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第23話 予選決勝

 準決勝を終えた次の日武術大会予選決勝戦が行われる。

 決勝戦だけあって今日は1試合しか行われない、だから、午前中に試合をして、午後に表彰式という形となる。

 当然、フィーナも決勝戦に勝ち進んでいるために今日もお互いの応援には行けないというわけだ。

 まぁ、フィーナが負けるビジョンは見えないし、何より本選出場できるのは2ブロックのそれぞれ優勝者と準優勝者となる。

 というわけでたとえ俺がここで負けても、本選に出場できるから今日の試合は気楽なものだ。

「さぁ、いよいよ始まります第2ブロック決勝戦です。それでは本選出場を成し遂げた選手を紹介します。まずは、魔法使いでありながらの出場、ファルター選手です。ファルター選手の実力は皆様には完全なダークホースだったでしょう、それもそのはず武術の才能と魔法使いの才能は混在しない、これが常識。しかし、彼が今まで見せてきた実力はその常識を覆すもの、さぁ、今日はどんな戦いを見せてくれるでしょうか、注目です。そして、その対戦相手はここ、セルミナルクにおいて第1ブロックで現在決勝戦に勝ち進んでいるフィーナ選手と双璧の実力を持っていると噂されるマリク選手です、彼は実力はおろかその甘いマスクにより多くの女性を虜にしてきた超イケメン、お聞きください、今この会場を埋め尽くさんとばかりの声援。さぁ、どちらの実力者が勝つのか注目の一戦が始まります」

 気楽にできるかと思っていたら司会がこんなことを言い出すし、何よりなんかこの声援のおかげでものすごいアウェー感がある。それにイケメンってそれだけでなんか腹が立つし、とりあえず勝つか。

 俺はそんな決意のもと気合を入れなおすことにした。

「はじめ!」

 そんな中司会が合図を出した。

「前々から、君がフィーナ君のそばにいることに疑問を感じていた。彼女のそばには僕の方がふさわしいからね、何より君は魔法使いというじゃないか、本当の武術というものを見せてあげるよ」

 などと寝言を言ってきたが俺はそれを無視した。

 そして、戦いが始まった。

 確かに、フィーナと双璧と噂されるだけあって、それなりの実力を持っているようだ。少なくとも俺が今まで戦ってきた連中よりは一段上の実力を持っている。

 しかし、それはあくまでも人間のレベル、フィーナも含め化け物レベルの実力者を知っている俺にとってはたいしたことはない。

 というわけでさっさと終わらせることにした。

 そこで、いくつかの技を駆使してマリクを誘導することにした。

 そして、マリクはまんまと誘導に従い予想通りの攻撃を仕掛けてきたところを懐に入り軽く掌底を食らわせて気絶させた。

「……えっ、えっと、お待ちください」

 すると司会はマリクの様子を確認していた。

「き、気絶しています、ファルター選手の勝利です。これにて、第2ブロックの優勝者はファルター選手となります」

 司会は最初言いよどんだが、すぐにそう高らかに宣言した。

 こうして俺は第2ブロック優勝をもぎ取ったのだった。

 一方観客席はというと2分していた。男たちはマリクのモテぶりが気に入らなかったのようで大歓声を上げたが、女性陣はブーイングの嵐だ。

 中には俺が魔法をひそかに使ったのではないかといういちゃもんをつけてくるものも多くいた。

「お静かに願います、ただいまの試合においてファルター選手が魔法を使ったということはありません、この会場にはいたるところに魔法の使用を感知する魔道具が設置されております。もし、ファルター選手が使用すればその時点で警報が鳴り、ファルター選手の失格となります。しかし、その警報が鳴らなかったのが何よりの証拠となります。なお、その装置は試合ごとに係員がチェックをくまなく行っておりますのでの故障ということもありません」

 という司会の養護を受けたことでそのブーイングは去った。

 とまぁ、そんなトラブルはあったが、無事本選出場と予選優勝することができた。


 そして、午後となり表彰式を受けることとなった。

 ちなみに俺の隣には同じく第1ブロックで優勝をもぎ取ったフィーナがいた。

「さすがね、ファルターなら優勝すると思ってたわ」

「結構危なかったけどな」

 表彰式の後はあちこちから声を掛けられたが、何とか家路につき、使用人たちやアルディ、ルミナなどと祝杯を上げた。


 そして、大会から2日後俺たちは王都ブリッグ行きの馬車に乗っていた。

「王都まで2週間だろ、遠いよな」

「うん、ほんとよね。でも、のんびりと旅を楽しもうよ」

「だな」

 俺とフィーナが乗っている馬車は自分たちで用意したものに街が用意した馬を取り付けたものだ。

 最初は街が用意した馬車に乗ろうと思っていたのだが、マリクのやつがとにかくうざい、フィーナと同じ馬車に乗ろうとするしいつまでも口説き続ける。嫌気がさして、自分たちで用意することにしたのだ。

 そんな馬車は全部で6人乗りの大きなもの、この大きさの理由は俺とフィーナと応援として使用人を4人乗せるためだ。

 まぁ、もともと、彼らも応援のために王都行きの4人乗り馬車を用意するつもりだったことを考えるとこの方がよかったのかもしれない。

 こうして俺たちは2週間馬車に揺られての旅路となった。


 道程は一言で言うなら揺れまくって最悪だったが出発から2週間、何とか予定通り王都にたどり着くことができた。

「へぇ、これが、王都か」

「大きいね」

「ああ、ほんとにな」

「奥様、まずは買い物をいたしましょう」

「そうね、ファルターも一緒にどう」

「そうだな、付き合うよ」

 俺はそういて気軽に言ったがのちに公開することになるがそれは別の話だ。

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