23/45 校歌ー無駄に歌が上手いので歌ってみた
日曜日、イベント2日目
この日は年齢層を上げ、高校生との討論会を用意していた
うまく仕上げれば宣伝効果の高い動画が何本か撮れるはずだ
大塚には休日のイベントという場なので政治色は出さないようにと注意している
彼は演説や討論となると熱くなって、舌鋒鋭くなりすぎるきらいがあった
相手が副市長なら面白い見ものだが、高校生では大人げないイタイおじさんだ
同級生が壇上に上がるとあって、高校生の友人たちや親たちが集まってくれている
下手な無名のタレントや芸人を呼ぶよりよほど集客がいい
大塚があらかじめ選んだテーマは
「給食は無償化すべきか」
「男女制服の差をなくす件」
「学校でスマホは必要か」
「宿題をAIに解かせる是非」
などなど、高校生にとっての身近な話に絞っていた
討論会はディベートの形式をとっていたが、高校生は慣れているのか大塚は苦戦している
ネットで仕入れた情報だろうけれどなかなかに手厳しい
しかも動画慣れしているので、リアクションもうまかった
しかし、大塚は煽られても動じることなく、にこやかに冷静に答えている
言い負けても鷹揚に返すところなど、大物感を出してかわすのが上手い
(やっぱり、政治家さんは違うな
言葉のチョイスが絶妙だ)
神野はが感心したのは、どんなときでも好感度をキープする大塚の受け答えだった
しかも出演料が無料な上、動画として見応えありそうなのでコスパ的にも優秀なコンテンツとして成立している
討論は1時間ほど続き、聴衆からも拍手が沸いていた
最後はみんな並んで校歌を歌って〆だが
「!」
それを聴いて神野は飛び上がった
(なんだよ、あの人こんな特技があったのか)
集まった高校生たちと歌う母校の校歌
これは、よくある光景なのだが、大塚の声が尋常ではなくよく通る
マイクを生徒たちにゆずり、地声のアカペラで歌っているのだが、彼の声は朗々と商店街に響き渡った
聴衆たちも驚きの声をあげて喝采し、手拍子が広がっている
大塚は自分の歌への拍手とは思っていなかったが、いつにも増して充実を感じていた
(市民との一体感ってこういうことだよなぁ)
満面の笑みで壇上から降りると、神野が凄い勢いで駆け寄ってきた
「ちょっと大塚さん」
「あ、いや、どうもお恥ずかしい
でも、久しぶりに楽しかったですよ」
「どうして黙ってたんですか、あなた、とんでもなく歌が上手いじゃないですか」
「え? いや、たいしたことは
演説しまくっているから喉は鍛えられていますけど
それに議員が歌が上手くたって仕方ないじゃないですか」
「これはイケます
明日から、演説会でも交流会でもラストに必ず歌ってください」
「はあ、何を歌えばいいんでしょう?」
「得意な歌でいいです、十八番は?」
「ええっと、B'zとかゆずとか」
「じゃ、ウルトラソウルと栄光の架橋でいきましょう
アカペラでいけるんですよね」
「はい、大丈夫です」
大塚は神野の勢いに押されて頷いた
歌には多少自信はあったがそれを議員活動と結びつけたことがないので、重要なこととはまったく思っていなかった
興奮している神野を見ても、そんなに驚くようなことなのかと不思議に思うばかりだ
「あれなら『歌ってみた』もイケますよ
あなたは明日から『無駄に歌が上手い議員』です」
「えええ~
そういうのは人気取りとか言われて、叩かれるんじゃ」
「泡沫候補がなりふり構ってられないでしょ」
身も蓋もないが事実だから仕方ない
この人また変なキャラくっつけて来たぞ、と大塚は思ったが、悪くないなとも思っていた
少なくとも『猫議員』よりはマシそうだ、と
【余計なお世話書き】
歌ウマ議員というのはけっこういると思うのですが、選挙でウルトラソウルってw
地方の選挙ではこうした本番前の地道な活動のほうが大事だったりします。
でも、実際に参院選で歌ってる人いてちょっとびっくりでした、ネタのつもりだつたのに。




