15-3
外は冷たい風が吹いていた。
駅のそばの店は、どこもクリスマスカラーで彩られていて、流れてくるのは明るいクリスマスソングばかりだ。
「じゃあ、ここで」
駅前の広場で響が立ち止まる。
あたしは階段を下りてバス乗り場へ、響は別の階段を下りてライブハウスへ向かうから、ここで別れなければならない。
「うん……」
でも本当はもう少し一緒にいたかった。
話したいことはたくさんあったし、涙の一粒もこぼさない響のことが気になっていた。
そういうあたしも、まだ頭の中がふわふわしていて、泣くことなんて忘れていたけれど。
響が背中を向けて、ひとりで人ごみの中に消えていく。
あたしはそこに突っ立ったまま、そんな響の後ろ姿を見送る。
『レイジみたいになりたかったんだよ、俺は』
さっき聞いた響の言葉が、頭の中をぐるぐる回る。
やがて響の姿が見えなくなると、あたしはギターを抱え、バス乗り場に続く階段を駆け下りた。
その夜、あたしは夢を見た。
いつもの駅前広場で、あたしはレイジと歌っている。
ギターを弾いているのは響で、時々あたしたちに合わせて口ずさむ。
それを見ている糸ちゃんは、幸せそうに微笑んでいる。
すごく楽しくて、心地よくて、嬉しくて……だけどあたしはひとりで泣いている。
「歌ってみない?」って言ったのはレイジだよ?
「ひとりでやるんじゃない。俺たちもついてるから」って背中を押してくれたでしょう?
「土曜日に会おうな」って笑って手を振ってくれたじゃない。
三人でライブをする約束、まだ果たしてないよ、レイジ。
目を覚ました時、あたしはやっぱり泣いていた。
声があふれそうになって、枕に顔を押しつける。
だけど叫びたい衝動を抑えきれず、あたしは枕に向かって声を上げた。
もしかしたら隣で寝ている糸ちゃんに聞こえてしまったかもしれない。
でも気持ちをコントロールできなくて、頭がおかしくなりそうだった。
思い切り叫んで泣いたあと、響のことを思い出した。
響はどうしているだろう。
あの何にもなくなった部屋に、たったひとりでいるのだろうか。
たくさんの思い出と、やるせない後悔を抱きしめて、声も出さず涙も流さず、背中を丸めてじっと耐えているのだろうか。
カーテンが開いたままの窓から、月の明かりが差し込んでいる。
今日はクリスマス。もしサンタクロースがいるのなら、ここにレイジを連れてきて欲しい。
レイジはきっと笑うだろう。
涙でぐしゃぐしゃな顔をしたあたしを見て「泣くなよ」って言って笑うだろう。




