第46話 神器
領地開発をしていたら突然陛下からの呼び出し、そこで指示通り軍備を整えて王城で陛下と謁見をしていると、なんと突如この世界の神セペリウス様と、なぜかその兄であり地球の神ゼラギウス様が現れた。
そして、周囲の国々を飲み込んでいくクリムナ王国改めクリムナ帝国の皇帝マリナルクベール・ド・ウルカルティブ・ダ・クリムナは、かつて俺の子孫でありフィーナの先祖でもある上森浩平によって討たれた魔王の転生した姿だったのだ。しかも、このマリナルクベールは俺のように生まれたときから前世、つまり魔王としての記憶を持っていたわけではなかった。セペリウス様によると、近頃マリナルクベールに魔物が接触して彼の中にある魔王としての記憶を取り戻したそうだ。そのおかげで今、マリナルクベールが率いいるクリムナ帝国は魔物の軍勢も加えて、マナリズ王国国王をはじめとした貴族連中の出身地であるシュミナ王国へと進軍しているという。
それだけでも厄介だというのに、この魔王のさらに前世であり、その正体は俺たちが薄人と呼ぶ金髪碧眼白い肌をした者たちを導き現在神としてあがめられているマーラムその人だという。これを聞いた陛下をはじめとした貴族たちは信じられないといった風でいまだショックから抜け出せないようだった。
「……あ、あの、セペリウス様、今の、マーラムが魔王って話は、本当なのですか?」
フィーナもさすがに多くの人が神とあがめ、俺たちも一応表向きは信者であるマーラムが魔王ということは信じられないようで、セペリウス様に確認をとった。
「はい、残念ですが、その通りです、彼は、自身が戦争のために作られたこと、そして、放棄されたことに対して、強い憎しみを抱いておりましたから、とはいえ、当時の彼が憎んでいたのはあくまで、自身をしてた者たちに対してでした。同族である新人種たちには慈愛を持っていましたよ。だからこそ、神としてあがめられたのです」
セペリウス様の言葉を聞いた陛下たちは少し安堵していた。
「……セペリウス様、1つよろしいですか」
ここで陛下がセペリウス様に尋ねた。
「はい、なんでしょうか、オリヴァルトさん」
セペリウス様も微笑みながら応対した。
「恐れ入ります、現在クリムナ帝国の皇帝を名乗るマリナルクベール殿は、魔王としての記憶を取りもどしたとおっしゃいましたが、マーラム様のご記憶も取り戻しておいでなのですか?」
これは、重要なことだろう、この答えによっては、俺たちは神とあがめているマーラムと戦うことになるからだ。
「はい、残念ですが、その通りです。しかし、彼は、魔王になった際の憎しみで善なる心を邪気によって上書きされもはや彼はあなたたちがあがめるマーラムさんではありません、本来なら、転生を繰り返すことで、その憎しみを浄化してもらおうと思っていたのですが、記憶を取り戻したことで、それも、戻ってしまいました」
「なるほど、そうですか、確かに、マリナルクベール殿は、奴隷たちには苛烈を極めるような扱いをしていましたが国民に対しては、慈愛のある方でしたからな」
陛下はかつて自身が会ったことがあるマリナルクベールに思いをはせていた。
「それで、セペリウス様とゼラギウス様が2柱でやってきたのは、何もそれを伝えるため、ではないですよね」
話が少し一段落したところで俺がセペリウス様に本題を尋ねた。もし、これまでの話をするだけならセペリウス様だけでいいはず、ここにゼラギウス様が来た説明がつかない。
「おお、さすがは僚一君だね。そう、その通りだよ」
俺の指摘にゼラギウス様が嬉しそうにそういった。
「ええ、先ほども言いましたが本来であれば転生を繰り返して、マーラムさんの邪気を浄化するつもりでした。実際、だいぶ浄化できていたのですが」
「記憶を取り戻したことで、これまでの浄化が無駄になったんだよね」
「はい、そして、こうなると、再び転生を繰り返してもあまり浄化が見込めないのです」
「そこで、討伐と一緒に一気に浄化してしまうことにしたんだ」
セペリウス様とゼラギウス様が交互にそう説明してくれた。
なるほど、せれでゼラギウス様も来たのか。
俺はこれで納得した。
「つまり、俺と愛美が持っている刀にその浄化の力をつけるということですか?」
「そう、その通り、昔、君たちの先祖にワシが与えたものだからね。それを神器として浄化の力を付加するためにワシが来たってわけだよ」
やはり、思っていた通りだ。俺はゼラギウス様の存在を知った時、俺と愛美が持つこの上森の刀はゼラギウス様が先祖に与えたものだということは予想出来ていた。
「というわけで、僚一君愛美ちゃん、刀を前に出してくれる」
「はい」
「えっと、はい」
俺と愛美は前に出て刀を鞘ごと抜き、ゼラギウス様前に出した。
「うん、それじゃ行くよ」
そんな掛け声とともにゼラギウス様から神さまらしい光を出し、その光が俺たちの刀に吸い込まれた。
「うん、これでおしまい」
なんとも軽いが、次の瞬間俺たちの刀の刀身に、見たこともない文字が刻まれて、これまでと違い神聖としか言いようのない雰囲気をまとい始めた。
「……」
「な、なんと、神々しい」
その様子に多くの者が沈黙する中陛下がそう感嘆の声を思わず上げた。
「これが、浄化の力、すげぇな、持っているだけでものすごい力を感じる」
