罪悪
『ジャスティス・アンドロイド』6
・罪悪
世間はAofAH社の事件で大騒ぎだった。そこの社員が一堂に頭部を爆破され、死亡したからだ。インモラルは「正直、かなり戸惑っています。誰の仕業なのか……」と誤魔化し、世間を欺いていた。
テレビやマスコミに姿を激写されてしまったジャスティス。その報道内容は、悪のアンドロイド達と同じ扱いになっていた。全然違うと憤りを感じていたコウヨウは堂徳ヒロシに相談しに行った。
「ちょっと。堂徳ヒロシ元博士?」
「何だね?」
「あの報道、どうにかならないんですか?」
「無理だな」
「すぐに匙を投げないで下さい!」
「無理なものは無理だ。いくら私でも、あの報道を覆す事は出来ない」
「何でですか?ジャスティスはあんなに一生懸命頑張って戦ったのに!」
「あの戦いのせいで亡くなった人がいる。それは変わらない現実だ」
「だからって……!」
「これはどうしようもない事なんだ!私だってこんなの認めたくない!でも、しょうがない事なんだ!」
沈黙が流れた。そこへイチョウの声が聞こえてきた。
「コウヨウー?もう学校に行く時間だろー?」
「……とにかく、何とかして下さい」
「……無理だと思うがね」
コウヨウは登校した。すると学校には記者が集まっていた。どうやらコウヨウを待っていたらしい。
「あ、赤井コウヨウさんですね!?」
「は、はい……?何ですか……?」
「この写真、貴方ですよね!?」
そこにはジャスティスを抱き締めているコウヨウの顔がうっすら写った写真があった。
「……知りませんね」
「お話!お話だけでも!」
そこへ担任の教師がやって来た。
「何をしてるんですか!?ここは学校ですよ!?」
「あ、担任の方ですね!?コウヨウさんはアンドロイドと交友関係があるとご存じでしたか!?」
「近隣住民の方々に迷惑です!帰って下さい!」
「お話だけでも!」
「警察を呼びますよ!?」
そう言うとマスコミ一同は散っていった。
担任の教師は副担任にクラスのHRを任せ、自分はコウヨウに生徒指導室で話を聞いた。
「あの写真は本物なのか?」
「……いいえ」
「その間は何だ?」
「……何も」
「赤井。もう正直な事を言ってくれ。お前はあの怪物と仲良しなのか?」
「……怪物なんかじゃありません」
「何だって?」
「彼は怪物なんかじゃない!とても優しい人です!」
「赤井……お前……!」
「もう放っておいて下さい!」
コウヨウは生徒指導室を飛び出し、喫茶イチョウに帰って来た。そこにはまたもマスコミが群がっていた。
「オーナーであり、コウヨウさんのお父様に当たる赤井イチョウさんですね!?」
「娘さんはアンドロイドと裏で繋がっているというのは本当なのですか!?」
「止めて下さい!もうすぐお客様が来ます!それに近隣住民の方々に迷惑です!帰って下さい!」
イチョウがそう対応している所に入っていけないコウヨウ。そこでモミジとクレハが毛布を持って来てコウヨウを隠し、裏口から家に帰った。モミジとクレハは急遽学校を休んでコウヨウに話を聞いた。
「あの写真は何なの?」
「……知らない」
「嘘だ。あの写真はアンタだった。間違いなく」
「ピンボケしてた」
「何でピンボケで自分じゃないって分かるの?」
「それは……」
「ねぇ。お姉ちゃん達に本当の事を話して?あの怪物は、アンドロイドとどういう関係なの?」
「……好きな人」
「え?」
「好きな人なの……!」
「アンタ、何言って……!?」
「分かってる!アンドロイドがお母さんを殺した事も、沢山の人を不幸にした事も!でも、あの人は、あの人だけは違うの!」
「あの人って……私達の知ってる人?」
コウヨウは無言で頷いた。
「堂徳ヒロシ?」
「違う」
「じゃあ、ジャスティス君か……」
コウヨウはまた無言で頷いた。
「そっか……何でずっと黙ってたの?」
「きっと、彼が嫌われると思ったから……」
「そう……外の連中はアタシが片付けてくるから、クレハ、アンタはコウヨウを見てて?」
「分かった」
モミジは金属バットを手に、マスコミに殴り掛かっていった。
「そうまでしてアンドロイドを庇うんですか!?」
「違う!あの子が怯えてるのよ!」
「やっぱりコウヨウさんとアンドロイドは繋がりが!?」
「五月蠅ぁーい!」
何とかマスコミを退散させたモミジは、イチョウと共に店の中に入った。「本日急遽休業」の貼り紙を看板に貼って、イチョウはコウヨウに話を聞いた。
「どういう事か、全部話してくれないか?」
コウヨウはゆっくりと話し出した。自分があの日、暴漢に襲われ掛けた事。それを助けてくれたのが正義、つまりジャスティスだった事。そしてあのアンドロイド達は堂徳ヒロシが作り出した物だと。それを聞いてイチョウはコウヨウの肩に手を置いた。
