第27話 転生した兄
俺にとっては15年ぶり、愛美にとっては1月振りの再会を果たした俺たちが移動した場所は、俺とフィーナが使っているボックス席だ。
「ただいま」
俺は中にいたフィーナにそういった。
「おかえり、その子がマナミさん」
どうやらフィーナは俺と一緒にいるのが愛美だと気が付いたようだ。
「ああ、まさか、1回戦の相手とは思はなかったけどな」
「ほんとね。えっと、マナミさん、私はフィーナよ、よろしく」
「え、えっと、愛美です」
「あっ、フィーナ様」
「きれい」
愛美の仲間たちが何やらつぶやいていた。
「できればもう少し話していたいけど、私、そろそろ出番だから、もう行くから、あとでね」
「はい」
「奥様、頑張ってくださいね」
「まぁ、適当にな」
「うん、任せて」
フィーナはそう言って出て行った。
そんなフィーナを見送った後愛美がひじで俺をついてきた。
「お兄ちゃん、フィーナさんきれいな人だね」
「ああ、まぁ、そうだな」
「もう、何を照れてるのよ」
「いや、照れているんじゃなくてな」
「はいはい、ご馳走様、それで、フィーナさんってどんな人なの、今のお兄ちゃんより強いんでしょ」
「ん、ああ、強いぞ」
「え、そうなんですか」
「そりゃぁな、武術を純粋に極めようとしているフィーナと、魔法も使う俺とじゃ比べようがないだろうな」
「うん、そうだよね」
「じゃ、じゃぁ、フィーナ様ってマナミよりも強いってことですか」
愛美の仲間の1人である、(ボックス席に来る前に聞いている)クルムがそう聞いてきた。
「いや、どうだろう、たぶんだけど、愛美の方が若干強いんじゃないかな」
「えっ、だって、ファルター様はマナミちゃんに勝ちましたよね」
もう1人の仲間であるサーラが首をかしげながら訪ねてきた。
「意味が分からないよ」
そういったのは愛美の方に乗ったポルティ・ライムだ。
俺は、神様から聞いていたし、ここに来る途中に紹介も受けているので驚かなかったが、使用人たちは驚いていた。
後で説明する必要がありそうだが今は話の説明をする必要があるだろう。
「確かに俺は愛美に勝ったけど、それは、俺が愛美の兄だから勝てたってだけだよ」
「どういうことですか?」
「私もだけど、お兄ちゃんは私のクセとかすべて知っているから」
「クセ?」
「ああ、俺たちは子供のころからしょっちゅう組手をしてきたからな愛美がどういうタイミングでどんな技を出してくるのかがわかるんだ」
「そう、それで、私は混乱していたのよね」
「そっか、マナミはファルター様がお兄さんだって知らなくて別人だと思っているのに」
サーラが言って。
「お兄さんと同じクセで同じ技を出してきた」
クルムがまとめた。
「それじゃ、混乱するよね」
ポルティもそういって同意している。
「そういうこと、それに、愛美がやった最後の技、あれには愛美の致命的なクセがあるんだ」
「クセですか?」
「ああ、といってもそれを知ったからって、どうなるものでもないけど。俺はそのクセを知っているっていうか実際に俺が指摘してきたことだからな、当然タイミングもすべて知っているってわけだ。だから、今の俺でもそこをつけたってわけだな」
「ほんと、あのクセってつけるのおにいちゃんしかいなかったからね、油断したよ」
「なるほど、そういうことだったんですね」
「まぁな」
そんなことを話していると会場ではどうやらフィーナの出番のようだ。
「あっ、フィーナさん」
「だな」
「どんな試合するのかな」
「まぁ、見てればわかるさ、それに愛美は驚くと思うぞぞ。間違いなく」
「どういうこと?」
愛美はまだわかっていなかったが、試合が始まり少ししたところで驚愕に目を見開いていた。
「えっ、どうして、ちょっと、お兄ちゃんどういうこと、なんで、なんで、フィーナさんが男型を……」
いい感じに驚いている。
「どういうことよ、お兄ちゃん、お兄ちゃんとフィーナさんって幼馴染ってこと」
「いや、俺とフィーナが出会ったのは1年前、冒険者になった日だ」
「うそ、だったらどうしてよ」
「簡単な話だ、フィーナが上森の末裔だからだよ」
「えっ」
愛美はさらに混乱した表情をした。
「俺も最初は驚いたけどな、愛美は勇者を知っているか」
「勇者? うん、聞いたことある、確か8000年前にいた人だよね、魔王を倒したとか」
「そう、まぁ、その勇者は実際にいてな、フィーナはその子孫なんだ」
「えっ、フィーナ様、勇者様の子孫なんですか」
クルムとサーラはそれを聞いて感動していた。
「ああ、そしてその勇者なんだが……」
俺はそう言いつつ魔法の袋から勇者の洞で発見した、浩平の日記を取り出して愛美に見せた。
「なにこれ、本?」
「日記だ、勇者のな。読んでみな」
「う、うん」
愛美はそれを受け取って読み始めた。
「えっ、うそ、これ、ほんとなの」
すぐに気が付いたようだ。
「ああ、間違いないぞ、本人からも聞いたからな」
俺はそこで勇者の洞であった浩平のことを話した。
「それじゃほんとに……」
「そう、それで、これがその証拠」
そういって俺は腰に刺さっている刀を愛美に見せた。
「ずっと気にはなっていたけど、やっぱりそれ、お兄ちゃんの刀」
「ああ、それとな、浩平はもう2振もってきていたんだ」
そういって俺は魔法の袋に手を入れて2振の刀を取り出した。
「こ、これって」
「ああ、お前の刀だ」
「私の……」
愛美も嬉しそうにそれを受け取った。
「ここは浩平に感謝だよな」
「うん、やっぱり、こっちのじゃ使いづらいもんね」
「だな」
「ねえ、そういえばさ、お兄ちゃん」
「なんだ」
とここで愛美が話を変えてきた。
「ボックス席ってすごいね、豪華だし、メイドさんが付いているし」
そういって愛美はメイドたちを見た。
「ああ、いや、違うぞ、いくらボックス席でもメイドはついてない、彼女たちはうちのメイドだ」
「えっ、お兄ちゃんのおうちって、どういうこと」
「家を買ったらついてきたんだよ」
「なにそれ」
「俺の家はもともと貴族令嬢の屋敷でさ、元はその令嬢に雇われていたんだ。でも、その令嬢が結婚するってことになって使用人のほとんどを解雇しなくちゃいけなくなって、まぁ、そのタイミングで俺たちが買ったからそのまま継続で雇ったってわけだ」
「へぇ、すごいね」
愛美たちは素直に感心していた。
「ただいま」
そこにフィーナが返ってきた。
「おう、おかえり」
「フィーナさんお疲れ様です。その、兄から聞きました」
「そう、驚いたでしょ」
「はい」
「まぁ、私も驚いたけどね、まさか、私のご先祖様の先祖がファルターなんだからね。ああ、そっか、あなたもそうなのよね」
「はい、そうですね」
「まぁ、正確には俺は前世だからな血縁で言うと愛美だけとなるな」
「そうね」
そのあと、フィーナを交えつつ様々な会話をしてその日は過ごすことにした。




