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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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サニン王子の言い分

 提案をソロン王太子に強い声で否定され、サニン王子は顔を蹙める。


「何故ですか父上?そうすればミリ殿は、時間を有効に活用出来ますよ?」


 ソロン王太子は顔を上げて、サニン王子に視線を向けた。


「そう言う問題ではないだろう?未婚の令嬢をお前の傍に置く訳にはいかない事は分かるだろう?」


 サニン王子は首を左右に振る。


「いいえ父上。私の傍ではなくて母上の傍です」


 ソロン王太子も首を左右に小さく振った。


「いいや、同じ事だ。血の繋がりもない令嬢をその様に我々の傍に置いたら、どの様な噂になるか」

「ミリ殿は今、血の繋がりのないコーハナル侯爵邸で暮らしていますけれど?」

「コーハナル侯爵邸はラーラ殿の養家だ。ミリ殿とは縁がある」

「え?ミリ殿はどこにも縁が」

「サニン!」


 サニン王子の言葉をソロン王太子が強く遮る。ソロン王太子は目を瞑りながら大きく息を吸って、気持ちを落ち着けてから目と口を開いた。


「ミリ殿はバル殿の娘でコードナ侯爵家に籍を置き、コーハナル侯爵家にも縁がある。間違えるな」

「・・・はい」

「どちらにしても、貴族の令嬢が他家に留まれば、その家とは婚姻をする事になる」


 サニン王子は目を見開く。


「え?もしかして私ともですか?」


 サニン王子の頭にはミリの出自が浮かんでいた。犯罪者の娘を王族に迎えるなどあり得ない。

 そう思っているからこそミリには、王宮に勤める使用人達と同じ様に部屋を与えれば良いと、サニン王子は考えたのだ。

 ソロン王太子はサニン王子の考えを読んで、小さく息を吐く。


「サニンの結婚相手には王宮に部屋を用意する。ニッキも私との婚約中にそうだった。令嬢に部屋を用意すると言う事は、そういう事だ」


 それは分かるけれど、サニン王子にはそれはそれで、これはこれだ。


「でも私は、コウゾ公爵家の令嬢と結婚すると、決まっているのですよね?」

「決まってはいないだろう?コウゾ公爵家にはサニンと歳の合う令嬢がいない。まあ、今の様な状況でミリ殿の部屋を王宮に用意したら、ミリ殿がコウゾ公爵家の養女になると受け取られるかもな」

「それは、でも、あり得ないのではありませんか?」

「その様な事をバル殿が許す訳はないけれど、あり得るあり得ないではなく、そう思う者達が現れて、この国に混乱がもたらされる。それだから相手がミリ殿に限らず、王宮に部屋を用意するなどとお前は言ってはならない」

「・・・そうですね。分かりました」


 サニン王子が肯いたのでソロン王太子はふっと体の力を抜くが、少し早かった。


「ミリ殿には客間を使って貰えば良いですか?」

「サニン・・・そう言う問題ではないだろう?ミリ殿が王宮に滞在する事が問題なんだ」

「使う部屋を毎日変えても?」

「もちろんだ」

「一日置きに帰って貰うのは?」

「一年の半分を王宮に留まるなど、駄目に決まっているだろう?良いか?実態がどうかではなく、噂が立つ事が問題なのだ。勉強会に他の子息令嬢を招いているのも、サニンとミリ殿を二人きりにしては噂が立ってしまうだろうから、それを防ぐ為だ」


 ソロン王太子に強い視線を向けられて、サニン王子は頭を下げる。


「申し訳ありません。その件を失念しておりました」

「大切な事だ」


 今度こそサニン王子が理解したと受け取って、ソロン王太子はまた体の力を抜いた。


「自分の身の振り方や、相手の立ち回って貰い方など、常に意識していなくては駄目だ。王族の言動は影響が大きいのだから」

「はい」


 視線を下げて肯いたサニン王子は、顔を上げてミリに向ける。


「そもそもミリ殿は、何故コーハナル侯爵邸に滞在しているのだ?」

「ああ、そうか」


 ミリが答えるより先に、ソロン王太子が声を出した。サニン王子がソロン王太子に顔を向けて小首を傾げる。


「父上?どうしましたか?」

「いや、ミリ殿?」

「はい、王太子殿下」

「ディリオの面倒も見ているのだよね?」

「ディリオ殿?」


 ソロン王太子のミリへの問いに、サニン王子が小首を傾げた。

 ミリはサニン王子に小さく肯いてから、ソロン王太子に顔を向ける。


「面倒を見ると言う程ではありませんが、相手をしたり多少の世話をしたりはしております」

「それは使用人の仕事なのでは?」

「サニン」


 サニン王子のミリに向けた言葉に、ソロン王太子は顔を蹙めた。ミリは小さく肯く。


「はい。使用人も世話をしますが、チリン様もなさいます。それのお手伝いと言うか真似事もしますけれど、傍で様子を見ていたりするだけの事が多いですね」

「・・・なるほど」


 サニン王子は少し考えてから肯いた。

 もし自分に弟や妹が生まれても、その世話は使用人達が行うとサニン王子は聞いている。様子を見るだけなら、自分と同い年のミリも出来るのだろうと、サニン王子は納得をした。


「と言う事はミリ殿?ディリオ殿の様子を見ているのは、優先度が低くて構わないと言う事だな?」


 サニン王子の言葉に、ソロン王太子はこめかみを押さえる。サニン王子の言葉が元王女チリン・コーハナルの耳に入ったら、自分が責められるだろうとソロン王太子は思った。

 ミリも苦笑が浮かびそうになるのを抑えながら肯く。


「サニン殿下の仰る通りです」

「それなら問題ないな。ミリ殿の部屋は用意出来ないが、移動回数が減るだけでもミリ殿の負担は減るだろう。それで良いだろうか?」


 ミリとレントの眉が上がった。ソロン王太子も片眉だけ少し上げる。

 そこからミリは眉尻を下げた。


「良いと仰るのは何に付いてでしょうか?」


 訊かれている事は分かっていたけれど、ミリは念の為にサニン王子に確認をする。


「それは当然、コーカデス卿の代わりに私と交際練習をして、コーカデス卿の代わりに私に授業の補完をして貰う事だよ」


 ミリにはサニン王子の言う事はもっともだと思えた。

 ただしミリは交際練習をしなくても良い。レントとの交際練習も、レントに強く望まれなければやらなかっただろう。


 ソロン王太子はサニン王子の気持ちが少し分かった。サニン王子がこの様な事を言い出したのは、レントがミリの代わりにサニン王子の勉強を補佐する理由が、ミリとの交際練習だったからだ。

 ミリに好意を寄せている訳ではないだろうけれど、自分のものを取られる様にサニン王子が感じているのだろうと、ソロン王太子は考えている。


 そしてレントには、サニン王子の提案を受け入れられる筈がなかった。

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