45/45 茶番ークソダッセェふたつ名
※このお話はSNSに踊らされてませんか? という警鐘も含んでますが、とりま選挙は行っといたほうがいいかと思います。
神野は倉田から転送されてきた番号をタップした
「やあ、神野くんお久しぶり」
スマホから聞こえて来た明るいテノールは倉田の兄のものだ
「初めましてでは?」
神野は平静を装って抑揚のない声で返事をした
「忘れちゃった?
ファーストキスのことは黙っててあげるから」
「覚えてませんね
それで、この茶番はなんなんです?」
「やはりバレますか」
「カネの使い方が荒過ぎです」
「なるほど…
キミも弟も選挙なんかやったことないから、簡単なところでお試ししてもらおうと思ってさ」
「ずいぶん弟思いですね
過保護って言われませんか?」
「よく言われるw
でも、楽しかったでしょ」
「楽しいというより勉強になった、ですか
どんなに注意してても、一発逆転はありうる
私のやったことはナツの事件で全部吹っ飛びました」
「結果はともかくプロセスは素晴らしかったよ」
「全然、嬉しくないです
そういえば、私に大塚のカードを引かせたのは何故ですか?
最初から彼の選挙を指定すればすむことなのに、ダミーまで用意して」
「自分で引いたカードの方がモチベ上がるでしょ
キミの営業力も見たかったから」
(あくまでテストってことか
なんで上から目線なんだよ
あー、ムカつく)
「私、営業は苦手なんです」
「ご謙遜を
大したもんです、アポなし飛び込みで決めるなんて
それだけネットの知識は選挙に需要があるってことだ」
「今回はご立派なスポンサーがいたからできたことです」
「そりゃどうも」
神野の精一杯の嫌味を倉田の兄はスルーした
「大塚氏って選挙のシミュレーターとして理想的だったでしょ
それに僕は彼を買っているんだよ
もっと上に行ける人だ
銀座のホステスさんが見染めたんだから間違いない」
「そうですかね」
「ナツさんも素晴らしい
彼女が『選挙妨害』というワードを出したおかげで、この事件はただの傷害事件じゃなくなり、一気に大塚氏に注目が集まった
彼はいまや全国区だよ」
「ナツが意図的にそんなことをしたと?」
「さあ、どうだろう、でも
僕が思うにあのお嬢さんは、我々が思っているよりずっと聡いんじゃないかな?」
神野の脳裏に一瞬、無邪気に笑うナツが浮かんだ
その笑顔に裏があるとは思えない、だがしかし
(確かにあの時、ナツが選挙の話をしたから世論が動いてニュースの論調が決まった)
(彼女は俺たちよりもずっと選挙への関心は高い…けどあの怪我のさなかに?)
(それがナツの本当の才能だとしたら、俺は考えを変えなくちゃいけない
街ブラなんかやってる場合じゃないぞ)
いくつかの思いが駆け巡ったが、何故かこの男に悟られたくないと思った
「はは、まさか…」
「何にせよ、思った通りキミはとても才能があるし信頼できる人間だった
KING MAKERの素質があると思うよ
次は僕が正式にオファーさせてもらう
ずいぶん人気が出てしまったから、ギャラが跳ね上がりそうだけど」
倉田の兄は終始上機嫌で話している
彼の思惑はわかったが、言いくるめられたみたいで神野の気持ちはあまり晴れなかった
(KING MAKER?
そんなクソダッセェふたつ名、いらねえよ)
倉田が兄を嫌う理由が身に染みてわかり、少しだけ気の毒に思えた
【余計なお世話書き】
タイトル回収です。
本来は総理とか大統領とかを誕生させる黒幕のことを言いますが、遠からずネットの影響力が永田町でも無視できなくなるのでは?




