアーちゃんって言った?
これが陽キャか…恐ろしい…
律「そこらへんにして下さい。
これ以上こちらの品位を疑われる行動は慎んでください」
そう咎める律
いやいやもう手遅れというか既に期待してたものよりはだいぶ違うから気にしなくても良いというか…
律「…ではお二人の解析も終わった所で、
早速修行に移りましょう。」
色々あったが遂に始まる修行編
初手からオマケ扱いで肩身狭い状況…
なんとか邪魔にならないようお姉ちゃんは頑張るよ妹達よ…
実家で今頃夕飯でも食べているであろう妹たちへと思いを馳せ…遠い目をする綾愛だった
参考までに総合能力値のランク分け基準
D:一般人と同等。もしくは非能力者の限界値
C:初級能力者クラス
B:中級能力者クラス
A:上級能力者クラス
S:人類最強クラス




