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第40話 土属性魔法の活用

 俺が下賜された領地、シタナエール丘陵には大量の強力な魔物がいた。

 いくら俺たちが強いといっても1日でかたづくような数ではなかったが、タイミングよく陛下の差し金だろう、ガイからの贈り物としてブリネオたち、傭兵クランがやってきて、俺がこれから新設するシタナエール騎士爵騎士団に就職してくれることとなった。

 おかげで数字はかかるかと思っていた討伐が1日で魔物も片付いて、その日は様々な祝いと称しての宴会となった。

 そして、次の日魔物もいなくなったしさっそく街づくりに取り掛かることとなった。

「それで、ファルター、街といってもどの程度の規模にするんだ」

「そうだな、領地の半分ぐらいにして、あとの半分は穀倉地帯とかにした方がいいだろうと思うけど、ここじゃ、あそこみたいに狩りでどうこうできるとは思えないし」

「だな、それがいいだろう」

「それはいいけど、どうやって街を作るの、この世界にはショベルカーとかないんでしょ」

 そういったのは当然愛美だ。

「ショベルカー、なんだそれは」

 聞きなれない言葉に父さんが疑問をぶつけてきた。

「大きな機械で掘削とか簡単にできるものなんだよ。前の世界ではこういう作業には必要不可欠なものだよ」

「なるほどな」

「ショベルカーはないけど、魔法があるから問題ない。まぁ、本来なら専門の土系統が得意な魔法使いに頼むんだけど、俺と父さんなら、問題ない、何せうちはすべての系統が得意だからな」

「そういうことだ、俺たちに任せろ、マナミ」

「う、うん、そういうことなら、頑張ってね。お兄ちゃん、それと……お、お父さん」

 この時愛美が初めて父さんのことを“お父さん”と呼んだ。

「お、おう、任せろ」

 それに対して父さんも驚きながらも嬉しそうに答えていた。


 それからは一応どこにどのような建物を建てるかの計画を立てる会議をすることにした。

 会議の参加者は俺たち家族と使用人たるマドリス、あとは騎士団長に就職したブリネオだ。

「さてと、それじゃ、会議を始めるけど、どうする、一応半分くらいは街として作って、残りは穀倉地帯なんかにしたいと思うけど」

「いいんじゃないか、後は、領地を囲む城壁が必要だろうな」

「城壁?」

 愛美が不思議そうな顔をした。

「城壁があれば、街に出入りできる人間を制御できるし、何より魔物や動物の出入りを防ぐことができる」

 愛美にの疑問にブリネオが答えた。

 確かに、昨日一掃したとはいえ、またどこかで発生してこの街にやってこないとは言えないのが現状だ。

「だな、問題は、城壁などに使う石材がないということだろう。あとは木材もだな」

「ああ、木材については大丈夫だ、今のセルミナルクの領主となったのはアルディっていって俺たちの知り合いでな、すでにセルミナルク側の森から切り出していいと許可をもらっている。だから、問題は石材だな」

 このシタナエール丘陵にはセルミナルク側に森があるので木材は手に入る。しかし、周囲を見渡しても山がないために石材が手に入らない。

「だったら、どこかからかとってくるか」

 その時父さんがそういった。

「どこかってどこだよ」

 俺には心当たりがなかった。

「そうだな、確か、お前は知らないだろうが、あそこから東に行ったところに山があるんだよ。ここからだとちょうど南だな」

 あそことは俺の故郷、特に名前がないのであそことしか言いようがない、ていうか故郷の東に山なんてあったか?

