第9話 暁の子、明けの明星
…周辺には何もない。
いや、何もかもがなくなってしまった
先程までそこに存在していた人類の叡智の結晶…
その数々が一瞬にして無に帰した
原因は何だったのか…何が起こったのか…
眼前に広がるその世界は…
荒廃の一途を辿る終末と変していた
─────────────────
え〜…現在私、
天織綾愛は例の教団の教祖らしき人物の頭を踏みつけています
何がどうしてこうなってしまったのか…
リア「流石綾愛…
そのまま足を舐めさせ心身、そして立場ともに完全服従させるんですね。流石ドS」
綾愛「いきなり何!?しないよ!?
私一度でもそんな事した!?」
朱音「まさかアーちゃんがそんな癖を持っていたとは…想像以上の逸材ニャンねぇ…」
律「綾愛さん。
ある程度は良いですけど今は仕事中です。
私情は挟みすぎないようお願いしますよ」
綾愛「なんで!?私こんなイジられるようなキャラだっけ!?」
そんなふざけた会話をしてはいるが、
いま私達がいるのは例の宗教団体。その本拠地。
周囲には無力化させた武装集団と抵抗してきた一般教徒。
そして私の足元には今回の黒幕である教祖。
その見た目は教祖といえばという感じの胡散臭い雰囲気をまとったハゲの初老のおじいさん。
ここまでの流れはかなりスムーズだった。
あの日…律さんと朱音と合流してから3日が経った。
その間私達はそれぞれの修行を積み、
それぞれのやるべきことを成した。
正直ある程度知識は得られはしたが大きな成長が出来たとは思えなかったのだが、
昨日2人からのGOサインが出た為私達は依頼へと向かった。
事前にアポを取り向かい、
指定された建物に入った途端に銃声…
そして交戦という流れだ。
こちらの素性は隠していたはずなのだがなぜ気づかれたのか…
それとも気づいていたわけではなく、
誰が来ても処理するつもりだったのか…
その辺は後で聞くのだろう。
そんなこんなで私達は初めての依頼を難なく達成することができた。
今は"掃除屋"という諸々の後処理をしてくれる部隊に連絡を済ませ、到着待ちということである。
リア「とりあえずこれで依頼達成…ってことで良いんですよね?」
律「はい。初にしては出来過ぎなくらい上出来です。
依頼を始める前最初に僕達は手を出さないと言いましたが…
正直本当にお二人だけでこなせてしまうとは思っていませんでした。それに…」
なにか言いにくそうに…
言葉を探しているような間をとる。
律さんが言い渋っていると朱音さんが割り込んできた
朱音「アーちゃんが思ってたよりも雑魚じゃニャかったのがデカかったニャンね!」
きっぱりとそう言いきった朱音と、
まぁそういう事と言うように律さんがこちらを気まずそうに見てくる。
綾愛「褒め言葉として受け取っておきます…」
いやまぁ厳しい言葉ではあるがその通りでもあるし…
逆に捉え方としては良いふうにも捉えられるし…
ここは喜んでおこう…うん。それで良いはず。
リア「そういえば綾愛、
結局その剣は使わなかったですね」
綾愛「まあ剣使っちゃうと絶対に怪我させちゃうだろうから余裕があるなら使わない方がいい…ってのと単純に素手のほうが慣れてるからさ」
リアが言った通り、
私の背中と腰には中小それぞれ2本の剣が帯刀されている。
反りのある中刃とストレートの短刃の2つ。
これは律さんからの教えであり、
私の筋力から考えて簡単にダメージを与えるには刃物が効果的…とのことらしい
たしかにそのとおりではあるのだが、
あいにく私は刃物の扱いには昔からどうしても慣れず…結局今回も素手で戦うことになった。
朱音「一回手合わせした時にも感じたけど、
アーちゃんかなり近距離やるニャンね」
律「僕も同意見です。
最初はどうしようかと思いましたけど綾愛さん単純な数値以上に動けるみたいですし、
センス…というより慣れているような動きをしていて疑問に思っていたんですけど実戦を見て確信しました。
場馴れした冷静な判断と動き…
類稀な近接戦闘センス…
修行の時よりも遥かに動けていたようにも見えた事から結構な修羅場をくぐっていますね。
それならそうと教えてくれたら良かったのに。」
綾愛「ん〜…あれを修羅場と言ってもいいかは分からないんですけど…まぁ戦闘経験がゼロってわけではないですね…」
正直この話をするのは色々長くなって面倒くさい…
それと恥ずかしいので話したくないしバレたくなかったのだが…
そんなふうに一人悩む綾愛
そんな綾愛にリアがジト目を向ける
リア「ていうか、やっぱり綾愛戦えるんじゃないですか…何回もこの話しましたよね?
