22/45 訪問ーラスボスは突然に
イベントプログラムを消化し、大塚と神野は事務所で休憩していた
内田と赤崎は支援者の対応で忙しそうだ
倉田は体調不良と言って現れなかった
(フラれたなw
赤崎さんが良識ある人で良かった
にしても使えねえ奴だ)
神野は呆れていたが、問題を起こされるよりはマシなので放っておいた
「大塚さん、こんにちは
盛況ですね」
「おやっ、石川さん」
入口に現れた男を見て、大塚が慌てて立ち上がった
(石川? 市長と同じ苗字
あ、この人が)
神野も立ち上がって男を迎えた
大塚よりは少し若いくらい
仕立てのいいスーツ
綺麗に日焼けしていて真っ白な歯が目立つ
快活な笑顔がわざとらしいなと神野は思った
「どうも、市長の秘書をしております」
挨拶しながら名刺を渡してきた
神野はポケットを探すふりをして
「ご丁寧に
いやあ、すみません、今日は名刺を切らしてまして
私はWeb関係の仕事をしております神野と申します」
そう言って頭を下げた
「いやいや、石川さん
今日は堅苦しいのはナシにしましょうや」
大塚が割って入るように言った
「そうですね、私も面白そうなイベントがあると聞いて顔を出しただけなんで
おっと、その子が豆トラちゃんですか」
石川は猫が昼寝しているケージに近づいていった
「ええ、人気者なんですよ」
「本当だ
オヤツやお玩具をずいぶんともらってますね」
そう言ってなでようとしたが、赤崎に止められた
「ごめんなさい、昼寝を邪魔されるとひっかかれることがあるので」
かまわず石川は豆トラに手を伸ばした
ひっかこうとはしなかったが、寝返りを打ってケージの隅へ引っ込んだ
「よかった、怒られなかったw
でも、このオヤツやお玩具は寄付にあたったりして?」
「いやいや、これはこの子のものじゃなくて、保護猫のシェルターに送っています
送り主はこの町の町内会長ですよ」
「さすが、ぬかりないですね」
「最近は議員のコンプラがうるさいですからw」
そうしてしばらくの間、石川は世間話をして帰っていった
(あれが市長の孫か
聞いてたのと違うな)
神野の印象は如才ない営業マンだった
(敵情視察? いや、まだそこまで意識してないはずだ
副市長と候補を争うときに、大塚を陣営に引き入れたいとか)
「たっだいまー
ねぇ、社長
いますれ違った人、誰?」
元気のいい掛け声と共にナツが帰ってきた
ナツには出先では神野のことを「社長」と呼ぶように徹底している
「ん? 市長の秘書さんだけど、どうした」
「挨拶したのに私の胸ばっか見てくるの、サイテー!」
「うーーん、見るなって方が難しいかなw」
(こっちはセクハラ野郎か)
「だって大塚さんはそんなことしないよ」
「大塚さんは人間ができてるんだよ」
(彼女の前だからな)
大塚を振り返ったが、微妙な笑顔を浮かべている
赤崎はうつむいて笑いをこらえていた
事務所の外にはナツのフォロワーが集まり始めていた
中まで入ってくる行儀の悪いのはいないが、これでは誰も寄り付かない
「ごくろうさん、今日はもう帰っていいよ
ぐっさん、悪いけどタクシーに乗せてあげてくれ」
神野は努めて事務的に言ったが、ナツは名残惜しそうに神野を見て服の裾を引っ張った
それを見て大塚と赤崎は顔を見合わせて同じことを思った
(そういうこと!)
【余計なお世話書き】
テンプレな敵役その2です。
この方には特別な仕掛けはございません、分かりやすい人です。
大塚さんも人のこと言えないんですけどね、なんで脇の甘いやつばっかりなんだろう…?