「ああ、あそこね、確かにあったわね。そういえばうちの土台の石もそこからとったのよ。結構良質の石だったと思うわよ」

 母さんも思い出したように言った。そういえば実家は父さんたちがたてたんだよな、それにそういえば土台に石が使ってあった。

「それじゃ、そこに行ってみるか。ここから行くとどのくらいの距離なんだ」

「たいした距離じゃない、たぶん歩いても4日ぐらいだろう、というわけだから俺と母さんとあとはそうだなサーラとクルムの4人で行ってくる。魔法の袋があれば問題ないしな」

「私たちもですか」

 サーラが驚きながらそういった。

「石材を斬るには魔法が必要になるお前たちもいい訓練になるだろう」

「うーん、お父さんがそういうなら、私はいいよ」

「もう、クルムちゃんたら、えっと、わかりました、私もお父さんとお母さんと一緒に行けるのはうれしいですから」

 こうして、サーラとクルムも快諾した。

 余談だけど、愛美と違い2人はあっさりと父さんと母さんと呼んでいる、これは2人と愛美の違いがある。愛美の両親、つまり俺の前世での両親だが、当然存命だ。俺が早くに死に愛美も同時にこっち来てしまったために両親には悪いことをしたと思うがこればっかりは仕方ない、と俺は割り切っているが愛美はそうはいかない、だから、父さんたちを呼ぶのにためらった。それに対してサーラとクルムは、聞けば2人とも両親がいないそうだ。だから、もともと親と呼ぶ人間がいない、だから父さんたちをそう呼ぶことにまったくためらいがなかったようだ。

 とまぁ、それから、父さんたちは石材を集めに南へ向けて旅立った。


 そんな4人を見送った後はというと、それで安心というわけではない、木材も必要だ。その調達は現在ブリネオを中心とした騎士団(元傭兵クラン)が請け負ってくれている。

 彼らも普段は剣や戦斧を使っている者がほとんどだし、戦争で丸太を使うこともしばしばある、そのためにあっという間に木を切り倒している。

 頼もしい限りだ。

 そして、マドリスたち元うちの屋敷の使用人たちは今朝の会議で決まった街の簡易的な配置図を基に測量を行ってもらっている。

 そして、俺はそれをもとに魔法を行使して土台を築くというわけだ。

 というわけで今、マドリスたちの測量がある程度進まないと俺の仕事がないので暇だった。

「お兄ちゃん、私たち何をすればいい」

 そんな俺のもとに妹たち(愛美とエニス)がやってきた。

「そうだな、愛美は、この世界の住人より圧倒的に知識も計算力もあるから、マドリスたちの手伝いを頼む」

「うん、わかった」

「お兄ちゃん、エニスは」

「エニスはそんな愛美の手伝いかな」

「手伝い?」

 エニスは、たぶん自分ではなにも役に立たないと考えているんだろう、実際エニスは計算とか苦手だった。

「そうね、エニス、手伝って、一緒にやろう」

 そんな表情のエニスに気が付いた愛美がエニスにそういうと、エニスは嬉しそうにうなずいた。

「うん、愛美お姉ちゃん、手伝う」

 エニスと愛美、俺の2人の妹は愛美が女型の技を教えるようになったからか、ものすごく仲がいい、時々本当に血がつながった姉妹なんじゃと思うほどに行きもぴったりだった。

 それに俺は知っている、実はエニス、愛美に教わっているのは武術だけじゃなく勉強も教わっている。まぁ、これはサーラとクルムやフィーナも同じだが、今では仲良し5人姉妹という感じだ。

 そして、最後にフィーナの現在だけど、フィーナは今、実家に戻っている。

 言っておくけど、昨晩フィーナとけんかして、『実家に帰らせてもらいます』ってわけじゃない。ここからだと、なんとフィーナの実家が結構近いらしい、歩いても2日ぐらいという距離だそうだ。多分フィーナの足ならすでについているんじゃないかと思う。

