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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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出産フォローの請負

「実は私もミリ殿に、頼みたい事があったんだ」


 苦笑しながらのソロン王太子の言葉に、レントの眉根が一瞬僅かに寄り、サニン王子は小首を傾げた。

 ミリの眉根と口角は僅かに下がる。


「どの様なお話なのでしょうか?」

「そうだね・・・これはまだ、誰にも言わないで欲しいのだけれど、コーカデス卿も良いかい?」

「え?はい」


 ソロン王太子に急に顔を向けられて、レントは反射的に肯いた。

 ソロン王太子はレントに肯き返すと、顔をミリに向け直す。


「ミリ殿には、王太子妃の手伝いをお願いしたかったんだ」

「どの様な内容なのでしょうか?」

「その、出産までのフォローだね」

「・・・あの、どなたのですか?」


 元王女チリン・コーハナルの出産なら、ソロン王太子やニッキ王太子妃に言われるまでもなく、ミリは手伝う積もりだ。それにチリンの出産準備にニッキ王太子妃が関わって来る事はそもそもない。


「いや、王太子妃本人のだね」


 ミリは立ち上がった。驚いていたレントもそれを見て、ハッとして立ち上がる。


「王太子妃殿下の御懐妊、おめでとう御座います」


 ミリがそう言ってソロン王太子に向けて頭を下げた。それにレントも続く。


「おめでとう御座います、王太子殿下」


 レントもソロン王太子に頭を下げた。

 サニン王子が慌てて小声で口を挟む。


「父上!」


 小声だけど語調の荒いサニン王子に、ソロン王太子は少し訝しげな顔を向けた。


「なんだい?」

「教えてよろしいのですか?」


 サニン王子は眉根を寄せる。


「手伝いをお願いしようとしていたのだよ?」

「それでも、コーカデス卿にまで」


 サニン王子の眉間は更に狭まった。


「授かったのは、コーカデス領でだからね」


 そう言うとソロン王太子はレントを見て、ミリに視線を移す。


「二人とも、座ってくれる?」


 ミリとレントが腰を下ろすのを待って、ソロン王太子は口を開いた。


「王太子妃はコーカデス領のホテル滞在中に妊娠したんだ。ホテルの宣伝に使って貰っても良いけれど」

「父上!母上を宣伝に利用させるなんて!」


 今度は普通の声量で、サニン王子がソロン王太子に言い迫る。


「サニン。ニッキから言い出したんだよ」


 ソロン王太子はサニン王子に微笑みを向けた。


「私もニッキも妊娠をした事に感謝をしているのだ」

「それは私もですが」


 ソロン王太子は微笑みをレントに向けた。


「それはコーカデス領と、あのホテルのお陰だと思っている」


 ソロン王太子は微笑みのまま、顔をミリに向ける。


「サニンの後に死産が続いていたから油断は出来ないのだけれど、ここしばらくは妊娠もしなかったんだ」


 ソロン王太子の言葉はミリに向けてだったけれど、これを自分も聞いて良いのかとレントは落ち着かなかった。

 一方で、助産院の記録からニッキ王太子妃の過去の妊娠記録を知っていたミリは小さく肯き、ソロン王太子も小さく肯き返す。


「それに今は王太子妃の気持ちも落ち着いていて、それもコーカデス領での滞在で、リラックス出来たからだと思っている。それなのでコーカデス領でも世話をしてくれていたミリ殿に、王太子妃の側に付いていて欲しいと考えていたんだ」

「分かりました」


 ミリはソロン王太子に肯いた後にレントに顔を向けた。レントもミリに顔を向け、ミリに向かって小さく肯く。ミリもレントに小さく肯き返した。

 そしてミリはまたソロン王太子に顔を向ける。


「王太子妃殿下のお手伝いをさせて頂きたいと思います」

「あ、いや、けれど」


 そう言う積もりだったと話に出しただけのソロン王太子は、ミリが引き受ける様な事を言うので少し慌てた。


「コーカデス卿との交際練習の約束をしているのだろう?」

「そちらも時間を作って行う積もりですが、やはり王太子妃殿下のお手伝いの方が優先すべきだと考えますので」

「いや、だが、交際練習をバル殿が許可するなんて余程だと思うけれど、大丈夫なのかい?」


 ソロン王太子は、バルがレントの叔母のリリ・コーカデスにアプローチしていた事を知っているし、バルがラーラと結婚した経緯も知っている。そしてミリが生まれた時から可愛がり、嫁にやらないと言っていた事も知っていた。

 そのバルがミリの交際練習を許すなど、余程の事だとソロン王太子は感じている。


 一方でミリには、ソロン王太子の問いの意味が分からなかった。

 そしてコーカデス子爵家がコードナ侯爵家配下に入った事に結び付ける。派閥としての方針だからバルが仕方なく許したと、ソロン王太子に受け取られたのかとミリは思った。

 コードナ侯爵家としてもバルとしても、ニッキ王太子妃の出産準備を手伝う事に問題はない、とミリは判断して小さく肯く。


「はい。問題御座いません」

「そうなのか。それは助かるけれど、ミリ殿?忙しすぎないかい?」


 チリンとラーラも妊娠している事が、ソロン王太子の頭には浮かんでいた。


「はい。大丈夫です」

「それなら、ミリ殿に手伝って貰えるのなら、こちらとしてはとても助かる。コーカデス卿も良いのだね?」

「はい。もちろんです」


 レントとしては、ミリとの時間が減る事になるのは(つら)かったけれど、一年間なら我慢出来る。

 それよりは、ニッキ王太子妃がコーカデス領で妊娠した事を宣伝に使える事の方が、レントに取っては大きかった。

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