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その夜あたしは絵里ちゃんと電話でたくさん話した。
今まで言えなかったこと。言いたかったこと。
ありがとうもごめんねも、たくさん。
そして絵里ちゃんと会う約束もした。
来週末に絵里ちゃんがあたしの街まで来てくれるという。
「ほんとに来てくれるの?」
『うん。つぐみちゃんの住んでる街、見てみたいし。朝早く出れば夕方までに帰れるよ』
「嬉しい。ありがとう、絵里ちゃん」
『わたしも嬉しい。つぐみちゃんに会えるの、楽しみにしてる』
来週の土曜日の約束を確認して電話を切った。
アプリを閉じようと思って見た画面に、「ヒビキ」の名前があった。
あたしはその名前に指をのせる。
だけどやっぱり消すことはできなくて……今日も電源を切って、布団の中にもぐりこんだ。
絵里ちゃんと会うことを糸ちゃんに話したら、「服を買いに行こう」と誘われた。
「だって、久しぶりにお友だちに会うんでしょう? たまにはオシャレしていきなよ」
あたしはいつだって地味な色のパーカーにジーンズだったから、糸ちゃんは気になっていたそうだ。
あたしは何とも思っていなかったけれど。
平日の午前中、糸ちゃんと一緒に買い物に行く。
ここに来たばかりの頃も、こんなふうに学校を休んで、美容院やハンバーガーを食べに行ったことを思い出す。
あの日初めてあたしは、糸ちゃんにレイジのことを話したのだ。
レイジは、今ごろどうしているだろう。
病気は大丈夫なのだろうか。
響はレイジを病院に行かせることができたのだろうか。
気づけばそんなことばかり考えているくせに、あたしは何も変わらない。
糸ちゃんは「これかわいい!」「こっちもいいね」「試着してみなよ」と、あたしの服を選ぶのを自分のことのように楽しんでいる。
でも糸ちゃんが喜んでくれると、あたしも何だか嬉しくなる。
結局、ふわふわした白いセーターとチェックのスカートとキャメルのダッフルコートを糸ちゃんが買ってくれた。
それから靴屋さんで茶色いブーツと、おまけに赤いニットの帽子も。
「いいの? こんなにたくさん……」
両手に紙袋をぶらさげて、糸ちゃんを見上げる。
「いいの、いいの。だってすっごく似合ってたし、かわいかったよ、つぐみちゃん。ヒビキくんに会う時も、それ着ていきなよ」
あたしが黙ったら、糸ちゃんは優しく微笑んで言った。
「ほんとは会いたいんでしょう? ヒビキくんとレイジに」
あたしは何も言えなかった。
何も言えないあたしの背中を押すように、糸ちゃんがぽんぽんっと二回叩いた。
学校を休んでいる間、あたしは糸ちゃんに相談して、毎回食事を作る担当にしてもらった。
糸ちゃんは仕事をしているのに、あたしは学校をサボっているだけじゃ悪いと思ったからだ。
それから部屋の掃除や洗濯もした。
お母さんとふたりで暮らしていた時は、いつもやっていたから一通りはできる。
あとは本を読み、ワークを使って勉強もした。
学校で大勢の友だちと話したり遊んだりするのは苦手だったけど、勉強をするのは別に嫌いではなかった。
そして時々、糸ちゃんと一緒にガラスのアクセサリーを作る。
青い空の色の他に、透き通った赤やピンクのガラスも作った。
それをつるつるに磨いてチェーンや紐をつけてペンダントにする。
「誰かにプレゼントしたら?」
糸ちゃんに言われて考えた。
そうだ、絵里ちゃんにあげよう。
どんな色が似あうかな。喜んでもらえるといいな。
あたしは来週の土曜日がさらに楽しみになった。