 それで、どうしてフィーナが実家に帰ったかというと、これまでの報告とこれからここで俺と領地運営をするということや協力を要請することだった。

 実は俺も一緒に行こうかと言った。これには愛美を初めてとして家族全員に当然だとうなずかれた。

『そうしたいけど、やめといたほうがいいかも、たぶん、ううん、確実にファルターとうちのお父さんとか村の人たち全員が戦うことになると思う』

 などといってきた、どんだけ武闘派なんだよ。

 そう思ったが聞けばある意味納得だった。

 何せ、フィーナの一族は勇者浩平の一族、そして、浩平は指名手配を受けている。そのため外部の人間に対しての警戒はかなり厳しいだろうな。

 だからこそ、フィーナは1人での帰省となったのだった。

 とまぁ、そんなことを考えていると、どうやらマドリスたちの測量がある程度終わったようだ。

「よし、それじゃ、俺もそろそろ始めるかな」

「旦那様、ここまでお願いいたします」

「おう、任せてくれ」

 それから、俺は土属性の魔法を行使して、土を操作した。

 すると、城壁を作る予定の場所(マドリスたちが線を引いた)がもももっ、と盛り上がった。

 この土属性の魔法だけど、実は普段使いどころが難しい魔法だったりする。どうしてかというと土魔法というと土を生み出しそれを操るというイメージがあるが、そんなことはありえない、無から有を生み出すことはさすがに魔法でも無理だ。例えば、水魔法だって、空気中の水分を魔力で集めているだけだし、炎魔法も、空気中にある塵なんかを酸化させて燃やしているということだ。よって、土魔法は地面にある土に魔力を込めて操るというものだ。

 この魔法の使いどころとしては今俺がやっているように土を盛り上げたり、逆に下げたりすることぐらいだ。

 以前ブルックリム要塞で味方が作った罠に味方がはまるということがあったが、あの罠とした落とし穴を作ったのもこの土魔法だ。といっても、あれほど大きな落とし穴を1人で作ることはできない、なにせ、魔力を大量に消費するからだ。

 あれも数人の魔法使いが何度に分けて掘りあとは屈強な冒険者が手で掘り進んだようだ。

 ちなみに土属性の魔法の種類としては、初級で土を操り巻き上げるだけ、中級になるとようやく盛り上げや下げるということができる、そして、上級となるとその規模が増すというものだ。実は、この魔法、やりようによっては土のゴーレムを作ることもできる。

 俺も子供のころ試しに作ってみたことがある。しかし、当時でも上級上位の魔法が扱えた俺ですら、大人ぐらいのサイズのゴーレムを数歩歩かせただけど魔力が尽きた。

 それほどに魔欲を消費する、これが世間の魔法使いたちがゴーレムを使わない理由だった。

「このぐらいでどうだ」

「はい、もう少し上げていただけますか」

「了解だ」

 俺はレナに従い、少しだけさらに盛り上げた。

「はい、そこまでで結構です」

「オッケー、それじゃ、この調子で上げていくぞ」

「はい、お願いいたします」


 それからは、レナに言われるままに魔法を行使し続けた。

 おかげで、1日で魔力が尽きてしまった。

 それから数日俺はひたすら土属性の魔法を行使続けるという、一体何の苦行だよと突っ込みたくなるようなことをし続けた。

 まぁ、そのおかげで、一段と魔力が上がったようだ。

 そんな感じでやっていると南の方から人けがが見えた。どうやら父さんたちが帰ったようだ。

「ただいま」

「おかえり、どうだった」

 俺はさっそく状況を尋ねた。

「ああ、たっぷりとってきたぞ、たぶんこれだけあれば土台なら足りるだろう」

「うん、確かにものすごいとったよね」

「はい、疲れました」

「ふふふっ、2人とも天幕で少し休んだら」

「はい、そうします」

「うん、そうする」

 そういってサーラとクルムは天幕へと向かった。

 父さんと母さんは元気そうなんだけどな。まぁ、この2人を基準にすることもないか。

「それで、お前の方はどうだ」

「俺も大体はできたよ、城壁部分はすでに完了している。あとは、父さんたちがとってきた石を加工して並べるだけだ。街の方はまだかな、思ったより規模が大きいからなかなか進まない」

「なるほどな」

 この土魔法魔力を大量に使うために俺も休み休みとなってしまいなかなか進まない。

「よし、俺も手伝ってやろう」

 そういって父さんも加わったことで何とか土台が終わりそうだ。

 それから、さらに数日サーラとクルムも加わっての作業となり土台の土盛は完了したのだった。

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