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第1話 「あの日、言えなかった『好き』の続き」

初恋は、叶わなかったからこそ忘れられないのかもしれない。


もし、あのとき告白していたら。


もし、あと少しだけ勇気があったら。


もし、好きだと伝えられていたら――。


そんな「もしも」を、大人になってから思い出したことはありませんか。


高校一年生の春。


前の席に座っていたマミと、後ろの席に座っていたユウキ。


授業中なのに振り返って話しかけてくる彼女。


それを楽しみにしていた彼。


数学の先生から、


「二人はお似合いですね!」


なんてからかわれるくらい、二人はいつも一緒に笑っていました。


お互いが、お互いを好きだった。


けれど、十五歳の二人には、その気持ちを「恋人」という形にするための、ほんの少しの勇気がありませんでした。


やがて二人は別々の道を歩きます。


違う恋をして。


失恋をして。


学生から社会人になって。


初恋を、青春の思い出として胸の奥にしまって。


もう二度と、あの頃には戻れない。


――はずでした。


二十三歳になったある日。


母校・花園高校から届いた、一通の文化祭の招待状。


何気なく母校を訪れたユウキが、人混みの向こうに見つけたのは――。


ずっと忘れられなかった、初恋の人でした。


「あ……」


「あっ……!」


十年近い時間を越えて、二人の時間が再び動き始めます。


これは、運命の相手と出会う物語ではありません。


ずっと前に出会っていた運命の人に、もう一度恋をする物語です。


高校生だった二人には言えなかった言葉。


大人になったからこそ分かる、本当の気持ち。


「あのとき、私も好きだったよ」


その一言が、止まっていた初恋を再び動かしていく。


恋人になって。


すれ違って。


抱きしめ合って。


同じ未来を夢見るようになって。


やがて二人の「好き」は、恋だけでは終わらない大きな愛へと変わっていきます。


もし、あなたにも忘れられない人がいるのなら。


もし、「あのとき伝えていれば」と思う言葉があるのなら。


ユウキとマミの物語を、少しだけ見守っていただけたら嬉しいです。


遠回りした時間さえ、いつか二人の宝物になる。


これは――


初恋を諦めきれなかった二人が、十年近い時を越えて、あの日の「好き」の続きを始める物語。


『初恋は、十年越しに花開く。』


――あの日、言えなかった「好き」を。


今度こそ、君に。

挿絵(By みてみん)


「あっ……!」


「えっ……うそ」


土曜日の朝。


秋晴れの空の下、花園高校の正門は文化祭を楽しみに来た人たちで賑わっていた。


焼きそばの香り。

吹奏楽部の演奏。

制服姿ではしゃぐ在校生。


懐かしい空気に包まれながら、ユウキは校門をゆっくりとくぐる。


「……変わってないな」


二十三歳。


大手営業会社に勤めて一年目を終えたばかり。


平日は数字に追われ、休日は疲れて寝て終わることも多い。


そんな毎日を送る中、一通の封筒が実家に届いた。


『花園高校 文化祭 卒業生ご招待』


特に予定もなかった。


少しだけ、高校時代を思い出したくなった。


ただ、それだけの理由だった。


昇降口へ向かう途中。


校舎の前にある中庭で、一人の女性が立ち止まっていた。


肩まで伸びた栗色の髪。


笑うと三日月みたいに細くなる優しい目。


高校生の頃より少し大人っぽくなっただけで、その笑顔は何一つ変わっていない。


ユウキの時間が止まる。


(……まさか)


