第24話 愛美
ファルターたちが王都ブリッグに到着した日から、約1か月前、ファルターが住むセルミナルクとは、ブリッグを挟んで反対に位置し、マナリズ王国南西端にある街バナリーズ。
そして、バナリーズからさらに南西に向かったところに崖に囲まれた岩場がある。
この場所に突如光が現れた。
その光はまばゆいばかりで、あたり一面を真っ白に染め上げた。
その光はしばらくすると収まってきたが、その光の後には1人の美少女が立っていた。
「いやぁ、お兄ちゃーん」
そんな叫びとともに現れたのは黒い髪にクマの形をした髪留めをして黒い瞳、少し黄色みがかった肌、目はぱっちりとしたまさに美少女だった。
「……えっ」
少女は叫んだ対象の兄はおろか岩しかない状況に目をぱちくりしていた。
「ど、どこ、ここ、お兄ちゃん、お兄ちゃんは?」
少女は必死に兄を探した。
しかし、その兄はどこにもいなかった。
「どこなの、ここ」
少女は訳がわかなかった。
それもそのはず、少女は今しがた異世界転移をしてきたのだから……
まさにその時のことだった、少女の目の前に再び光が訪れた。
「えっ、なに、まぶしい」
少女がまぶしさに目を覆い光が収まったところで恐る恐る目を開けると、目の前に小さなぬいぐるみのような、丸い体に顔と小さな手足と耳があり、その耳についたリボンが特徴的な変な生き物がいた。
「えっ、今度は何?」
「はーい、あなたが愛美ちゃんでしょ、ボクはポルティ・ライム、女神さまの使いだよ、よろしくね」
なんだか陽気な挨拶をされた少女はどうしたらいいのかわからず、絶句していると逆にポルティ・ライムは焦った。
「あれ、違った?」
まぁ、戸惑っているのは少女方だったが……
「えっ、えっと、なに、これ、夢?」
「夢じゃないわよ、現実、愛美ちゃんは異世界に転移しちゃったんだよ」
などといってきたのだからたまらない。
「異世界、転移、ってえええええーーー!!!!!!!」
少女は盛大に驚愕した。
「落ち着いた」
「う、うん」
ひとしきり困惑してからようやく持ち前の冷静さで落ち着きを取り戻した愛美だったが、いまだに自分の状況が信じられなかった。
「それで、ポルティは私のサポートって何ができるの」
「ボクができるのは言葉とかちょっとしたフィールドを作ること」
「言葉?」
愛美は言葉と聞いて一瞬わからなかったがすぐに理解した。
「そうか、異世界だから、言葉が違うのか」
「そう、ここじゃ日本語は通じないからね、ボクの近くにいればすべて翻訳されて愛美ちゃんに届くようになっているし、愛美ちゃんが日本語で話してもボクが翻訳して相手に届けるようになっているからね」
「便利ね。それじゃ、フィールドっていうのは?」
「この世界には、魔物はもちろん魔法もあるし、そのために人も地球の人たちに比べても力が強いからね。いくら愛美ちゃんが強くてもやられちゃう可能性があるから、フィールドでそれを軽減するようにしているんだ」
「えっと、もしかしてそれもポルティの近くじゃないとだめなの」
「ううん、これは愛美ちゃんを中心に常時展開されるようにしているから大丈夫だよ」
「そう、ならいいけど、それで、ここはどこなの」
「えっと、マナリズ王国の南西のバナリーズって街の近く」
「うーん、それじゃ、そのバナリーズって街に行ってみましょう」
「うん、わかった」
こうして愛美とポルティ・ライムの旅は始まった。
かと思ったがいきなり出鼻をくじかれた。
「おいおい、見ろよ、すげぇ、かわいくねぇ」
「おっ、ほんとだ、おい、どうする」
「へへ、やっちまおうぜ、ここならどんなに叫んでも誰も来ないしよ」
「だな」
突然現れた3人の男たちがなんだか不穏ことを言っていた。
「えっと、ポルティ、どうしよう」
「やっつけちゃっていいんじゃない、なんか悪い人たちみたいだし」
「そうだね」
そういうと愛美は襲い掛かってきた男の1人を紙一重でよけると手早くその突進力を利用して投げ飛ばした。
「お、おい、くそっ」
「こいつ」
1人が投げ飛ばされたことでほかの男たちも気合を入れて攻撃してきた。
「えっ、なに」
中には魔法を打ってきたものがいたが愛美は何とかよけた。
「今のが、魔法」
愛美は驚愕しつつも手早く男たちを片付けて行った。
そして、3人の男たちはあっという間に倒されたのだった。
「ふぅ、終わったのかな」
「そう見たいだね」
その時不意に別のところから声が聞こえた。
「だれ」
愛美はその気配に気が付いていただけにそれには驚かずだれか訪ねた。
「ああ、ごめんごめん、本当は助けようと思ったんだけど、必要なかったみたいね」
「クルムちゃん、まず自己紹介。えっと、私はサーラ、それでこっちがクルムちゃんよ」
「よろしく」
現れたのは2人の魔法使いの少女だった。
「私は、愛美、それでこっちがポルティ・ライム」
愛美は自己紹介の後、ポルティ・ライムのことも紹介した。
「えっ、ぬいぐるみ」
「いや、ちょっと待って、それ生きてない」
「えっと」
愛美は少し混乱した。
「ああ、言い忘れていたけど、ボクってこの世界でも存在しえないものだから」
「それを早く行ってよー」
愛美は脱力しながら突っ込んだ。
その後は大変だった、愛美は自身が異世界から来たこと、ポルティ・ライムが女神からの物だと1時間ぐらいかけて説明した。
「……ねぇ、マナミはどこにも行くところがないってことだよね」
「うん」
「だったら、わたしたちと組まない」
「組む?」
「そう、わたしたち冒険者なんだけど、2人とも魔法使いで武術系が欲しかったのよね、その点マナミってかなり強いでしょう」
「うーん、たぶん」
「強いよ、なんていっても、あの、ランク6の3バカを倒したんだから」
「3バカって」
愛美はその呼び名に少しあきれつつ、あっていると感じていた。
「こいつら、ちょっと前にセルミナルクから流れてきたらしいんだけど、新人女性冒険者に親切なふりして近づいてきて、よからぬことをしようとしたって有名でさ、実際わたしたちも危なかったよね」
「そうそう、しかも、こいつらランク6だから、無駄に強いしね」
「へぇ」
愛美は一瞬こいつらをもっと傷めつけてやろうかと思ってしまった。
その後、愛美はクルムたちにお金を借り冒険者登録をして、いくつかの冒険をすることとなった。




