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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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翌日の約束と使者

 ソロン王太子とサニン王子との話し合いを終えて、ミリとレントは王宮を去る。

 建物から出て別れる前に、レントがミリに呼び掛けた。


「ミリ様」

「ええ、コーカデス卿。何でしょうか?」


 少し前を歩いていたミリは、立ち止まってレントを振り向く。レントもその場に足を止めた。


「今後の事に付いて話をさせて頂きたいのですが、如何でしょうか?」

「今からですか?」


 ミリは一瞬空を見る。レントは首を小さく一度だけ左右に振った。


「いえ。本日はもう遅いですし、明日以降でミリ様の都合がよろしい時に、お願いしたいと思います」

「分かりました。明日以降でしたらいつでも構いません。サニン殿下との勉強会がなくなりましたので、入学試験までは予定がありませんから」

「え?コーカデス領には戻らないのですか?」


 小首を傾げたレントに、ミリは小さく肯いて返す。


「そうですね。今回はこのまま、王都に滞在します」


 ミリは元王女チリン・コーハナルの様子を見守る積もりでいた。

 ラーラの様子も気にはなるから、一度くらいはコーカデス領に戻るかも知れないけれど、そもそもはサニン王子の勉強会があったので、ずっと王都に留まる予定でいた。

 ラーラが出産をする時も、チリンの出産と重なれば、ミリはコーカデス領には戻らない積もりだし、ラーラもその積もりでいる。バルにもそれで納得をさせていた。


 レントはチリンの妊娠もラーラの妊娠も知らない。

 レントはコードナ侯爵邸に滞在してはいるが、コードナ侯爵夫妻からもミリからも、ラーラの妊娠を知らされていなかった。コーハナル侯爵家も、チリンの妊娠をまだ公表していない。

 それなので、ミリが王都に残るのはディリオを愛でる為だと考えて、レントはミリに微笑みを向けた。


 レントの視線の温かさに、ミリは違和感を覚える。

 領地の開発事業の事を考えれば、レントとしてはミリにコーカデス領に戻って欲しい筈だ。ミリの王都への滞在をレントが喜ぶ理由はない。

 ミリとレントは一年程会わずにいて何ともなかったのだから、ミリが傍にいる事をレントが喜ぶとは思えない。

 計算高いレントが喜ぶ様な利益が思い付かず、しかしレントの表情が作ったものとも思えず、ミリはレントに見られている事に、少し居心地の悪さを感じた。

 それなのでミリは、少し言い訳の様な言葉を口にする。


「コーカデス領の事は王都から確認しますし、港町は母や従業員達に任せておけば問題ないと考えています」

「はい。ありがとう御座います」


 レントは、椅子に座って報告書を確認するミリが、その膝に乗せたディリオに書類を取られそうになって慌てている様子を想像した。

 思わずふふっと笑いがレントの口から漏れる。


 礼を言われると共に笑われたミリは、レントの機嫌の良さの原因を思い付くと直ぐに頭から消し去った。

 レントはミリに好意を持っていると言っていたけれど、それは信じてはいけない類いの言葉だ。ミリが近くにいる事だけで、レントが喜んだりする筈がない。理由がない。根拠がない。

 今日の疲れが出て頭が回らなくて、レントが機嫌が良い理由が思い付かないだけだとして、ミリは考えるのを()めた。理由を思い付かない場合の影響も、今は考え付かないし。


 一方でレントは、ミリがサニン王子の勉強を見なくても良くなった事も、ミリとサニン王子が交際練習をする事にならずに済んだ事も、ソロン王太子がそれを言った時点で既に大喜びをしていた。

 ただ、王族の前なのでレントは表には出さない様にしていたし、ミリはソロン王太子とサニン王子に気を取られていたので、その時のレントの喜びにミリは全く気付いていない。

 今のレントは、ミリと過ごす時間が増えるであろう事に、充分に喜んだ後のレントだった。



 ミリとレントは、翌日の学院でのレントの授業が終わった後に、学院の目の前のコーカデス商会で借りている邸で会う約束をして別れた。


 しかし翌日になって、ミリがコーハナル侯爵邸でコーカデス商会の邸に向かう準備をしていると、コードナ侯爵家からミリに宛てて遣いが訪れる。

 その遣いは、コウグ公爵家の使者がコードナ侯爵邸にミリを訪ねて来た、との連絡を持って来た。

 先触れはなかったし、もちろんミリとの約束もしていない。それなので、コードナ侯爵家より格上の相手だけれど出直して貰っても構わない、とのバルの母リルデ・コードナ侯爵夫人の文に、ミリは苦笑いをしてしまった。

 コウグ公爵家に限らず公爵三家とは、コードナ侯爵家は因縁がある。公爵三家からは謝罪も一応あったし、コードナ侯爵家も謝罪を一応受け入れてはいるけれど、家としての建て前と個人としての本音は違う。表には出さないけれどコードナ侯爵家の人々は、好きか嫌いかで言えば、公爵三家は嫌いだった。

 ただ、ここで冷ややかな対応をしても良い事はないと言うのは、リルデもミリも分かっている。

 ミリは遣いには直ぐにコードナ侯爵邸を訪ねるとの答えを持って帰って貰い、レントには約束を違える事を謝罪する連絡を送って、レントと会う為の乗馬服から公爵家の使者に会う為のドレスに着替えて、コーハナル侯爵邸からコードナ侯爵邸に馬車で向かった。

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