ホテル等の提供クラスと予約優先
「これらのホテルもレストランも、利用者には平民を想定しております」
ミリの発言に、議場内の参加者の多くに動揺が走る。それぞれの口からでた呟きが響めきとなって議場に広がった。
「平民でも」
それが静まらない内に、ミリはそれまでと同じ声の大きさで話を続ける。
「王族や貴族に対する待遇を体験できる。それをこれらのホテルとレストランの特色としております」
「質問をよろしいだろうか?」
ミリは手を挙げた参加者に体を向けて、手を指し示して促した。
「はい。どうぞ」
指された参加者が立ち上がる。
「王族や貴族に対する待遇とはどう言う事なのだ?」
「王族の方が泊まりにいらっしゃる事が御座いました時に、その方にさせて頂く対応をお客様の身分に関わらず提供致します。資料を御覧下さい。そちらに御座います通り、待遇は王族クラス、貴族クラス、一般クラスと分かれており、クラス毎に提供致します部屋や席やサービス等が異なります」
「王族クラスとは、王族が泊まった時の話ではないのか?」
「はい。お客様の身分に関わらず、お客様が選ばれたクラスのサービス等を提供させて頂きます」
「それなら皆、王族クラスを選ぶのではないか?」
「お客様の御予算と合えば、ですね」
「ああ、なるほど。金額は違うのか」
「はい」
「貴族が王族クラスとか、ないだろうが王族が一般クラスとか、それも出来るのだな?」
「はい。ちなみにですが一般クラスでも、王国内を貴族が移動する時に利用する宿と、同程度レベルのサービスを提供致します」
「何?そうなのか?」
「はい。貴族クラスと言うのは平民が思う憧れレベルを提供致しますので、実は王族の方に御利用頂いても不便はないレベルとしてあります」
「しかしそうすると、かなり料金が高いのではないか?」
「はい。我が国にいながら様々な国の様式や料理を楽しむ為の施設です。従業員もそれぞれの国の言葉を使いますし、その為に通訳もそれぞれ用意しております。一般的なものに比べますと、かなり割高になっております」
「それは、収益的にはどうなのだ?」
「宿泊も料理も、利益が出る金額に設定はしております」
「そうではなく、金額が高ければ、客が来ないだろう?」
「王族クラスから一般クラスまであるホテルやレストランとは別地域に、庶民向けの宿泊所や食べ物の屋台なども用意しております。港に来る船員達はそちらを利用しておりますので、そちらの収益と合わせ、港町全体で利益が出れば良いとしております」
「・・・各国の妊娠に効く料理などは、一般クラスまでのレストランで出す、と言う事か」
「屋台でも多少は各国の料理をお楽しみ頂けますが、その場合も提供する料理は別のものになっております」
「それはそうだろうな。王太子御夫妻やコーハナル侯爵家の若夫妻は、屋台の料理なども利用したのか?」
「そちらは存じません」
ミリは首を小さく左右に振った。発言者はミリに向けた顔に苦笑を滲ませる。
「それはそうか。いや、理解した。ありがとう」
そう言うと発言者は着席した。
ミリは参加者達を見回して、説明の続きを口にする。
「どのクラスのホテルやレストランを御希望なさるのか、それに付いては予め御予約を申し込んで頂く事になります。そして御希望の日にちに御要望のクラスが空いている場合には、御予約頂けます」
「ミリ・コードナ様?質問を良いですか?」
「はい、どうぞ」
別の参加者が手を挙げて、ミリの応諾を受けて立ち上がった。
「今の説明は、貴族が望む日にちに予約していたのが同格の貴族なら、後からの予約の申し込みを断る、と言う意味ですね?」
「同格かどうかには限りません」
「しかしそれでは貴族間に軋轢を生むではありませんか?家格が低い家でも、先に予約していた方を優遇すると言う事でしょう?」
「たとえば、後から御予約を申し込まれたのが王家だった場合でも、そして先に御予約頂いていたのが例え平民であっても、先の予約を取り消す様な事は致しません」
議場が大きく響めく。
「え?何を言っているのです?そんなの赦されませんよ。不敬ではありませんか」
発言者はちらちらとソロン王太子に見ながらそう発言し、多くの参加者も同様にソロン王太子に視線を向けた。
「どこが不敬に当たるのでしょう?」
「いや、だって、王家の要求を断るなんて」
「予約とはそう言うものですので」
「しかし」
「ミリ殿、発言を」
発言者の言葉を遮って、ソロン王太子が声を上げる。
ミリはちらりとソロン王太子を見て、発言者に視線を戻し、発言者が口を閉じてソロン王太子の方に体を向けているのを確認すると、自分もソロン王太子に体を向けて肯いた。
「王太子殿下、どうぞ」
「ありがとう」
ソロン王太子は議長席から立ち上がる。
「今の様な場合、私はもちろん予約を諦める」
ソロン王太子の発言に、また議場が響めいた。
ソロン王太子は参加者を見回しながら、議場が静まるのを待つ。ソロン王太子と目が合った参加者から、口を閉じていった。




