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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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二人きりでの謝罪

「リリ殿には会えるかしら?」


 ニッキ王太子妃の言葉にラーラは唾を飲み込んだ。


「こちらに喚び寄せるのでしょうか?」

「そうなるかしら?」

「そうなるね」


 ニッキ王太子妃は小首を傾げ、ソロン王太子は肯く。


「警護の問題もあるから、ニッキから会いに行くのなら、それなりの準備が必要だね」

「そうよね」


 ニッキ王太子妃はソロン王太子に小さく肯いて、視線をラーラに移した。


「リリ殿をこちらに喚ぶ事は可能ですか?」

「それはわたくしには分かりかねますが」

「ニッキ?リリ殿はラーラ殿の部下ではないからね」


 ラーラは眉尻を下げ、ソロン王太子がフォローを入れる。ラーラはミリに顔を向けた。


「ミリ?リリ殿の状況は分かる?」

「分かりかねます。陶磁器や家具の製造は一段落付いています。コーカデス領の領政に付いても落ち着いています。しかしわたくしが関わらない部分に付いては、把握は出来ておりません」


 ソロン王太子が小さく肯く。


「王太子妃が会いたいと言えば、命令になってしまうしね」

「邪魔をする積もりはないのだけれど、折角コーカデス領に来たのだから、少しお話が出来たら良いと思って」


 ニッキ王太子妃に見詰められて、ミリは要望を受け入れる覚悟をした。


「分かりました。わたくしが領都を訪ね、王太子妃殿下のお気持ちをリリ・コーカデス殿に伝えて参ります」

「え?いいえ。ミリ殿にわざわざ行って貰わなくても、私が手紙を出してみるわ」

「わたくしが業務を代行出来る様でしたら、代わりを務めます。リリ・コーカデス殿がこちらに来る事が出来るかどうかはお約束する事が出来ませんが、王太子妃殿下の手紙もわたくしがお届けします」

「そう?」

「はい」

「ではこの後手紙を書きますから、よろしくお願いしますね?ミリ殿」

「畏まりました、王太子妃殿下」


 頭を下げるミリにニッキ王太子妃は微笑む。ソロン王太子は僅かに苦笑を浮かべていたが、ラーラは微笑みを浮かべ、ラーラの護衛として立つバルは無表情を通していた。



 ミリが届けたニッキ王太子妃からの手紙を受け取り、レントの叔母リリ・コーカデスは直ぐに港町に向かった。ミリはリリの代わりにコーカデス領都に滞在し、リリが戻って来るまでの間はレントの祖父リート・コーカデスを補佐しながら、石切り場や水路の様子を見に行く事にする。

 リリが港町に到着するまでの間、ソロン王太子とニッキ王太子妃はチリン・コーハナル元王女の行動を辿って、他の国の様式の料理を楽しんだりホテルに泊まったりしながら待った。


 港町にリリが到着すると直ぐに、ニッキ王太子妃は会う事を求める。

 王太子夫妻の宿泊する部屋にリリが通されると、同席していたソロン王太子はリリへの挨拶もそこそこに、ニッキ王太子妃から退室を求められた。

 使用人も護衛も下げられて、部屋にはニッキ王太子妃とリリの二人きりになる。


「久し振りですね」


 先程も言った言葉をニッキ王太子妃は繰り返した。それを受けてリリも先程と同じ言葉を返す。


「御無沙汰致しております」

「ラーラ殿とも学院以来の再会だったのですけれど、リリ殿とも学院で会話をしたのが最後でしたね」

「はい」

「私はずっとリリ殿に謝りたいと思っていたの」


 リリは視線を一瞬下げ、直ぐにニッキ王太子妃に戻した。


「何の事に付いてでしょうか?わたくしには心当たりが御座いませんが?」

「私、と言うよりミッチの事だけれど、あなたに色々と失礼な態度を取っていたわ」

「いえ・・・」


 一旦否定だけしたけれど、ニッキ王太子妃が話を続けない様子なので、リリは言葉を足す。


「その様な事は御座いません」

「いいえ。私は姉としてミッチを諫めなければならない立場でした。けれどミッチの言動を放置してしまい、リリ殿には申し訳ない事をしたと後から気付いたのです」


 ここでまたニッキ王太子妃が話を区切るが、リリは何と返せば良いか直ぐには思い付かなかった。

 リリは無意識に視線を下げ、ニッキ王太子妃の唇を見詰めながら、ニッキ王太子妃の妹ミッチ・コウラを責めない言葉を探る。


「・・・王太子妃殿下もミッチ様も、公爵家の御令嬢として振る舞うのは当然で御座いました」

「リリ殿にそう言って頂けて、嬉しいわ」


 またリリは返す言葉が直ぐに出なかった。


「・・・それですので、王太子妃殿下に謝罪を頂く訳には参りません」

「いいえ。リリ殿にわざわざ出向いて頂いたのも、人払いをしたのも、リリ殿に謝りたいと思ったからなの」


 またリリは言葉が直ぐに出ない。


「・・・過分なお心遣い、感謝致します」

「赦して頂けるのね?」

「王太子妃殿下もミッチ様も、正しい事をなさっていらっしゃったのですから、始めから赦すも赦さないもないのでは御座いますが、当時の事に対してわたくしには何の心の閊えもない事をお伝えさせて頂きます」

「それは赦して下さると言う事?」


 リリはまた返しに詰まった。

 そして視線を更に下げ、リリはニッキ王太子妃の胸元を見る。


「・・・はい」

「私もミッチも赦して下さるのね?」

「はい」

「良かったわ。ありがとう、リリ殿。こうしてリリ殿に謝罪を受け入れて頂いて、私の胸の閊えが取れました。ありがとう、リリ殿」

「こちらこそ、ありがとう御座います」


 即した返しとは思えなかったけれど、リリは顔を伏せたままそう口にした。

 ニッキ王太子妃は微笑みをリリに向ける。


「本当はソロンと結婚する前に謝りたかったの。学生の内に。今回謝罪の機会を下さった、リリ殿には感謝もしています」

「もったいないお言葉です」


 リリは更に顔を伏せて頭を下げ、目を瞑って小さく息を吸った。

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