なんで言ってくれなかったんですか?」
綾愛「うっ、いやまぁ戦えない事もないけど、
能力とか使えないし生力とかも知らなかったし…
正直戦えるって言い切れるほど自信もなくて…」
リア「ふ〜ん…なんか私以上に場馴れしてるように見えましたし…ふ〜ん…」
いやまぁ場馴れに関しては黒歴史…中学時代やってたあれが理由だろうなぁ…
これくらいのレベルの依頼だったら昔は一人で何回もやってたし、
今回は二人なのもあって正直思ってたより楽だったのもあってそう見えたんだろうなぁ…
綾愛「…まぁ過去に色々ありまして…」
リア「ふ〜ん…」
ジト目のままこちらに近づき、私の直ぐ側まで来ると
次は顔を近づけて来る
リア「じー…」
綾愛「ちょっ…ち、ちかいって…」
もう少し近づけば唇が触れてしまいそうな距離
上目遣いのまま目を合わせてくるリアに、
綾愛は目を合わせたり反らしたりを反復する
リア「…私に嘘…つかないで」
綾愛「ひゃっ、はい…」
なんとか返事をするとリアはゆっくりと顔を離し一息つく
リア「…信じますからね」
わざとらしく笑うリア
冷や汗ダラダラの私
生唾を飲んでこちらを見ている二人
朱音「…リーちゃん…すっごいエッチニャン…」
律「…すぅ〜…僕は何も見てませんよ…ハイナニモ」
別にリアと私はそういう関係じゃないですからね?
リアがたまに暴走するだけです。
決して私はリアにそういう感情があったり浮かべた事なんて…ない…はず…たぶん。
いつの間にか掃除屋が着いていたようで、
話を聞かれていたらしくかなり気まずかった。
…こうして私達の初の依頼は成功に終わった。
────────────────
東北支部近くにある社員寮…その空き部屋を貸してもらえることになった。ありがたい。
…というか裏組織にも社員寮とかあるんだな…
ほんとに福利厚生ちゃんとしてるのかも……
2部屋借りれると思ったのだがなぜが1部屋だけらしい
律さん曰く部屋が足りなかったらしいが…
なにか裏のあるような含みのある言い方だった。
かなり大きい建物であり人もかなり入っているらしい。
ここにいる人たち全員が裏組織所属だなんて想像つかないな
そんなこんなで私達4人は今、
私とリアの部屋にて祝賀会を行なっていた。
朱音「それでは、リーちゃん&アーちゃん2人の初依頼達成を祝してー…かんぱーい!!」
リア「カンパーイ!!」
律「乾杯」
綾愛「…か、かんぱーい…」
4者それぞれが祝賀を表す
テーブルには今2人が買ってきてくれた料理が並べられ、それを4人で囲む。
私達2人は既にお風呂を終わらせ貸し出しの寝巻きを着ている。
素材が良いのか着心地がよい。
それに比べであっちの2人は…
リア「その服って組織の制服的なあれなんですか?
私達もラフな格好ですし先に着替えて来ても良いですよ?」
2人が着ているのは裏組織っぽい黒装束。
デザインはそれぞれ少し違い、
律さんは上着が腰辺りまでの長さがありフードが付いていて12の数字が刻まれ、
朱音は丈が短く尻尾を出すための穴があり、フードも猫耳型になっていて、18の数字が刻まれている。
朱音「あぁ、全然良いニャンよ。
これ見た目よりも動きやすいし着心地良いニャン。
よくこれでそのまま寝ちゃうくらいニャン」
律「それはふつうにやめてください。
替えは多く無いんですから」
朱音「えぇーそんな事言ってるけどゴーくんだって良くそのままスーパーに買い物行ってるニャんよね?
さっきだって2人で行ったし」
律「それはまあ…」
そのままスーパー行ったのか…
正直事情を知らなければ不審者に見える格好だが…
リア「それと制服で言えばずっと気になってたんですけど、
その数字って何か意味があるんですか?ナンバーとか?」
律「はい、その通りナンバーですね。
このナンバーが付いているのは組織に所属している能力者だけで、
数字が小さければ小さいほど組織に貢献している…
もしくは組織にとって重要な存在であるという証…ランキングみたいなものですね。
…私のほうが数字が少ないという事はつまりそういう事ですね」
朱音「もぉーゴーくん意地悪ニャン!!
でもでもゴーくんとの模擬戦じゃ一回も負けたことないニャん!!アタシの方強いニャン!!」
律「僕は君と違って正面戦闘が得意なわけじゃないからね。君の得意と僕の不得意で競ってもしょうがないと僕は思うけど?」
朱音「もぉー!!ゴーくん意地悪!!」
ケンカ…のように見えるが2人の様子からはむしろ仲の良さがよく伺える。
ほぼ痴話喧嘩みたいなものだろう
綾愛「さっき私たちにあんな事言ってたけどこの2人も人の事言えなくない?」
リア「全くの同感です。
見せつけてくれちゃってますね。
…私達もヤッちゃいます?」
綾愛「ちょっとまって何を!?
