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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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バルの我が儘

「ミリ」

「はい、お父様」

「おいで」


 そう言うとバルは体をずらし、ベッドの上のバルとラーラの間にミリが座れる隙間を作る。そしてミリを手招きした。

 ミリは誘いに応じ、バルの隣に腰を掛ける。バルはミリの膝裏に手を差し込むとミリの体を持ち上げて、ラーラの隣に下ろした。

 ラーラはミリの腰に片腕を回して抱き寄せる。バルはミリの頭に手を置いて撫でた。


「これは命令ではなくて、私の我が儘として聞いて欲しい」

「我が儘ですか?」

「そうだよ。まず、ミリには学院に通って欲しい。貴族クラスにね。試験を受けるだけではなく毎日通って欲しい。そうするとミリの言う通りに、サニン殿下に関わる事で色々とあるのかも知れないとは思うけれど、それは人間関係の勉強だと思って欲しい」

「はい」

「待って、ミリ。命令ではなくて、我が儘だよ?話し合いと言った方が良いかな?取り敢えず、私のミリへの要望だ。要望を伝えるから、少しでも嫌だと思ったら言って御覧。あっ、そうか。良いかい?これは命令だよ?少しでも嫌だと思ったり、違うと思ったら反論する事。出来るかい?」

「・・・はい」

「うん。それで、サニン殿下に関わる事で、公爵家が搦んだトラブルに巻き込まれる事をミリは懸念していたけれど、その様な事が起きても私もコードナ侯爵家もミリを守るから心配は要らない。そしてそれは私に取ってもコードナ侯爵家に取っても当然の役目なのだから、周囲を巻き込むと考えなくて良い。もちろん公爵家に限らないよ?ミリを守る事に付いては私もお母様もお祖父様もお祖母様も、ミリが生まれる時に既に覚悟は出来ているからね。それだから何かが起こっても、これから生きて行く為のトラブル対応の訓練くらいに思って欲しい」

「はい」

「コーカデス卿との交際練習は()めても良いけれど、王都に行ったら先ずはコーカデス卿と話し合って欲しい。コーカデス卿は今やコードナ侯爵家配下の貴族だ。始めるにしろ止めるにしろ、コーカデス卿なりの考えがある筈だからね」

「はい」

「この事は王都に行く話とは別だよ?私との話し合いの結果、ミリがここに居残るままになっても、交際練習やプロポーズの振りに付いて、コーカデス卿とは話して欲しい。手紙ではなくて、直接会ってね?」

「はい」

「そしてコーカデス領の開発からは手を引いて欲しい」

「え?」

「バル?」


 名を呼ばれてバルはミリの隣のラーラを見る。


「要望だよ、ラーラ。実現が可能かどうかは関係なく、私の要望だ。その様な事は難しいとは私も思うけれど、私の率直な気持ちだよ」


 バルは視線をミリに戻した。


「そしてその分を学院に通う事に力を注いで欲しい。そして友人を作って欲しい。友人は貴族ではなくても構わない」


 ミリは目を見開く。


「え?」

「うん?それ程驚く事かい?」

「あの、入学するのは貴族クラスなのに、よろしいのですか?」

「私は貴族クラスでお母様は平民クラスだったけれど、二人は友人になったよ。授業は別々だけれど、休み時間や放課後に交流したし」

「分かりました」

「それと助産院や治療院に通うのも程々にして欲しい」

「それはお母様やチリン姉様の出産があってもですか?」

「普通は母親や従姉妹の出産に、専門知識は求められないのではないかな?」

「それはそうだと思いますけれど」

「私は男だから助産師をどれ程信頼して良いのか感覚が掴めないのだけれど、ミリは王都やここの助産師を信頼しているのではないのかい?」

「それはもちろん信頼しています」

「それなら普通の令嬢程度に、出産を手伝うのでも良いのではないかな?」

「・・・そうですね」

「ミリ?そうしろと言っている訳ではないからね?助産院の手伝いより放課後に学友と過ごす時間を優先してもらいたいから、程々にして欲しいと思うんだ。それに対してのミリの意見は、私の要望を聞いた後に教えておくれ」

「はい」

「うん。それと護身術はこれまで通りに練習して欲しい。これも放課後に友人と過ごす事と同程度の優先度だね」

「はい」


 ミリはしっかりと肯いた。


「つまりお父様の要望と言うのは、コードナ侯爵家やお父様とお母様の事より、私には私の将来を優先する事を望まれていて、身を守る事も、友人を作る事で対人関係の構築を学ぶ事も、その際にトラブル対応を経験しておく事も、その為だとお考えなのですね?」

「そうだね。それと友人を作る事は味方を増やす事も狙っているよ」

「・・・しかし、例え平民でも、学院に通う生徒なら富裕層の筈で、そうすると本人の感情よりは実家の意向が優先される筈です。お父様が望む友人と言うのは、その様な相手でもよろしいのですか?」

「構わないよ。何故ならミリを知って貰う事が、友人にする目的だからね。ミリの為人を知って貰う為には、それなりの時間を一緒に過ごす必要があるだろう?」

「そうですね」

「一緒に過ごす為には友人となっておいた方が簡単じゃないか」

「そう言う事ですか」

「ああ。それで一緒にいればミリの良さも凄さも分かると思うし」

「私も相手の方を深く知る事が出来ますね」

「それもそうだけれど、友人の影響で自分が変わる事もある。ミリの影響を受けたらその子は変わるし、その子が変わればその子の実家にも影響する事が出来る。それが狙いだね」

「お父様?その狙いは上手く行く様には思えませんが?」

「そうかい?」

「はい。子供が変わる事で家族が変わると言う事ですよね?子供が親や祖父母に与える影響は限定的ですし、大人の考えを変える程の効果は考え難いのですけれど」

「私がお母様と出会ってから、コードナ侯爵家の人間は考えが変わったよ?」

「え?そうなのですか?」

「ああ。ミリが知っているのは、私とお母様が出会った後のコードナ侯爵家だからね。昔はやはり平民との結婚など考える事などなかった。ソウサ家もそうだよ?昔のソウサ家は、貴族との間に距離を置いている事で有名だったのだから」

「それは聞いています」

「そうだろう?それもやはり、お母様が私と出会ったから変わったと思うし」

「それはお父様とお母様が結婚なさって家同士の結び付きが出来たからではなく、その前にお父様とお母様が実家の家族に影響を与えたからだと言う事ですか」

「その通りだよ」

「お父様とお母様は結婚なさいましたけれど、友人の関係でもその様に、影響の広がりがあるとお父様はお考えなのですね?」

「ああ、そうだよ。その通りだ」

「なるほど」


 ミリは平民として広場で出会った友人達の事を考えていたけれど、あの子達には自分の事を伝えていない。それなのでバルが言う事に、最初は違和感があったのかも知れないとミリは考えて、小さく肯いた。

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