第47話 シュミナ王国のシンダリオン家
王城でまさかのセペリウス様とゼラギウス様兄妹が降臨。そこで、クリムナ帝国の皇帝が魔王の生まれ変わりであり、しかもその魔王もかつて薄人達を導き神としてあがめられているマーラムであるという衝撃的な事実が詳らかになった。陛下もその他の貴族もその事実に衝撃を受けていた。まぁ、俺たちも表向きはマーラムを信仰していたために衝撃だったのは事実だった。
とまぁ、そんなわけでシュミナ王国の救援から魔王の魂の浄化をするという神様からの依頼を受けることになり、俺と愛美のかなたは浄化の力をゼラギウス様から与えられ、フィーナと母さんとエニスに同じく浄化の力を宿した神器を与えられた。
それからようやくわれに返った陛下たちから送り出され今はシュミナ王国に向かって行軍している最中だった。
行軍はやはり時間がかかり、王都を出てシュミナ王国の国境に行くまでに1か月かかった。
「あの国境を越えればシュミナ王国です。ファルターさんここからは、その……」
アルディが言いよどんていたが何を言いたいかはよくわかっていた。
「ああ、わかっている。あそこを越えれば俺たちの種族は奴隷として扱われているまともな扱いは期待してないさ」
そう、シュミナ王国がたとえマナリズ王国と夕刻国であったとしても、シュミナ王国では俺たちの種族は奴隷だ。そのために俺たちの種族ではマナリズ王国から出ることは禁止されているほどであり、また罪を犯した者が追放される地でもある。
「ここからは僕に任せてください。皆さんを決して奴隷などとはさせませんから」
アルディからの力強い言葉であった。
「ああ、任せるよ」
俺も全面的にアルディを信用していることもあり任せることにした。
それから、シュミナ王国の国境警備兵たちとアルディを含めた他貴族たちが何やら話をしてから、俺たちは無事シュミナ王国に入ることができた。
行軍を続けることさらに3週間がたった。
「ふぅ、ようやく目的地か」
「はい、すみません、皆さんにはずいぶんと苦労を掛けてしまいました」
アルディが申し訳なさそうに俺たちをねぎらった。
「気にするな」
「そうそう、マナリズ王国を出た時点で覚悟してたことだし」
「はい、確かにちょっと残念なこともありましたけど……」
「うん、まぁ、でも別に攻撃されたわけでもないしね」
「そうだな、それにアルディが気にすることではないだろう」
俺の言葉に続いてフィーナ、サーラ、愛美、父さんのフォローだ。
「それで、あの街は俺たちも入ってもいいのか」
実は俺たちはこれまでの街には入っていない。その理由は簡単で俺たちが原住民だからだ。この容姿を持ったものはこの国でも奴隷、奴隷が街に入るには主の許可が必要になる。これまでの街ではすべてがその制度を持っていたために、俺たちが普通に入るといらぬトラブルを起こすことになることからアルディとは別の貴族たちに止められていた。
「はい、あの街は、僕の親戚筋に当たるシンダリオン家が収める街です。シンダリオン家は代々、皆さんのような原住民の方々をさげすんだりすることを領民に禁じています。まぁ、それでも奴隷としては扱っていますが……」
アルディはやはり申し訳なさそうにそういった。
「まぁ、大丈夫だ、俺たちも面倒は起こしたくないからな、おとなしくしているさ」
「そうだな。それがいいだろう」
「ええ、そうね」
俺の言葉に父さんと母さんが同意した。
「それでは行きましょうか」
こうして、俺たちはアルディの一族シンダリオン家の本家筋にあたるシュミナ王国の街シンデリーへと足を踏み入れたのだった。
シンデリーの街は魔物などの侵入を防ぐために城壁で囲まれ、俺たちは巨大な門を通り抜けた。といっても、そこを通るのに俺たち原住民は通行料を取られたのはなんか解せないが……。
まぁ、その際にアルディがかなり申し訳なさそうにしていたことから、俺たちとしても文句を言おうにも引っ込んでしまっていた。俺としてもいくら遠い親戚筋といってもアルディに責任はない。
だから、俺はアルディの背中をポンと軽くたたいておいた。
それから街の中に入ると、そこにはやはり金、金、金、金髪だらけだった。
しかもそれらが一様に俺たちを見てまるで嫌なものを見たような表情で歩いている。
「ここまでだと、逆にすがすがしいな」
「う、うん、確かに」
「で、でも、ちょっと怖いです」
「なんか、殺気も混じってない」
「敵? なの」
なんか一人物騒なことを言っているが、それぞれ、俺とフィーナ、サーラと母さん、エニスの順だ。
「エニス、確かに殺気があるかってここの連中は敵じゃない」
「一応民間人だからね」
そんなエニスに苦言を言ったのは父さんとクルムだ。
「重ね重ね、すみません、僕もここまでの反応を示されるとは思いませんでした」
そういって、アルディがこの国に着て何度目かになる謝罪を口にした。
「いや、お前が悪いわけじゃないだろ。そもそも、この憎悪の念は自分たちを戦争の道具として作っておきながら放置した、俺たちの先祖が起こしたことだそうだしな」
「いえ、確かにそうだとしても、僕たちはそれを知りませんでしたから」
「そうだな。まぁ、遺伝レベルに染み付いたものだろう。俺たちは気にしないから、お前も気にするな」
「は、はい、わかりました」
そういってアルディはまだ腑に落ちない感じだが納得してくれた。