「よく話してくれた。すまない。お前にそんな苦労をさせてしまって……」
「ううん……私の方こそ、黙っててゴメン……」
「良いんだ。後の事はお父さんに任せなさい」
「えっ……?」
「ジャスティス!ヒロシ!ちょっと来い!」
イチョウは怒鳴りながらコウヨウの部屋を去った。それを止めようとしたコウヨウだったが、モミジとクレハに「大丈夫だから」と止められた。
ジャスティスと堂徳ヒロシは喫茶店のホールでイチョウに事情聴取された。
「どういう事か説明してもらおうか」
「私は……」
堂徳ヒロシは話し出した。自分は今の法治国家が本当に正しいのかと疑問に思った事を。もしかしたら正解は他にもあるんじゃないかと思い、正義とされるアンドロイドと悪とされるアンドロイドを作り、戦わせて勝利するのは誰かを見定めたかったと。それを聞いてイチョウは酷く怒った。
「そのせいで俺の妻は!あの子達の母親は!色んな人達の大切な人達が犠牲になったんだぞ!?よくも抜け抜けと私の前に現れたな!?」
「やって来たのは君だろう?」
「ふざけるな!お前達の事は警察に任せる!牢獄で生涯を終えると良い!ジャスティス!お前はスクラップ行きだ!覚悟しろ!」
「その前に、片付けなくてはならない事があります」
「何だって!?貴様!私の娘を誑かしておいて、まだ足掻くのか!?」
「いいえ。弟妹達がやった事の責任を取りたいと思います」
「どうやって!?」
「他のアンドロイド達の完全破壊です」
「何だと……!?」
「オーナー。いや、赤井イチョウさん。今までお世話になりました。ヒロシさん。貴方は警察に保護してもらって下さい」
「……あぁ」
「じゃあ……」と去るジャスティスをイチョウは引き止めようとしたが、堂徳ヒロシに止められた。
「何で止めるんだ!?」
「私の最後の我が儘だ……あの子達を、最後まで戦わせてやってほしい」
「……分かった。だが、お前は警察に引き渡す。それで良いな?」
「あぁ……」
その後、駆け付けた警察により、堂徳ヒロシは逮捕された。
一方その頃、AofAH社では、失った社員とセルフィッシュの代わりにギルトが全ての仕事を行っていた。罪悪感に苛まれながらもギルトはインモラルが怖くて逆らえなかった。
「どうだ?調子は」
「ヒッ……!い、インモラル……!な、何とか事を進めているよ……!」
「そうか。人手が足りないな。ちょっと人を集めてこい」
「で、でも……もう、こんな事したくない……」
「何だって?」
「ヒッ……!わ、分かったよ……勧誘してくるよ……」
「それで良い。最初から素直になれば良いんだ」
「ご、ごめんなさい……!」
「早く行け」
「は、はいぃ!」
ギルトは全ての作業を中断し、求人広告を出した。しかし人が集まる訳も無く、街の人々一人一人に声を掛けた。しかしあのアンドロイドの会社だと分かるとすぐに離れていった。「どうしてこう上手くいかないのか……」「自分が情けないからだ」と自問自答していると、ジャスティスが現れた。
「ギルト」
「あ、あ、あ、じゃ、ジャスティス……?」
「君はこちら側だと思っていたんだけど……何で求人なんかしているんだ?」
「ご、ご、ご、ごめんなさい!僕だってこんな事したくない!で、でも、逆らったら、い、インモラルに、こ、殺される、から……!」
「そうか……君はこちらに来い。そうしたら楽になる」
「ほ、ほ、ほ、本当……?」
「あぁ。もうインモラルに従う必要は無い。僕と一緒に来い」
「わ、わ、わ、分かった……」
ジャスティスに連れられ、ギルトは別荘にやって来た。
「な、な、な、何でここに……?」
「君を解体する」
「え、え、え、えぇ!?な、な、な、何で!?」
「君は、いや、僕もだけど、存在しちゃいけない物なんだ。ここで終わらせてあげるよ」
「い、い、い、嫌だ……!嫌だー!」
ギルトは別荘を飛び出た。
「ギルト!」
「皆、僕を嫌いなんだ!だからすぐに殺そうとするんだ!もう嫌なんだ!こんな怖い思いをするのは!」
「壊すんじゃない!破壊だ!」
「同じだよ!」
「違う!僕達は生き物じゃない!只の物だ!」
「物じゃない!僕は……僕は……!」
「ギルト!」
「自由になりたいんだぁあああああああああああああああああ!」
「ギルトぉおー!」
二人は「剛鉄!」と言ってアンドロイドモードになった。ギルトの単純過ぎる攻撃に全く怯まないジャスティス。ジャスティスは静かにギルトの頭部を掴んだ。
「あ、あ、あ……!」
「静かに眠れ。ギルト……!」
「あああああああああああああああああああああああああああ!」
ジャスティスはギルトを破壊した。その後、別荘に戻り、ギルトをスクラップにした。
ジャスティスは「もう柔鉄はしない」と心に誓い、別荘を去った。
堂徳ヒロシは警察に捕まり、牢獄に入れられた。




