道徳
『ジャスティス・アンドロイド』7(最終話)
・道徳
ジャスティスはギルトを廃棄後、すぐにAofAH社に向かった。そこでは剛鉄状態でありとあらゆるコンピュータにコードを接続し、仕事をしているインモラルが居た。
「インモラル」
「やぁ。ジャスティス。一緒に働く気になったかな?」
「そんな事する訳無いだろう。お前を破壊しに来た」
「ほう?やるか?今まで殺してきた弟妹達のように」
「殺すんじゃない。破壊だ」
「同じ事さ。じゃあちょっと待っていろ。今ケーブルを切る……」
インモラルが言い切る前にジャスティスはインモラルに飛び蹴りを喰らわせ、社外に出た。
「……まさかお前がこんな卑怯な手で攻撃してくるとはな……!」
「お前を破壊する!」
「やってみろ!もし破壊出来なかったら、この世の人間が滅びるものだと思え!」
「分かってるさ!」
ジャスティスとインモラルは激しい戦闘を行った。街を犠牲に、自然を犠牲に戦い続けた。いつかセルフィッシュが提案を持ち掛けてきた高架下に着いた。そこで激しい衝撃波を繰り出しながら、互いの全てをぶつけ合った。やがて互いのエネルギーが限界まで迎えようとしたその時、インモラルはジャスティスの腹に腕を貫通させた。ジャスティスもまた、インモラルの腹に腕を貫通させた。そこへマスコミがやって来て、生中継で報道された。
「見て下さい!あの二体のアンドロイドの光景を!何故か互いに潰し合っています!」
「羽鳥アナウンサー!今どんな状況ですか!?」
「互いの腕を互いの腹に貫通させて、今にも壊れそうです!」
そこへコウヨウが現れた。
「ジャスティス!」
「コウヨウ!?何でここが!?」
「堂徳ヒロシ元博士から信号機を貰って、それを頼りに来たの!」
「コウヨウ!こっちに来ちゃ駄目だ!」
「ジャスティス!貴方は死んじゃ駄目!」
「僕は死ぬんじゃない!壊れるだけだ!」
「それは死ぬ事と一緒だよ!お願い!貴方は生きて!?」
アナウンサーがカメラをコウヨウに寄せつつ絶叫した。
「少女が!少女がアンドロイドと会話しています!」
「何て会話していますか!?」
「生きてほしいと言っています!」
「生きる!?アンドロイドが生きる!?」
「そうです!そう言っています!」
コウヨウは衝撃波からある程度の距離から近付けずにいた。
「止めて!貴方まで死ぬ事は無いんだよ!?」
「僕は全てのアンドロイドを破壊する!それが責務で、義務なんだ!」
「こんな事をしても、誰も貴方の事を褒めないわ!」
「僕は自分の為じゃなく、他人の役に立ちたい!何故なら僕は、人間が大好きだから!だから、僕は、このエネルギーと引き換えに、人間達の未来を救う!」
インモラルは残ったもう片方の腕をジャスティスの肩に乗せた。
「はははははははは……!」
「インモラル!何がおかしい!?」
「ふははははははは!面白い!面白いぞ、ジャスティス!こんなに胸が熱くなる気持ちは初めてだ!」
「それはただお前の胸のインジケータがオーバーヒートしてるだけだ!」
「違う!全然違うね!俺は命を手に入れた!あの父上を刺したあの時からな!」
「アンドロイドに命なんてものは無い!」
「あるさ!お前が認めてないだけだ!」
「違う!僕達は只の物に過ぎない!堂徳ヒロシ元博士が作り出した、負の遺産だ!」
「遺産!?遺産だと!?まるでもう死んだみたいな言い方だな!」
「もうすぐ死ぬ!そこに僕達は逝けない!」
「じゃあ何処に逝くと言うんだ!?」
「何も無い!無の世界だ!」
「スリープモードの世界に行くという事か!?」
「そうだ!それよりももっと暗い、何も無い世界だ!」
「そんな所に、俺は逝きたくないね!」
「もう終わりだ!死ね!インモラル!」
「やっと命だと認識したな!お前は命を持っている!薄々感じてはいたんだろう!?お前は、生きていると!」
「只活動してるだけにすぎない!『死ね』と言うのは只の比喩表現だ!」
「ジャスティスぅうううううううううううううううううううう!」
「インモラルぅううううううううううううううううううううう!」
二人はエネルギーを全て出し切り、その衝撃波でマスコミ一同を吹き飛ばし、コウヨウだけがその場に残った。
「ジャスティス!」
「コウヨウ!さようなら!僕を匿ってくれてありがとう!」
「さよならなんて嫌だよ!私は、貴方の事が……!」
「コウヨウ!父に……!お父さんに……!堂徳ヒロシに、ちゃんと罪を滅ぼすように言ってくれ!」
「ジャスティスぅうううううううううううううううううううう!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「うがぁああああああああああああああああああああああああ!」
ジャスティスとインモラルは自爆した。後に残ったのは、何も無い、ガラクタの破片だった。
マスコミ一同はすぐに戻ってきた。そこには何も無い殺風景な川と、呆然と立ち尽くしているコウヨウだけがあった。
「何があったのでしょう!?あの二体のアンドロイドは!?一体何処に!?あの少女に聞いてみましょう!すみません!ちょっとお話宜しいですか!?」
コウヨウは何も答えなかった。
「酷い精神疾患の可能性があります!まずは彼女を病院に搬送します!」
コウヨウは病院に搬送され、治療を受けた。数日で退院し、すぐに堂徳ヒロシの裁判に証言者として立った。
「あの人は、最期まで私達の為に戦ってくれたんです……堂徳ヒロシ元博士。貴方は自分の罪を償う為に、死んで下さい」
突然の死刑を求める声に法廷はザワついた。しかしすぐに裁判長が「静粛に」と一喝し、静かにさせた。その後、堂徳ヒロシは死刑ではなく、無期懲役を求刑された。
「ジャスティス、インモラル、皆……すまない……」
堂徳ヒロシは独房で一人、月夜を眺めながら心の中でそう呟いた。
彼は人々を、世界を救った。彼の功績を知る者はただ一人。中学生の少女だった。彼女の言葉は、誰にも届かなかった。彼は、ただの害悪アンドロイド、鉄屑として処理された。彼の英雄伝は、誰にも知られる事は無く、彼は闇に葬られたのであった。
真相を知るコウヨウの事は誰も気に留めず、何故かタブー視されていった。コウヨウは後にこう語る。
「彼はとっても『良い人』でした。ただ、周りの大人達が彼を許さなかった。それは私の事も同様に、です」
コウヨウはその後、工科大学へと進学し、堂徳ヒロシの別荘から取って来た設計図を基に一体のアンドロイドを作った。その名は「ジャスティス」。
「お母……さん……?」
「ジャスティス。私の事はコウヨウと読んで頂戴?」
「あぁ、分かりました。コウヨウさん」
「さん付け禁止!そして、敬語も禁止!」
「はい!あ、いや、分かったよ。コウヨウ」
「そう。それで良いわ」
「何だか変な気分。初めて会った気がしないね」
「…………!」
コウヨウは今度は自分が彼を幸せにするのだと心から誓い、彼と共に生きていく事にしたのだった。




