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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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推し

 ミリとの話し合いが終わって直ぐに、レントはソロン王太子に宛てて手紙を書いた。内容はサニン王子の勉強会の見学許可が欲しい事と、サニン王子の見識を広げる効率的な方法を提案出来たら、ミリの役目を見直して欲しいと言うものだ。

 子爵から王太子に出して良い要望の範疇を超えているとは思ったけれど、貴族議会関連でソロン王太子の依頼を叶えていたので、要望を出した事自体は咎められないだろうとレントは考えていた。

 ダメ元で良いから要望を出すだけ出そうと思い、本当にダメだったらソロン王太子に謁見をして、ミリと結婚をしたいからミリとの時間を作らせて欲しいと直訴しようとレントは決めていた。

 この国の貴族の場合には結婚に国王の承認が必要になる。もし本当にミリと結婚をするのなら、その時にソロン王太子が国王になっているかは分からないけれど、布石とする為にもどこかでミリとの結婚の希望をソロン王太子に伝えておこうともレントは考えていた。


 レントはミリが出自を持ち出す事に腹を立てていた。

 ミリの父親が誰だか分からない事は、もう誰にもどうしようもない事だ。もちろんレントにもどうにも出来ない。だがそれは他の事に比べ、理由にするには軽過ぎるとレントは思っている。

 性別とか年齢とか、老いとか死とか、どうしようもない事は他にもある。そしてそれら自体は、本人の努力でも周りの協力でも、どうにもならないものだ。しかしそれらだって、性別条件や年齢制限を検討したり、老いや死に備えたりする事は出来る。

 そしてそれらに比較して、ミリの出自は周囲の意識だけが問題なのだ。


 レントはラーラを悪魔、ミリを悪魔の子と聞いて育った。しかし実際に会ってみたミリは、悪魔の子とはとても思えなかった。

 ミリがレントを騙していると言う人間もいるだろう。だからこそ悪魔の子なのだと言うかも知れない。しかしレントには、ミリを悪魔の子と呼ぶ人間の言葉より、自分の判断の方が信用出来た。

 少なくともレントの知る範囲では、ミリほど努力をしている人間が、ミリを悪魔の子と呼ぶ人間の中にはいない。


 ミリは出自のハンデを埋める為に、とても努力をして来た筈だとレントは考える。けれど、ミリの出自に関しての周囲の認識に付いては、覆す事をミリは諦めているとしかレントには思えなかった。


 レントはミリに諦めずに頑張れと言いたい訳ではない。

 ミリに取って必要がないのなら、周囲の認識などどうでも良い。ただレントがそれを気に食わないだけなのだ。

 それなので、ミリがやらないのであれば、自分がミリに対する周囲の認識を変えてやる、とレントは思っていた。

 そしてその認識を変える対象に、レントはミリ自身も含めているのだ。


 レントはミリが、ミリの出自を理由に、ミリ自身を低く評価している様に感じていた。

 常にハンデキャップを意識しているが為に、設定するゴールが高く遠く厳しくなっている。たとえ目標に達しない事があっても、それはミリの努力が足りないのではなく、ミリの目標設定がおかしいのだとレントは思っている。


 ミリに努力を()めて欲しい訳ではない。ミリに自分自身への評価を改めて欲しい。

 そう思った時、ミリ自身を評価していないミリに腹が立つのだと、レントは気付いた。


 これが恋情なのかは分からない。

 けれど、常に努力を怠らずに進むミリに、レントは憧れているのだ。

 そしてレントが憧れているミリの良さ、凄さ、素晴らしさをレントはミリに理解して欲しい。


 つまりミリはレントの推しなのだ。

 そして推しの努力を軽んじる事は、誰であっても、たとえ推し本人であっても許せない。

 ミリが思うミリ自身より、自分の目に映るミリの姿を信じる。そう言う意味では信仰に似ていますね、とレントは自分の感情を評価していた。



 ソロン王太子からは直ぐに、サニン王子の勉強会にレントが参加する事の承諾の手紙が届いた。そしてそれと共に、ミリの関与を減らす手段の提案を歓迎するとも手紙には記されていた。

 サニン王子への授業の補完は、ミリの提案で行われていたけれど、ソロン王太子はミリの負担が大きいと思っていた。それなのでソロン王太子も、ミリの負担を軽くする方法は探していたのだ。


 そしてレントの見学当日。

 レントは授業開始前に、ミリと共にサニン王子に挨拶をした。

 以前の親睦会で面識があったのと直ぐに授業が始まるので、サニン王子とレントは軽く再会を喜ぶ言葉だけを交わした。


 勉強会にはサニン王子とミリの他に、二人と同学年の子息令嬢の希望者も参加をしている。

 レントが勉強会の見学をする事は、サニン王子にはソロン王太子から知らせてあったし、教師達ももちろん事前に連絡を受けていた。

 しかし他の参加者達は、レントを知らない子達はレントが誰だか気になるし、レントがコーカデス子爵だと分かった子達も落ち着かない。

 学院でサニン王子の同級生になるのは、侯爵令嬢のミリ以外は、子爵家か男爵家の子供達だ。つまりこの勉強会に参加しているのも、ミリ以外は子爵家か男爵家の子息令嬢だ。つまりコーカデス子爵であるレントは、令嬢達に取っては配偶者候補の一人であるし、子息達に取っては既に実績を積みつつあるライバルなのだ。

 レントがコーカデス子爵だと分かった子供達の雰囲気に分かっていない子供達も巻き込まれて、勉強会は落ち着かない様子に終始した。

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