38/45 特定ー身バレ
ナツが目を覚ました時、心配そうに顔を覗き込む神野と目が合った
頬がこけて目の下には隈、ナツよりも顔色が悪い
「カンちゃん、ごめ」
「謝らないでくれ、謝るのは俺だ」
ガラガラの声を彼は遮った
「ううん、私がうっかりしすぎ」
瞼を腫らしたナツが精一杯笑おうとする
神野もなんとか微笑んだ
「お互いもう謝るのはやめよう
これからのことを話し合うんだ」
ナツは頷いた
「まだ学生だもんな
やりたいことも勉強したいこともあるだろ」
「うん、たくさんある」
「ゆっくり考えよう
俺はナツのやりたいことをやって欲しい
今度こそ守る」
「私もカンちゃんのやりたいことを応援するよ
そんな顔しないで、カンちゃんが思ってるより強いんだから」
ナツは寝返りを打って正面から神野の顔を見つめた
「ねぇ、私のこと好き?」
「好きだよ」
「愛してる?」
「愛してるよ」
「初めて聞いた」
「100万回言ってる、心の中で」
「言ってくれなきゃわかんないよ」
「こんどからはちゃんと言うよ」
ナツが手を伸ばして神野の顔に触れる
目の下の隈をなぞるように撫でた
「キスして」
神野はナツの額に唇で触れた
「それだけ?」
「いまはこれだけ」
「ちゃんとシて」
「だめだよ、俺が我慢できなくなる」
乱れた髪を直してやりながら言うと、ナツが嬉しそうに笑った
「はいはい、そこまで
ちょっとごめんなさいね」
(うっわ、恥ずっ)
神野は慌てて立ち上がった
病室の入口に現れたのはナツの母だった
彼女とイチャついてるところを、彼女のオカンに見られるなんて最悪の罰ゲームだ
「神野くん、ちょっと」
ナツの母は神野の動揺など意に介さず手招きをした
「な、なんでしょう」
「ちょっと困ったことになってて
うちのご近所さんが、夏美のこと話しちゃったらしくて
マスコミやら野次馬やらが家に押しかけてるの」
「思ったより早かったですね
ホテルとかだと一時的な避難にしか使えないし、バレたら迷惑かけるし…
どこか探してみます」
(倉田の兄さんなら別荘とか持ってんじゃねえかな)
神野は倉田に電話を掛けた
「よお、少しは頭が回り出したか」
「ああ、世話かけた
じつはナツの家が大変なことになっちまってるらしい」
「もう、バレたのか?」
「どこかにしばらく避難できないかな
お前の兄さんなら別荘くらい持ってねえか?」
「兄貴の別荘はどこも遠いしなあ
ああそうだ、俺んちの実家が空き家になってる
あそこならそれほど遠くないし、誰も知らないはずだ」
「あの、海辺の崖の上の家か
行ったのは小学生の時だったっけ」
(ああ、そうだ)
小3の夏休み
真っ黒に日焼けして一日中遊んだ日々
二人の脳裏に潮の匂いと暑い日差しが一瞬蘇った
【余計なお世話書き】
話が重くなったのでバカップル書きたかっただけとか。
こういうとき身バレは辛いです。
ナッちゃんが一般人とは言い切れないので逃げの一手です。