さて、それで、街の具合だが、一言でいえば、マナリズ王国より古い国であり、この街もかなり古くからあるようだが、どう見てもマナリズ王国の方が発展しているように見える。建物はなんだか粗い作りで所々修繕しながら使っているように見えた。
どういうことだろうと考えているとあることに気が付いた。
それは、この街が金髪碧眼の薄人達で構成されている街であるということだ。実は、これは俺たちマナリズ王国での話だが、原住民である俺たちと金髪碧眼の薄人では、圧倒的に器用さが違う、これもまた俺たちが彼らを薄人という所以でもある。
多分、この国は薄人達が貴族だけでなく平民として職人となっている。不器用な彼らがたてたものだから粗い作りなんだろう。といっても、ここにも奴隷という身分だけど原住民がいる。しかし、奴隷としてこき使われている彼ら原住民が果たして全力でものを作るだろうか、いや、作らないだろうな。だから、この街は発展が遅いんだろうと思う。
俺がそんな思考をしていると、どうやら街に中心に位置するシンダリオン家の屋敷についたようだ。
シンダリオン家の屋敷は侯爵の爵位を持っているだけに大きい、また屋敷には門番がおり、アルディやほかの貴族たちには礼儀の限りを尽くした対応をしていたが、俺たちを見るなり一瞬顔をしかめていた。
「さすがに、門番だけあって露骨ではないわね」
「だな、ちゃんと教育はされているようだな」
「ほかの街ではここまでの対応はされないだろうな」
俺たちもこの扱いになれたものだった。
さてと、そんなことを話しているとどうやら屋敷から1人の執事が現れた。
「これは、皆さま、お待ち申し上げておりました。どうぞ、わが主がお待ちです」
執事は俺たちを一瞥した後何も中たち用にアルディ達に向かって言った。
こうして俺たちは屋敷に通されたわけだが中に入ると、まさにテンプレ、中央の階段から1人の紳士と1人の淑女が降りてきた。執事の対応を見るとどうやら、紳士の方が現シュミナ王国におけるシンダリオン家当主、テサーリオ・フォン・ダルメシン・シンダリオン侯爵その人だろう。そしてその隣にいる淑女は、ティサラ・フォン・コイナ・シンダリオン夫人だろう。
「シンダリオン侯爵殿本日のお招きありがとう存じます。僕はマナリズ王国、アルディオン。フォン・ブルグ・シンダリオンと申します」
ここで同じくシンダリオンであるアルディが最初に言葉を述べた。
「おお、そなたが、我がシンダリオン、マナリズ王国の末であるか、噂は聞き及んでおる。かの暗殺ギルドを壊滅させたそうだな」
「いえ、僕は何も、暗殺ギルドを壊滅させたのはこちらの僕の恩人でもあるファルター・ド・シタナエール殿です」
そういってアルディが俺を紹介した。
「おお、お主がそうか、お主の噂も聞いておる、かなりの魔法使いであり、武術まで極めておるとか、にわかには信じられぬとみな申して居るが」
やはり疑っているような目で俺を見てきた。
「いいえ、テサーリオ殿、ファルター殿のお力は本物です」
そこですかさずアルディがフォローをした。
「うむ、そうか、まぁ、立ち話をしていても仕方がない、詳しい話は食事でもしながらとしようか。ファルターと申したなおぬしたちの分も用意させてもらった」
一応このテサーリオにも俺が騎士爵と領地を得ていることは知らせてあるはずだが、俺の種族が原住民であることからかなり上から目線だった。
「心遣い痛み入ります」
特に俺も気にはなったが追及することではないのでそういった。
それから、俺たちはアルディを中心にこれまでの話をした。それを聞いたテサーリオは信じられないといった風だったが、アルディがまるで俺に心酔しているかのように話すので、少しうなっていた。
ある程度話と食事がすんだところで、今後の話となった。
「さて、アルディオン殿、これよりそなたたちには私の指揮下に入っていただくことになるが、構わないかね」
「はい、陛下からもそのように伺っております。しかし、少し事情が変わりました」
「事情とな?」
「はい」
その後、アルディが敵のトップであるクリムナ帝国の皇帝を名乗るものが実は魔王であることを話した。もちろん、セペリウス様の話はしていない。誰だって信じないからな。
「なるほど、魔王か、確かに、魔王なら魔物の軍勢を率いているという説明がつく、して、それと彼らがその魔王を倒すという話にどうつながるのかね」
それを聞いたアルディが俺たちを見た。そして、俺たちもうなずいた。
「実は、こちらのファルター殿の奥方であるフィーナさんはかの勇者の末裔であり、ファルター殿もまたその勇者の仲間の魔法使いの末裔なのです」
「なんと、まさか」
さすがに驚いているようだ。
「これは事実です。実際、フィーナさんは先の武術大会で優勝を果たしておりますし、何より、このお2人は現在陛下より騎士爵を賜っておられますが、それ以前は冒険者をしておりました。そのランクは15、テサーリオ殿も我が国においての冒険者ランクの評定基準はご存知でしょう」
「う、うむ、知っておるが、まさか、たった1年で、15、……なるほど、勇者の末裔ならば当然の結果か」
テサーリオは俺たちのランクを聞いて目を丸くしたが、それ以前に聞いた勇者の末裔という言葉を受けて納得したようだった。
「まさか、それほどの実力者とはな。ふむ、確かに、そういうことなら魔王を討つことはできよう」
こうして、俺たちはこのアルディの親戚筋に当たるシュミナ王国のシンダリオン侯爵の指揮下に入ることとなった。




