山と道
どこまでも広がる平原の真ん中に伸びる道を、1組の少年と少女が歩いていた。
「この大地のずっと向こうってさ、何が広がってるんだろうね」
「さぁ? 考えたこともなかった」
「気にならなかったの?」
「前も言ったろ。あのまま畑仕事して暮らすんだろうなーって考えてたから、外の世界のことなんて考えもしなかったって」
「はいはい。そうでしたねー」
だらだらと話をしながら歩く少年と少女。
とりあえずは集落を転々としながら、目的地である『山』を目指していく予定だった。
集落へは、この長いまっすぐな道に分かれ道があり、その先に集落があることが多い。それを目印にして集落を探す。集落と集落の間は、だいたい徒歩で丸一日ぐらいの距離があり、少女が通ってきた集落では、一泊して疲れを取り、それから次の集落を目指すという形式を取っていた。
「このまーっすぐな道ってさ、なんで出来たか知ってる?」
「なんか『山』を目指した聖人とやらが、目印代わりに作ったんだろ?」
「うわー、ざっくり」
「そのへんは伝説の話だと思って、真面目に授業を受けてなかったんだよ。まさか自分がそれを探そうとするなんて思わなかったし」
「オホン。では教えてあげましょう」
「よろしくお願いします」
そこまで大きくない胸を張った少女は、人差し指をピンと立てて話し始めた。
「昔々、『山』を探した聖人がいました。その聖人は全部で4人いて、東西南北の4方向に向かってそれぞれ歩きだしました。いつか『山』を見つけた時のためにと、平原の草が生えないようになる粉を撒きながら歩いたそうです」
「それがこの道ってわけ?」
「その通り。だからこの道は東に向かって伸びてるから、東の聖人が歩いた道ってこと」
「そんなことはないだろ」
「へ?」
自慢げに語っていた少女は目を丸くして少年を見た。
その少年は足を止めて後ろを向く。
「もしかしたらあっちに向かって進んでった西の聖人が歩いた道かもしれないだろ」
「あっ・・・」
「・・・今気づいたのかよ」
「・・・戻る?」
「嫌だ。どんな顔して出てきた集落に戻ればいいんだよ。『逆だったから戻ってきましたー』なんて言うわけにはいかないだろうが」
「そ、それもそっか」
「第一、この世界の果てがどうなってるのかもわかんないんだから、どの方向に進んでも一緒だろ。もしかしたら西の聖人は全然山を見つけられなかったけど、北の聖人はすぐに見つけられたかもしれないだろ。だったらどこに進んでも一緒だ」
そう言った少年を少女はホヘーと声を出して感心した。
「意外と考えるとこは考えてるんだね。ちょっと見直した」
「プラス思考と言ってくれ」
少年が東の聖人の歩いたと思われる方向に歩いていったので、少女は小走りでその隣に追いついて並んで歩いた。
その『道』の始まりには続きがあり、そのうち4方向に分かれた元となる場所には、聖人の帰りを待つ家族や友人の手によって、いつ聖人達が戻ってきても恥ずかしくないようにと、ものすごい『都市』と呼ばれる経済が著しく発展した町が存在しているという。
しかしこれも推察と想像からできた伝説と呼ばれるものであって、実際に存在しているかどうかはわかっていない。何人かの旅人が、『山』ではなく『都市』にたどり着いたらしいが、その旅人が戻ってくることはなく、そのまま『都市』に住み着いたか、途中で生き倒れてしまったために、集落や町には伝説としての『都市』となっている。
実際に旅人が『都市』にたどり着いたかどうかはわからない。
きっとその旅人の家族や友人が広めた噂やデマなのかもしれないが、所詮は伝説である。
『山』を見たこともなければ『都市』も見たこともない。
道の先に何があるかも少年と少女はわからないのだ。
それでも少年と少女は歩いていくのだった。
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