ホテル等の予約とキャンセル対応
ミリは参加者達を見回す。
「御予約方法は簡単になります。お申し込み頂いた順に、御相談を受け付けます。どの日にちにどのクラスでどのホテルにお泊まりになりたいのか御要望を伺って、わたくし共が御希望を叶えられるのであれば、御予約完了となります。御希望を叶えられない場合もありますが、それは既に他の方に頂いている御予約が影響する場合や、お望みの料理に使う食材が手に入らない等の場合、あるいはお望みの部屋や建物そのものに修理が必要な場合など、様々な理由が考えられます。ですのでその場合は、頂いた御要望になるべく沿った内容をわたくし共から提案させて頂き、話し合わせて頂いた結果、それに納得して頂けたら御予約頂く事になります」
「質問を良いでしょうか?」
ミリは手を挙げた参加者を手で指し示した。
「はい、どうぞ」
質問者は肯いて立ち上がる。
「食材は常に用意してはいないのですか?」
「それぞれの国から輸入する物も御座います。予定より到着が遅れたり、想定より多くの方に要望されたりする場合は、品切れをする事もあると考えております」
「なるほど」
「また、季節物も御座いますから、評判を聞いてお求め頂いても、御希望の日には用意できない物も御座います。その場合には翌年の御予約を提案させて頂く様な事も想定しております」
「特定の料理を少し先に予約をした人がいて、後から別の人がそれより前の時期に同じ料理の予約を望んだ場合、ホテルの部屋やレストランの席が空いていても食材が足りなければ、後から予約をしようとした人を断る、と言う理解でよろしいですか?」
「はい。あくまで、先に御予約頂いた方を優先させて頂きますので」
「身分に関わらずですね?」
「はい」
「分かりました。ありがとう御座います」
ミリが肯いて微笑むと、質問者は礼を言って着席した。
ミリはまた参加者を見回す。
「料理や食材に拘らずに頂けるのであれば、部屋が空いていさえすれば、御予約頂けます。その場合は当日に御提供出来る料理から選んで頂く事になります。また、レストラン自体も当日に選んで頂く事も出来ますので、気に入って頂いたお店があれば、そこに通い続けて頂く事も出来ます。ただし既に他のホテルやレストランに御予約をなさっていた場合は、キャンセルするホテルやレストランに対してのキャンセル料をお支払い頂く事になります」
キャンセル料の言葉に参加者が響めく。参加者の一人が手を挙げた。
「質問をよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「キャンセル料とは何ですか?」
「例えば、レストランを貸し切りにするとします。そうしますとそのレストランは、他のお客様の御予約を受け付けられません。後から他の御予約の話が来ても、お断りする事になります。そして貸し切ったお客様が当日にお見えにならなければ、レストランは損失を被る事になります。その損失はキャンセルした方に補填して頂きます」
「え?店の損失を客に肩代わりさせるのですか?」
「はい」
「ですが、その店を使わなかったのですよね?」
「はい」
「その様な、客に損失を与える様な事が赦されるのですか?」
「法律上の話をなさっていらっしゃるのでしたら、問題はございませんし、平民向けの店では普通に行われています」
「いや、ですが、貴族にもそうすると言っているのですよね?」
「はい。王都の店などでは、貴族からはキャンセル料を取りませんが、それはキャンセル料を取ると二度と利用して貰えなくなると考えているからです」
「それはそうですよ。理由があってキャンセルせざるを得ないのですから。客の都合も考えない店など、利用を止めるのは当然です」
「そしてキャンセル料を取らなかった分は、それ以降の利用時の料金に上乗せして、取り返したりしている筈です」
「え?」
「コーカデス商会のホテルやレストランは、平民でも王族の方でも、同じものは同じ値段で提供致します。ですので損失の補填は、キャンセル時点でして頂きます」
「いや、しかし、それは貴族からの利用にはそぐわないのではありませんか?」
「その事に御納得頂いた上で御利用頂きますので、問題は御座いません」
「いや・・・しかし・・・」
「なお、御予約頂く場合の支払いは前払いとなります」
「え?前払い?何ですかそれは?」
「御予約を頂く時に、お選び頂いた内容での料金をお支払い頂きます」
「もしかしてキャンセルした場合には、払い済みの金を返さない積もりですか?」
「当日や前日にキャンセルされた場合はその通りですが、早い時期でのキャンセルでしたら、後から他の方からの御予約で埋まる事も御座いますので、損失分以外は返却致します」
「いや、しかし、利用しないのに料金を払うなんて・・・」
「ホテルも御予約に合わせて室内の花を用意したり、対応する人の手配をしたりする必要が御座います。レストランですと仕入れた食材が無駄になったりも致します。準備にも費用が掛かる事は、御理解頂きたいと思います」
「いや、ですが・・・」
「なお、用意した食材をお渡しする事も可能です」
「え?・・・どう言う意味ですか?」
「御予約の為に用意した食材を他に流用出来ない時には、廃棄する事になります。ですので、予約はキャンセルしたけれど食材は欲しい、等の御要望があった場合には、その食材をお渡し致します」
「いや、その様な事、ありますか?」
「例えば、お客様が妊娠に効くと信じていらっしゃるけれど、この国では手に入り難い食材などがあれば、食材だけでも欲しいと思われるのではないでしょうか?」
「ああ・・・なるほど」
発言者が肯いたので、ミリも小さく肯いて返す。
「平民にでも貴族にでも、同じものは同じ価額で提供します為には、キャンセル料を導入する必要があります。それはコーカデス商会の利益を守る為ではありますが、お客様の不利益を目的としたものでは御座いません。御予約をキャンセルされますのは、確かに店側は利益を損ないますが、お客様に取っては思い出を作る機会を失う事になり、店よりお客様の方が落胆なさると考えております。ですのでレストランで用意した食材ですとか、あるいはお客様の好みに合わせてホテルに用意した花ですとか、お持ち帰り頂けるのでしたらお渡ししたいと考えております」
そう言ってミリは発言者に微笑みを向けた。