私達別にナニもした事ないでしょ!?」
リア「綾愛…ナニ想像してるんですかぁ?
だからエッチとか言われるんですよ…エッチ(ニヤニヤ」
綾愛「なっ!どっちがだよ!!」
そんなふうに痴話喧嘩したり、色々話したり、
律さんが持ってきたゲームをしたりしながら祝賀会…という名の夜更かしを楽しんだ。
…夜は更け時刻は25時を回る頃。
名残惜しいがそろそろ潮時の頃だろう。
律「ではそろそろ僕達は家に帰ります。ほらいくよ」
朱音「えーもっと2人と話したいニャン…」
律「時間も時間ですし、
明日も一応業務はあるんですから帰りますよ。
お二人も今後の話をしたいので明日適当な時間で良いので顔出しに来てください。…ほら行くよ」
朱音「んーゴーくんおんぶ…」
律「…仕方ない人ですね…ほら」
小さい体に少女を背負う。
律「今日は本当にお疲れ様でした。
今後も良い関係を築いていきたいと思ってます。
仕事でも…プライベートでも」
リア「はい!ぜひよろしくお願いします!
今日はお疲れ様でした」
綾愛「お疲れさまです」
最初はどうなるかと心配だったがふたりともとても良い人で仲良くなれたと思う。
リアと出会ってから私は…私の周りは大きく変わった。
最近はとても充実している。このままこの仕事を続けるのも良いだろう。
給料もよく、やり甲斐もある。
そして良い同僚と…良い相棒もいる。
リアも最初はぶーたれるかもしれないが、
きっと私と同じ気持ちの筈だ。
本当にリアには感謝してもしたりないくらいだ。
綾愛「ありがとう…リア」
リア「いきなりどうしたんですか?急にあらたまって」
綾愛「なんだろ…
今言いたかったの。素直に受け取って」
リア「ふふっ…そうですか、じゃあ受け取っておきます。それと私もありがとうございます。綾愛」
とても心地よい時間だった。
こんなによい気持ちになったのは生まれて初めてかもしれない。
一度…いや何度も世界に絶望し、
真っ黒にしか見えていなかった…
だけど今ではこんなにも明るい。
将来にも希望が見えてきた
幸せというのはこういう満たされた感覚を言うのかもしれない。
そんな事を思っていた
律さんが扉に手を掛けて開ける
扉が開いた
だがそれは内側からではなく外側からだった
律「ん?」
扉の先には黒髪長身の青年
一見普通の青年だ
だがなんだこの違和感は…何処かで感じたことのあるこの感覚…臭い…気配…
???「私の駒を壊したのは君たちですね?」
不意だった。誰も動けなかった。
???「また壊されても面白くないので消えてもらいますね」
気づいてしまった。
これは血の匂い…死の気配
今まで感じたことのないほどに強く…
隠そうとしても隠しきれないほどにこびり付いている
私は気づけた
だが動けなかった
【堕天の翼】──晨星の光──
そう世界に響いたと同時…
同じく世界が光りに包まれる
誰も動けなかった
…一人の少女を除いて
「ゴーくんっ!!」
─────────────────
綾愛「いき…て、る?」
意識が朦朧とする
身体中が痛むが動けはするだろう
視界がまだぼやけている
…そうだ!みんなは!?
