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第39話 シタナエール丘陵

 いい加減うっとうしくなった暗殺ギルドをつぶすために、アルディに協力を要請したら、なぜか国王陛下が協力してくれた。しかし、王城に忍び込めとか無茶なことを言ってきたが、国王自らそういったのなら仕方ないと思い、忍び込んだ。そして、暗殺ギルドのギルドマスターをしていたアウディオレ家は滅亡、それによりセルミナルクの領主がいなくなった。

 しかし、そこに俺との縁を結んだという、よくわからないことを言った陛下によりアルディが伯爵位を受け、そのままセルミナルクの領主となった。

 一方俺はというと、平民だし報奨金がもらえるかと思っていたら、それは思い違いで、なぜか俺まで騎士爵(平民で唯一もらえるっ爵位)をもらった。

 それで終わればいいのに、なぜかシタナエール丘陵という領地までもらってしまった。

 俺としては気ままな冒険者をしていたいのに領地運営なんて御免こうむりたい。しかし、相手は国王その人、平民に過ぎない俺では断ることなどできない。そんなことをすれば、俺が処刑されてしまうというわけだ。

 というわけで、仕方なく、いやいや、領地を受け取らざるを得なかった。


 そして、今俺はその領地、シタナエール丘陵にやってきている。

 同行者は当然、フィーナ、父さんと母さん、エニス、愛美とポルティ、サーラとクルムの家族に加え、マドリスをはじめとした屋敷の使用人たち全員だ。

 なぜ、こんな大所帯になったかというと、王都からの帰り、アルディ達と別れた俺たちはいったん屋敷に帰った。そして、マドリスたちを集めて領地をもらったことを話した。

 すると、みんな大いに喜んでくれて、当然のようについてきてくれるといってくれたのだ。

 何もないから大変だとは言ったが、逆にそれをサポートしたいと懇願されたのだ。

 俺としてもそれはうれしいことだったので、頼んだ次第である。

 また、セルミナルクに帰った際、クジャリにあいさつとここシタナエール丘陵について聞きに行った。それによると、ここは、丘陵と名がついているだけになだらかな丘が複数連なっていて、木々もちらほらと生えている広大な土地だ。といっても、その広さはセルミナルクの街よりも小さい、端から端まで歩いても数時間でたどり着くだろう。

 本来領地というのはこういった場所が複数ある場所を言うが、俺は平民で騎士爵あまり多く与えても他の貴族連中が黙っていないだろうという配慮の形だった。

 まぁ、俺としてもこれでも広いんだけど……

 そして、実はこの地は、正確にはマナリズ王国の国土ではない、というよりどの国の国土でもない、どういうことかというとその答えは今俺の目の前に広がっているわけだ。

「……なにこれ……」

 俺たちが絶句している中何とかそうつぶやいたのはサーラだ。

「多すぎだろ」

 俺もなんとか声を出すことができた。

 俺たちもかなり強くなり、めったなことでは動じないと自負している。しかし、大量にうごめく魔物、それも一体一体がかなり強力な魔物だ。

 そう、これが今まで誰も国土としなかった理由だ。

 こんな大量で強力な魔物を討伐できるものがまずいない。

 なにせ、その強さは、俺とフィーナが以前討伐を受けた。ワイバーンこれよりも少し強いぐらい。つまり、ワイバーンでも、ランク12で出る依頼だ。それより強いということはランク13ぐらいでちょうどいいぐらいと考えられる。

 確かに、俺たちからすれば簡単に倒せる魔物たちだ。しかし、数が多すぎる。

「どうするの、これ、やろうと思ったら、かなり時間かかるよね」

 愛美も少しうんざりしながら言った。

「でも、やるしかないだろうな」

 父さんはやる気があるようだ。

「でも、始まったら、終わるまで止まれないわよ。これ」

 母さんの言う通りで、もし一体倒したら間違いなくほかの魔物が寄ってくる。そして、それが続きすべて討伐するまでは戦いを終えることができないだろう。

 俺が見ただけでもこの数と戦い続けるとしたら、2日か3日はかかるだろうな。

 無理があった。せめて、もう少し人数がいれば……

 俺がそんなことを考えたからだろうか、後方から声がかかった。

「旦那様」

 俺が振り向くとそこにはマドリスがいた。

 マドリス以下使用人たちには安全な広場で天幕を立てていてもらっていた。

「なんだ、こっちは危ないぞ」

「いえ、御客様がお越しです」

「客? こんなところに」

 一体なんだろう、そんなことを思いながらマドリスがさす方を見るとそこにはなんと複数の冒険者、その先頭には見覚えのある男女。

「よう、ファルター、来てやったぜ」

「あなた、ご領主様に失礼ですよ」

「おっ、おう、そうだったな」

 俺としてはそれで構わないんだけどな。

 俺に気安い感じで話しかけてきたのは、ブルックリム要塞でともに戦った、傭兵クランの代表ブリネオだった。そして、その隣に寄り添うように立つのは、ブルックリム要塞司令官ガイの娘ターナだった。