相手もこちらを見た。


目が合う。


数秒。


二人とも固まった。


そして同時に。


「あ!」


「あっ!」


息ぴったりだった。


「……ユウキ?」


「マミ?」


「やっぱりユウキだ!」


「マジで!?」


二人とも思わず笑ってしまう。


「久しぶり!」


「え、何年ぶり?」


「卒業以来だから……五年?」


「そんな経つ?」


「早すぎるでしょ」


自然だった。


昨日まで同じ教室にいたみたいに。


ブランクなんて感じない。


「ユウキ、変わったね。」


「そう?」


「高校の時より大人っぽい。」


「営業やってるからかな。」


「似合ってる。」


照れくさくなって頭をかく。


逆にマミを見る。


「マミこそ。」


「ん?」


「全然変わってない。」


「えー。」


「いや、本当に。」


「高校の頃のまんま笑うじゃん。」


マミは少し照れたように笑う。


「そんなこと言われると恥ずかしい。」


その笑顔。


やっぱり好きだった。


高校一年生。


初めて同じクラスになった日。


席は前後。


マミが前。


ユウキが後ろ。


授業中でも振り返って話しかけてくる。


「ユウキ、この問題わかる?」


「シャーペン貸して!」


「今日部活?」


毎日話した。


毎日笑った。


数学の授業では先生に笑われたこともある。


「おーい、お前ら仲いいな。」


クラス中が笑い、


先生はさらに続けた。


「そのまま付き合っちゃえばいいじゃないか。」


教室中が大爆笑。


マミは顔を真っ赤にして机に突っ伏した。


ユウキも何も言えず笑うしかなかった。


(あの時……告白してたら。)


その後悔だけは、今も胸の奥に残っている。


「そういえば。」


マミが歩きながら言った。


「野球部どうだった?」


「最後まで続けたよ。」


「だよねー。」


「マミは?」


「帰宅部。」


「知ってる。」


「なんで知ってるの?」


「……なんとなく。」


本当は違う。


毎日見ていたから。


放課後、友達と笑いながら帰る姿も。


文化祭でクラスをまとめていた姿も。


体育祭で全力ではしゃぐ姿も。


全部覚えている。


「そうそう!」


マミが笑う。


「マユ元気だよ!」


ユウキの足が止まる。


「マユ?」


「結婚したんだよ。」


「え?」


「去年。」


「そうなんだ。」


高校二年の冬。


バレンタイン。


マユから告白された。


美少女で有名だった。


付き合えて嬉しかった。


だけど。


どこかでずっと比べていた。


マミだったら。


もしマミと付き合えていたら。


そんな最低な考えを捨てられなかった。


半年後、別れた。


マユは悪くなかった。


悪かったのは、自分だった。


「ユウキ?」


「ん?」


「どうしたの?」


「いや。」


笑ってごまかす。


「懐かしいなって。」


マミは少しだけ優しい顔になった。


「ほんと。」


「青春だったよね。」


「うん。」


少しだけ沈黙が流れる。


風が吹く。


銀杏の葉が舞う。


高校生たちの笑い声が聞こえる。


まるで時間だけが巻き戻ったみたいだった。


「ねぇ。」


マミが言う。


「一緒に文化祭まわらない?」


「え?」


「一人で来たんでしょ?」


「うん。」


「私も。」


「だったらさ。」


「高校時代の続き、しようよ。」


その一言だけで。


胸が熱くなる。


高校生の頃。


一緒に文化祭を回る約束なんてできなかった。


勇気がなかった。


だから。


今なら。


「もちろん。」


そう答えると、


マミは高校時代と変わらない笑顔を見せた。


「やった!」


その笑顔を見た瞬間。


ユウキは思う。


(……やっぱり。)


(今でも。)


(マミは特別なんだ。)


最初に向かったのは、校舎三階のお化け屋敷。


「ユウキ、怖いの苦手だったよね?」


「いや、平気だけど?」


「強がり。」


「違うって。」


「じゃあ私より前歩いて。」


「……。」


「ほら。」


「……分かりました。」


マミはクスクス笑う。


「高校の時と変わらないね。」


「そういうマミも。」


「何?」


「人をからかうの好きだった。」


「バレてた?」


「最初から。」


二人は笑い合う。


その空気は、不思議なくらい自然だった。


高校一年生の教室に戻ったような。


そんな錯覚すら覚える。


文化祭はまだ始まったばかり。


だがユウキは知らない。


この再会が。


五年間止まっていた初恋を、もう一度動かすことになるとは。


そしてマミもまた――


ずっと胸の奥にしまっていた「あの日の想い」を、今日こそ伝えたいと思っていることを。


二人とも、まだ知らなかった。


第1話 終

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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