綾愛「リア!律さん!朱音さん!いる!?」
リア「はい!なんとか!」
律「僕もなんとか…」
一つ足りない…
もう一人来るべき返事が返ってこない
視界が開けてきた。
…周辺には何もない。
いや、何もかもがなくなってしまった
先程までそこに存在していた人類の叡智の結晶…
4人で過ごした部屋…
それどころか建物…
さらには街…
その数々が一瞬にして無に帰した
原因は何だったのか…何が起こったのか…
眼前に広がるその世界は…
荒廃の一途を辿る終末と変していた
私達3人はほぼ横並びの位置にいた
…そしてその少し前…
そこには血塗れの亜人の少女…朱音がいた
律「朱音!!」
朱音「こっちに来ちゃだめニャ!!」
今にも倒れそうな体を支えながら、こちらに振り向きもせず絶叫する彼女。
その彼女の先…上空には青年が変わらぬ姿で…
…いや、白い片翼の翼を靡かせ君臨していた
???「先の一撃に反応し、仲間を護ったんですか…
ケモノ風情にしては頑張りましたね。名は?」
悠々と…気高く傲慢に上からそう告げる青年
朱音「お前に名乗る名前ニャンて持ち合わせてないニャン!!」
少女が唸る
その真紅の髪を耳を尻尾を逆立たせ威嚇する。
…しかしそれは恐怖から来るものにしか見えない
???「そうですか…では私が先に名乗りましょう」
左手を天へ掲げ、右手を地…私達へと降してその青年は神々しくもその名を口にする
サタン「私の名前は"ルシファー"またの名を"サタン"
"明けの明星"にして"傲慢"を冠する者です」
人間ならば…
人界にいる者ならば誰もが知るその天使の…魔王の名
その名を冠するにふさわしいその神聖と魔を纏いしその青年を前にして私は身動きが取れなかった。
それどころか呼吸すら忘れ…ただただ圧倒されていた
それは隣りにいる二人も同じようだ
だが真紅の少女は違う。
ただひとり…
相対することすら敵わないその者に対し吠える
【猫牙の王】──三尾──
彼女の気配が…見た目が変化していく
身体は1回りほど大きくなる
髪は背中まで伸び尻尾が3つに増えた。
彼女の周囲にはその膨大な出力によって可視化された紅い生力が立ち昇っている
これまで見てきたどんな生物よりも力強く…
その命を燃やしているかのように見えた
その変化を前に律が誰よりも早く反応する
律「だめだ朱音!!それ以上その姿になっちゃだめだッ!!」
その声に彼女が反応し、
初めてこちらを振り向いた
…その顔の半分は既に何もなかった
皮膚が焼け焦げ、表面が抉れていた
律が息を呑む
…彼女は笑った
朱音「ゴーくん…逃げて!!」
いつもと変わらないように少女は力強く、
可愛らしい笑顔を浮かべてそう告げた。
それだけ言って彼女は標的に向き直す
サタン「ただの猫ではないと思っていましたがなるほど…猫族の王器でしたか…
ですが私があなた達を逃がすとでも?
それを許すとでも?」
サタンがこちらに手をかざす、
そこには恐らく先の光と同じものが溜められている
朱音「お前の許しニャンて要らないニャン!!」
猫の少女が踏み込み…構える
律は判断した
彼らしく合理的に
律「二人共、僕の手につかまって!!早く!!」
リア「逃げる気ですか!?それじゃ朱音が!!」
リアが叫ぶ
それは人として…道徳的には正解なのかもしれない
だがそれは現実には通用しない
綾愛「くっ!!」
綾愛がリアを殴りつけ意識を堕とす
そのまま即座にリアを抱え律のもとへ跳ぶ
律「すまない…綾愛は賢いですね」
感情を殺してそう言う律
綾愛「…律のほうが賢いよ…賢すぎるほどに…」
寂しそうに綾愛は告げ、淋しそうに律は聴く
律が腕に付けていたリングが光ると3人はその場から消えた
朱音「…許さニャいとか言ってたわりにはわざわざ待ってくれるニャんて…何考えてるニャン?」
サタン「私の一撃を防ぎ切った貴方への褒美ですよ。
ですが次はない」
光が強く輝き出す
その光はこの世界において今最も死に近い力の化身であろう
少女は覚悟した…自分の死を
少女は思い返す…これまでの人生を
サタン「止めれるものなら止めてみろ…獣」
この光の奔流を止められるものなど今ここにはいない
だが少女は立ち向かう
勝てないと分かっていても…
足止めすらままならないと分かっていても…
それでも少女は抗う…
最後の最後まで言えなかったこの気持ちを…言葉を
もう届かない
もう会うことのできないあの最愛の人への気持ちを
彼女は彼女らしく…目一杯大きな声で…
ここにはいない彼にも届くように叫ぶ
朱音「大好きだったよー!!ゴーくん!!」
"朱音"が叫ぶ…最愛の人への最高の愛情を
【堕天の翼】──晨星の光──
世界は…朱音は光りに包まれた
名前:朱音
性別:メス
年齢:19
身長:164cm
種族:亜人(猫)
所属:暗栄の守護者(No.18)
能力:『猫牙の王』
特性:野生の勘 第六感
備考
赤髪赤目の猫型の亜人の少女。
性格は陽気で勝ち気で負けず嫌い。
幼少期捨てられていた所を天野に拾われた後、
才能を見込まれ組織に所属。
同じく捨て子で天野に拾われた律とは幼少期から共に成長した。
律に好意を抱いており本人は隠しているつもりだが、
律以外の全員にはバレている。
彼女の能力は三段階でギアを上げることが出来る能力で、
上げるたびに全ステータスが大幅に上昇するが、
その分身体へのダメージも上がっていき、
最大である─三尾─は寿命を消費する。
本能と感情の赴くままに生き、
最後の最後まで彼を愛し…信念を貫き通した少女




