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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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公表の流れ

 ニッキ王太子妃とチリン・コーハナル元王女の妊娠情報がどの様に広がったのかを確認する為に、国王は次々と召喚状を書いた。

 タモン・コウグ公爵とハッカ・コウグ次期公爵夫人が召喚され、それぞれ誰に伝えたのかを王妃とソロン王太子が問い質す。タモンは配下の貴族家に、ハッカは実家のコウゾ公爵家に伝えていたので、それらの者達も召喚された。


 こうして夜間にも関わらず次々と召喚は続けられ、明け方には学院の生徒の誰が知っていたのかまで判明する。

 しかし召喚された者達は皆、秘密は漏らしていないと主張した。伝える時も、秘密にする様にと念を押したと言うのだ。

 そして生徒達の中からは、レントの傍で最初にニッキ王太子妃とチリンの妊娠を口にした者が現れなかった。生徒達は皆、話が出てから知っているか訊かれたので答えたと、自分が最初に言い出したのではないと主張している。



 レントはコーハナル侯爵邸で、ミリと共に夕食を食べてから、コードナ侯爵邸の離れに帰った。ミリはそのままコーハナル侯爵邸に泊まる。


 ミリはレントに学院を休む事を勧めていた。それは、チリンとニッキ王太子妃のコーカデス領の港町への滞在と妊娠が、学院では結び付けられて語られていたので、その話を聞いた生徒の家からもホテル等の予約の申し込みが増えるとミリは思ったからだ。予約の話が新たに出れば、前日には引き下がった生徒達もまた食い下がってくるだろう。

 しかしまだ、ホテルの予約を受け付ける準備が出来ていない。レントが登校したら、申し込みを断り続けさせる事になる。それに拠るレントの精神的な負担をミリは心配していた。

 けれどレントは、生徒達から何らかの情報が得られるかも知れないと考えて、学院に登校する事にする。そして放課後にミリと、学院の状況やお互いに得られた情報を共有する事を約束した。



 夜間に王宮に喚び出された生徒達は、朝の時点ではまだ王宮から解放されておらず、そのまま学院を休む。

 その事で学院の貴族クラスでは各学年とも、生徒達がお互いに探り合う雰囲気になった。

 家から言われてレントにホテルの予約を申し込みに来る生徒もいるけれど、一様に皆、ニッキ王太子妃とチリンの妊娠には言及しない。それは、王家もコーハナル侯爵家も公表していない情報が、子供から広がった事に危険を感じた大人達が、子供達に強く言い聞かせたからだった。


 その日一日学院の貴族クラスは、緊張感のある雰囲気に包まれる事になる。



 生徒にニッキ王太子妃とチリンの妊娠を口にしない様に言った大人達は、しかし自分達は情報交換を行っていた。

 そしてそれは配下の貴族家から遡って、コウバ公爵家にも届いた。


 ニッキ王太子妃の妊娠を知ったコウバ公爵家は、ニッキ王太子妃と王家に向けて抗議の連絡を送る。

 それは他の貴族家が知っているのに、ニッキ王太子妃の妊娠の報告が実家であるコウバ公爵家になかったからだ。


 ニッキ王太子妃は何かと口を出してくるコウバ公爵家を鬱陶しく思う様になっていた。

 特に妊娠した時などは何度も状況を尋ねて来るし、死産になった時などはニッキ王太子妃の事だけではなく、ソロン王太子や王妃の事も責める様な話をコウバ公爵家の人間は言って来ていた。

 そしてコウバ公爵家に知られれば、ニッキ王太子妃の実妹のミッチ・コウラ子爵家夫人にも連絡が行き、ニッキ王太子妃は普段以上にミッチに纏わり付かれる事になる。

 それなのでニッキ王太子妃は今は妊娠しても、コウバ公爵家には知られない様にする為に、コウバ公爵家から連れて来ていた使用人達には気付かれない様にしているのだった。


 しかし今回、コウバ公爵家に知られてしまったし、直ぐにミッチも訪ねて来るだろう。

 それらの対応を行わなければいけなくなった事に、ニッキ王太子妃は対応する前からうんざりとした。



 王家からコーハナル侯爵家には、謝罪の為の使者が遣わされた。

 コーハナル侯爵夫妻はコーカデス領の港町に滞在中だ。チリンの夫スディオ・コーハナルから両親であるコーハナル侯爵夫妻に宛てた、今回の件に付いて報告する手紙が船で運ばれる。それを受け取ったらコーハナル侯爵夫妻は王都に帰ってくるだろう。

 それなので、コーハナル侯爵夫妻が帰都したら改めて、王家からの正式な謝罪を行う事になった。


 そしてそれとは別に王妃からチリンへ、謝罪の遣いが送られる。しかしチリンは謝罪を受け入れる事を拒否した。

 スディオが取り成そうとしても、ミリが宥めても、チリンの態度は変わらなかった。

 スディオは、コーハナル侯爵夫妻が戻ってから改めて話をする事を王妃への提案として、遣いに持ち帰って貰う事にする。もちろんチリンはそれも納得していなかったけれど。



 ソロン王太子からはミリとレントに、コーカデス領の港町に付いて公表して貰えないかとの打診が寄せられた。


 チリンの妊娠を公表するかどうかは、コーハナル侯爵夫妻との話し合い次第になるだろうけれど、ニッキ王太子妃の妊娠は公表するしかないだろうとソロン王太子は考えていた。

 そしてそれを公表すれば、コーカデス領の港町での滞在と結び付けられて話が広がっているから、滞在と妊娠の因果を問い質される筈だ。

 そこで例え因果を否定しても、関係があると受け取った家は、ホテルの予約を望むだろう。いや関係を疑わしいと思ってくれたとしても、万が一関係があった場合の事を考えて、妊娠の為にコーカデス領の港町への滞在を望む筈だ。それは学院でのレントへの予約申し込みの状況に現れている。


 噂は無責任に広がる可能性がある。タラン・コウグ次期公爵も、コーカデス領の港町に滞在すれば、必ず妊娠できるかの様に受け取っていた。

 そうしたらミリやレントにも迷惑が掛かる筈だ、とソロン王太子は考える。

 それよりは、相手が信じるかどうかは分からないけれど、正しい情報を公開した方が良い。


 ミリとレントは話し合い、コーカデス領の港町の情報を公開する事にした。

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