第28話 本選第2回戦
武術大会本選は、トーナメント方式で王都ブリッグにある予選で使うものとは別に本選専用の武舞台にて行われている。
その武舞台も予選同様2つあり、それらが隣り合わせになっている。
観戦には通常、どちらかの会場に足を運び人によっては指定席でゆったり、安く立ち見という形で、1つの武舞台しか観戦ができないことになっている。
ところが、俺が借りているボックス席は特別で両方の武舞台の間に位置していて、両方の武舞台を見ることができるというかなり高値の席となっている。
実は本来この席は貴族が優先的に割り振られる場所なのだが、マドリスがルミナに頼んで確保しておいてくれたというわけだ。
といっても、アルディとルミナは家の都合で見に来てはいないけど、相当に残念がっていたそうだ。
愛美と再会を果たした翌日、武術大会2日目。
初日に俺とフィーナの第1試合が終わったということもあり、今日は誰も試合がない。
そこで俺たちは借りていたボックス席にはいかず、街をぶらついていた。
名目は俺と愛美の再会を祝してのものだ。
「あれ、かわいい」
「どれ、あっ、ほんとだ。かわいい」
「マナミに似合うんじゃない」
「うん、うん、ボクもそう思うよ」
「えー、そうかなー、ねぇ、お兄ちゃんはどう思う」
「ああ、いいんじゃないか」
俺は少し疲れが出始めていた。
なにせ、俺以外は愛美フィーナ、サーラとクルムの女4人に加えてポルティという布陣だ。
さっきからこういったやり取りが続いているし、あっちに来たりこっちに来たりとせわしなく動き回っているし、何より、これまで買ったものが両手に一杯かかっているののもある。
まぁ、それなりに鍛えているからこれぐらい重くはないが、何か精神的に疲れる。
特に、これらはの支払いはなぜか全部俺が行っているということが疲れを加速しているような気がする。
なぜ、俺がこんな苦労をしているのかというと、街に出てから少ししたところで、愛美がある一点を見つめてほしそうにしていたのを見たのが始まりだ。
「ほしいのか、買ってやろうか」
俺は何気なくそう言った。
前世の俺はゲームや漫画を買いまくっていたからいつも金がなかった。そのため、愛美にお金を借りるという状況もあった。
だが、今は金がある、なにせ、使い道がないからなんだが……。
そんなわけで、少し恰好つける感じでそういったんだが、そこで気が付いた、愛美にだけ買うのはなんか違う気がして、思わずサーラとクルムにも買ってやることにしたのだ。
すると、隣で見ていたフィーナに何やら恨みがましい目をしているような気がして、フィーナにも買ってやることになった。
っていうか、フィーナは俺と同じだけ稼いでいるはずなんだけどな……
そんな嘆きとともに気が付いたらその後も俺がすべてを支払うという形となってしまっていた。
ちなみにポルティにも買っているが、ポルティは小さいために小物ばかりで少し助かっている。
というか現在街中を歩いている最中なのでポルティはぬいぐるみのように固まっている。それを考えるとポルティに買うのは全くいやな気がしない。
「すみません、お兄さんに買ってもらって」
そこでサーラにそう言われた。
ちなみにお兄さんという呼称は昨日のうちに呼ばれるようになっていた。
「気にするな、ほかにほしいものはあれば、遠慮なく言ってくれ」
男の意地みたいなもので強がってみた。
「で、でも、十分買ってもらいましたし……」
確かにかなり買ったと思う、何せ今の俺の両手は買ったものであふれていた。
「確かに、買いすぎたかな」
愛美もそれを見て少し反省していた。
「そうね、今日はいったん宿に戻って荷物を置いたらどこか行きましょう」
ここでやはり女性陣最年長であるフィーナがそう提案した。
「はい」
こうして、俺たちはフィーナの言う通り宿に戻ってから暇そうにしていたメイドやマドリスたちを連れて遊びに出かけた。
そんな日々を続けて数日、ついに今日俺の第2回戦が行われる。
ちなみにフィーナは明日行われる予定だ。
「ファルター、頑張って」
「お兄ちゃんなら、勝てるよ」
「ボクも応援しているからね」
「お兄さん頑張ってください」
「勝ってよ、お兄さん」
各々の応援メッセージをもらった。
「ああ、まだ、負けないと思うけど、油断はしないようにしないとな」
「そうだよ、お兄ちゃん、前世より弱くなっているんだから、忘れないでよ」
愛美から痛い指摘だ。
「ああ、わかっているって」
そうして、第2回戦開始である。
俺の相手は、見た目はぱっとしない普通の相手だった。
といっても第2回戦に出てきているだけあっての実力は兼ね備えているようだ。
「へぇ、魔法使いのわりにやるね。間違いなく魔法使いの中では最強じゃない」
「そうか、お前もなかなかやるじゃないか、運だけで来たわけじゃないみたいだな」
相手が挑発してきたので俺も挑発してやった。
そして、再び戦いが始まった。
男の戦闘スタイルはショートソードを左手に構えて、空いた右手でつかんだり、殴ったりするという見た目に反した結構特殊なスタイルだ。
俺も刀を抜けば似たようなことをすることもあるけど、それをメインに使うことはない。
「くっ、まさか、今のも交わされるとはね」
「なんだ、どうした、もう終わりか」
「まだまだ」
そういって男は何やら構えを変えた。
これまで左で持っていたショートソードを右手に構えたのだ。
「これをここで出すことになるとはね、恐れ入ったよ」
「どうやら、奥の手のようだな」
「ああ、これはかわされたことがないからね」
「なるほど、それじゃ、これが初めてというわけか」
「言ってくれる」
それから、男は技を出してきた。
それは一言でいうと驚いた。しかし、俺には通じない。
何せ、その技、俺は知っている。
上森の男型の中に同じ技がある。
だから、かわせた。
そして、返し技も当然知っているから、それを使い倒すことができた。
「まさか、これまでかわ、されるとは……」
「たまたま、知っていただけだ。初見だったら、負けていたのは俺だった」
そう、それほどの技だったのだ。
「おおっと、これまたファルター選手の勝利だー。彼は本当に魔法使いなのだろうか」
魔法使いが武術大会本選第2回戦突破ということは、司会がそんな疑いの言葉を言うほどに世の中ではありえないことが起きているということらしい。




