第五話 白銀の聖域と、裁きの天秤
王都ルミナスの夜を裂く、レトヴィス一族の悲しき決戦。
帝国から与えられた「負の概念」を纏い、もはや人ならざる怪異と化した父・伯爵と長男カイル。その圧倒的な暴力を前に、エドワードが孤軍奮闘する中、夜闇を割って「真の援軍」が到着します。
「……おのれエドワード、出来損ないの味方をして、この『力』に抗うというのか!」
黒い魔力を噴出させるカイルのメイスが、地を砕き、エドワードの頬をかすめます。帝国の「消去」の力を帯びたその一撃は、触れるだけで防具の分子結合を腐食させ、精神を汚染する毒を孕んでいました。
「……兄上、その力は『修復』不能なほどに壊れている!」
エドワードが『剣聖・閃』で応戦するも、多勢に無勢。カイルの私兵たちまでもが、理性を捨てた「動く死体」となって包囲網を狭めていきます。
その時。
王都の空から、一条の神々しい光の柱が降り注ぎました。
「――そこまでですよ、兄様(レトヴィス伯)。……アルスを、そしてエドワードをこれ以上傷つけることは、私が許しません」
現れたのは、アルスの唯一の理解者であり、父の姉であるエレナ・フォン・ラインハルト辺境伯夫人。彼女の周囲には、宝石のように輝く魔法の陣が展開されていました。
【エレナのスキル:慈愛の天秤】
彼女のスキルは、空間内の「罪の重さ」を魔力量に変換し、それを「罰」として相手に跳ね返す、対・悪意特化の裁き。
カイルたちが放つ黒い魔力が濃ければ濃いほど、エレナの放つ白銀の光は鋭さを増し、彼らの動きを鎖のように縛り付けました。
「エレナ……! 余計な真似を!」
父・レトヴィス伯爵が咆哮し、エレナへ斬りかかろうとした瞬間――。
ガキィィィィィィィン!!
重厚な鋼の音が響き、伯爵の剛剣が「見えない壁」に弾き返されました。
「……義弟よ。妻に手を出す不作法、万死に値する」
現れたのは、王家派の重鎮、ラインハルト辺境伯。
彼は普段の穏やかな表情を消し、戦鬼のような威圧感を放っていました。
【辺境伯のスキル:不動の要塞】
彼の周囲半径十メートルは、いかなる物理・魔法干渉も受け付けない「絶対不変」の領域。帝国の『消去』の力をもってしても、彼の守りを削ることは叶いません。
「叔父様! 叔母様!」
エドワードが叫びます。エレナは優しく微笑みました。
「エドワード、よく一人で耐えましたね。……ここからは、私たち大人の『掃除』の時間です。……貴方は、その剣を『未来』のために取っておきなさい」
「……いいえ、叔母様。僕も戦います。……アルスが海を越えて戦っている今、僕がここで退くわけにはいかない!」
エドワードの剣に、エレナの「加護」と辺境伯の「重圧」が宿ります。
『剣聖・三位一体』。
白銀の光が夜の庭園を駆け抜け、カイルの纏う黒い鎧を次々と剥ぎ取っていきます。
辺境伯の騎士団も突入を開始し、王都に潜んでいた帝国の「バグ」は、アルスの味方たちの手によって、今まさに一掃されようとしていました。
「……見ていろ、アルス。……王都は僕たちが守り抜く。……お前は、帝国の『核』を叩き潰してこい!」
エドワードの咆哮が、夜空を貫き、遥か東の海で戦うアルスへと届くかのように響き渡りました。
いかがでしょうか。
エレナと辺境伯という強力な「大人たち」の参戦により、エドワードの戦いがより壮大に、そして「家族の絆」を感じさせる熱い展開にしました。