 あれ、ちょっとまて、今ターナが聞き捨てならないことを言ったような気がしたんだけど。

 俺がそう思っていると2人がやってきた。

「ガイからの要請で、シタナエール騎士爵様の騎士団となるために来た」

 ブリネオは俺が尋ねるより早くそう言った。

「騎士団? ガイから」

 俺はその言葉を聞いた時、たぶん陛下の考えだろうと直感した。

「そうか、それは助かる。領地をもらっても騎士団をどうするか考えてなかったんだよな。ブリネオたちなら安心だ。でも、いいのか、お前ら傭兵だろ」

「ああ、構わねぇよ。まぁ、お前ら以外だったら断っていたけどな」

 などと、言ってくれた。ありがたいことだ。

「それで、さっそく仕事か?」

「そうだな、そうしたいけど、その前に……」

 俺は先ほど気になったことを問いただそうとした。

「ターナさん、ブリネオと結婚したのね」

 フィーナが先に尋ねてしまった。

「ええ、あの後すぐに、ごめんなさい、御恩あるお2人にはすぐに知らせたかったのだけど……」

「ううん、いいわよ。おめでとう」

「ありがとう」

 ターナは本当に幸せそうにそう答えた。

「やるじゃねぇか、ブリネオ」

 俺は、からかうようにそういって祝福した。

「うるせぇ」

 それを聞いたブリネオは照れ隠しに怒ってきたが、その顔はターナと同じく真っ赤にしながら幸せそうだった。

「あ、あの、ファルターさん」

 そこでターナが突然俺を呼んだ。

「なんだ?」

「えっと、もしかして、そこにおられるのは?」

 ターナが指さしたのは父さんと母さんだ。

 ああ、そういえば、ガイの命を救ったのが2人だったな。

「そうだよ、俺の両親」

「やっぱり、失礼しますね」

 そういってターナは俺たちの前から父さんたちの前に向かった。

「あら、なに」

「マルスさんとキナさんですよね。私は、ガイ、お2人に命を救っていただいた、ガイの娘でターナといいます。お2人がいなかったら、父は助からなかったと伺っています。それに、お2人のお子さんである。ファルターさんにも私たち親子は救われました。本当にありがとうございました」

 ターナはそういって丁寧に頭を下げた。

「そうか、ガイの娘か」

「ずいぶんときれいな娘さんね」

「ガイは、元気か?」

「はい、おかげさまで、今もブルックリム要塞で励んでおります」

「そうか、それはよかった」

 それからも少しだけ会話を楽しんだようだ。

「さてと、いつまでも話をしていても仕方ないし、目の前の魔物をさっさと討伐しちまうか」

 人数も増えたことで何とか今日中に終わりそうだ。

「そうだな。それで、どうするんだ」

「とりあえず、俺たちは、自由に討伐しまくるから、ブリネオは無茶しないように俺たちが漏らした奴らを狩ってくれ」

「了解、任せろ」

 こういう時俺たちの力を知るブリネオで助かったと思う、普通のやつだったらここで1悶着あるだろうからな。

 というわけで、シタナエール丘陵の魔物を狩り始めたのだった。


 それから数時間後、あたりもすっかり暗くなり始めたころ、ようやく最後の魔物を討伐し終えた。

「お、終わったな」

「う、うん」

「やっぱり、多すぎだったね」

「疲れたぁ」

 それぞれに終わりを実感していた。

「俺も、お前らの強さは知ってたけど、大概だろ、これだけの魔物を数時間で片付けるって……」

 ブリネオは別な感じで浸かれているようだった。

「皆さま、お食事の用意が整いましてございます」

 ちょうどいいタイミングでマドリスが声をかけてくれた。

「おう、腹も減ったし、食うか」

「助かる」

「お腹すいたぁ」

 食事はうちのメイドたちや、ブリネオが連れてきたクランの女性陣が力を合わせて作ってくれた。

 食材は、俺が魔法の袋で持ってきた野菜や、今討伐した魔物を使っている。

「えっと、最初はどうなるかと思ったけど、ブリネオたちが来てくれたおかげで、何とか領地にいる魔物を狩ることができた。ありがとう」

 俺はそう言いつつブリネオたちにお礼を言った。

「いいってことよ。それに、俺たちは残りを狩っていただけだしな」

「今日は、領地開拓初日であり、ブリネオたちとの再会を祝して大いに楽しんでくれ、乾杯」

 俺の温度で乾杯が起こり、みんなが一斉に杯を開けた。

 それからは、無礼講だ、ブリネオたちもマドリスたちもみんな、盛大に盛り上がった。

 俺もまた楽しんだが、すっかり魔物のいなくなった俺の領地を見て思った。

――――――俺のノンビリ冒険者ライフはどこに行ったんだよ。

 でも、これはこれで、悪くないのかもしれない。酒を一気飲みし、ターナからあきれられているブリネオを見ながら俺はそう思った。

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