「う、うん、これまでも、力は感じていたけど、これまでとは比べ物にならない感じ」
愛美の言う通り、これまでも刀からは尋常ならざる力を感じていた。それは、前世もある程度は感じていたが、この世界に来て魔法を使うようになってからはより顕著に感じていたものだった。それが、浄化の力を得たことで途方もない力を感じる。ゼラギウス様の軽さからは想像ができないほどだ。
「ふふっ、それでは、今度はわたくしの番ですね」
今度はセペリウス様がそんなことを言い出した。
なんだと思っていると、おもむろにセペリウス様が手をかざすとその手に1振のショートソードが現れた。
しかも、このショートソード、俺と愛美の刀のように見たこともない文字が刻まれた投信と神々しい光が輝いていた。
「さぁ、フィーナさん、これはあなたに与えましょう」
「えっ、私ですか?」
セペリウス様から名指しを受けてフィーナは困惑していた。
「ええ、さぁ、どうぞ」
「は、はい、謹んでお受けいたします」
そういって、フィーナがショートソードを受け取った。
「それから、もう1つ」
そういって、セペリウス様が手を前に出すとそこには1本の槍、その形状は、母さんとエニスが好んで使っているパルチザンによく似たもので、その刃には俺たちと同じく見たことない文字と神々しさがあった。それを見た、エニスは目を輝かしていた。
多分自分がもらえると思っているのだろう、まぁ、俺としては、微妙な気がする。
「これについては、少々迷いましたが、まずはキナさんにお渡しします」
それを聞いた、母さんは嬉しそうにしながらもエニスを見てすまなそうにしている。
一方エニスも露骨にがっかりしていた。
俺としても、セペリウス様の迷ったということにな遠く出来る分、なんとも言えない。
「しかし、所有者としては、エニスさんも登録してありますので、エニスさんも使用することはできます。ですので、エニスさんに渡すかどうかはキナさんにお任せします」
セペリウス様がそういった瞬間エニスの顔が輝き、母さんが少しホッとしていた。
気持ちはわかる、俺もエニスの嬉しそうな顔を見るのは好きだからな。そして、その場にいたフィーナや愛美もまた同じように微笑んでいた。
今や、エニスは俺の妹ではなく俺たち全員の妹となっていた。
「ありがとうございますわ、セペリウス様、エニスと2人、大切に使わせていただきます」
「うふふっ、喜んでいただけただけようでなによりです。さて、今回皆さんに渡したこれらの武器は先ほども言った通り所有者登録をしてあります。所有者以外では、使うことはできませんから安心してください」
どうやら、セペリウス様がフィーナたちに与えた武器は俺と愛美の武器と同様なしようとなっているようだ。
「それを後に継がせる場合はファルターさんがご存知の通りの方法で大丈夫ですよ」
これもまた同じで継承の儀をすればいいそうだ。
「わかりました。そのようにします」
「ふふ、それでは、わたくしたちはそろそろ、戻ります。オリヴァルトさん、お邪魔いたして申し訳ありませんでした」
「い、いえ、そのようなお言葉は不要にございます」
陛下もさすがに緊張の面持ちでセペリウス様に応対した。
「それでは、失礼します。みなさん、どうか、彼を救ってあげてください。では」
「それじゃねぇ、僚一君も愛美ちゃんも元気でね」
そういって、セペリウス様とゼラギウス様は去っていった。
ちなみに、セペリウス様は去る際に一瞬愛美の方でぬいぐるみのふりをしていたポルティを見ていた。多分、声を出せないポルティに心で話しかけたんだろうと思う。
なぜなら、ポルティの表情が一瞬嬉しそうに笑顔になったからだ。
こうして、俺たちは、突然神様から神器となる武器を与えられ、魔王の魂の浄化を依頼されたのだった。
セペリウス様たちが去った謁見の間はしばらく静まり返っていた。
「……うむ、まさか、神がご降臨あそばされるとは思わなんだな」
陛下が心からの言葉を言った。
「は、はい、しかし、神のお言葉とは言え、先ほどのことは、とても信じられません」
それに随伴したのは宰相だった。
「うむ、まさか、我らが指導者にして神、マーラム様の魂と、魔王の魂が同じものだったとはな」
「信じたくはありませんが、かのお方々から感じた神聖は本物、この世界の神、セペリウス様であることは間違いないでしょう。なら、かのお方がわれらに虚偽をいう必要はありますまい」
貴族の誰かがそういった。
「うむ、その通りだ。ファルターよ」
「はっ」
ここで突然陛下に呼ばれた。
「そなたには聞きたいこともあるが、今はまず、改めて余から命である。現在我が王家並びに貴族の故国であるシュミナ王国に牙を向けている、魔王を討伐し、我らが指導者にして神、マーラム様の魂をお救いせよ」
厳かにそう告げられた。
「はっ、このファルター・ド・シタナエール身命を賭して、陛下のご命令に従い、クリムナ帝国皇帝マリナルクベール・ド・ウルカルティブ・ダ・クリムナこと、魔王討伐を果たし、かの魂を必ずや浄化いたします」
俺は陛下の前でそう宣言した。
しかし、自分でも思うけど、よくクリムナ帝国の皇帝の名をかまずに言えたもんだ。
そのあと、俺たちは陛下やほかの貴族からねぎらいと励ましの言葉をもらい。王都を旅立った。




