第16話 ついに出番
バカが暗殺され、危うく副指令が暗殺の汚名を着せられ処刑されそうになった。
そこで、フィーナと2人で走って何とか副指令とその家族を救い出すことに成功した。
そして、ブルックリム要塞は相も変わらず、ブリザリス軍は攻めてきている。
バカがいなくなったおかげで、ようやくまともな籠城戦になったんだからいい加減あきらめてほしいところだ。
そんなことを思いながら適当に中級魔法を放って敵を攻撃している横では、フィーナがストレスを発散させようとしているのか、兵士に集めさせた石をものすごい勢いで投げ続けていた。
その姿がなんだか少し楽しそうで俺としては少し怖かった。
「……それにしても、ほんと、いつになったらブリザリスの連中引くんだ。これじゃ、いつまでも終わんねぇぞ」
グフタスが俺のとなりで弓を構えながら愚痴ってきた。
「確かに、あきらめないよな。もう、向こうは結構な被害が出ているよな」
「ああ、向こうにはファルターみたいなやつはいないからな」
「時間を稼いでいるんだろう」
そこに副指令……いや、改めただのおっさんとなったガイが現れた。
「どういうことです」
「奴らの動きからするとな。なにかはわからないが、もしかしたらこの状況を打破する奥の手があるのかもしれない。それに、やつらにとって俺たち先住民は奴隷でしかない。どんなに減ってもまた沸くとでも思っているんだろう」
なんとも胸糞悪い話だった。
「それにしたって、人の命をなんだと思っていやがる」
グフタスもそれを聞いて怒り心頭だった。
「そうだな、まぁ、それについては個々の元司令官殿も同じだったようだがな」
「言われてみればそうだよな。ファルターがいなかったらって、そう思うとぞっとするぜ」
「まったくだ、改めて感謝する。ファルター」
「いいって、おかげで俺も魔力が上がったしな」
「そういえば、聞いたことなかったけどファルターってどのくらいの魔力を持っているんだ。ドラゴンを討伐したって聞いたから超級は使えるってことだろ」
そこでブリネオが尋ねてきた。
「ああ、そうだな、ここに来るまでは超級を2発ぐらいしか打てなかったけど、今ならたぶん5発は打てるぞ」
「なっ、5発だと!!」
「それは本当かね!!」
「う、うそだろ!!」
そこにいた面々が驚愕した。
「本当だって、んっ、おい、ちょっと待て」
その時、ブリザリス側に変化が生じた。
「どうしたって、なんだ」
ほかの連中も気が付いたようだ。
今まで教科書通りに攻城戦を繰り広げていたブリザリス軍が突然攻めるのをやめたと思ったら、何やら兵士たちをかき分けて、まだ30代前半であろう人物が前に出てきた。
「誰だ? あれ」
俺のつぶやきにガイが答えた。
「向こうの司令官、確か、名前はカイネルだったな。あきらめの悪い奴だと思っていたが、どうやら何やら隠し玉を持っていたようだな」
そういわれてカイネルの後ろを見てみると何や10人の男たちが並んでいた。
「なんだ、あいつら」
「全員ブースターをつけているみたいだけど」
フィーナの言う通り男たちの両手両足にはブースターが装備されていた。
「よく見えるな。でも、あいつら薄人だよな」
「そうだな」
薄人とはこの世界で先住民たちが使っている白人たちの蔑称で、彼らは見た目も能力も先住民より薄いということからそう呼ばれている。
「奴隷種の諸君に告ぐ」
カイネルがそういうと、俺以外が憤慨した。
「奴隷種だと!」
「ふざけんな!!」
この国以外では、俺たち先住民は奴隷として扱われている。そのため、他国では先住民などとは言わずに奴隷種と呼ばれることがある。
もちろんこの国ではその呼び名は禁止されている。
他国でもその呼び名を使うのは奴隷を酷使するような先住民を人間とは思わない連中がよく使っている、先住民の蔑称だ。
そんな憤慨をものともせず、カイネルはつづけた。
「おとなしく投降するならば、命の保証はしよう、しかし、あくまで抵抗するというなれば……」
カイネルはそういうと後ろに控えていた男たちのうちの1人に指示を出した。
「?」
何かと思っていると、指示を出された男が軽く腕を振り上げると何かを投げるようなモーションを取った。
ドゴォッ
すると隣のほうからものすごい音が聞こえ、俺たちはその方向を見た。
「なっ」
「な、何がおきた」
「……何か投げたみたいだ」
「見えたのか! ……さすがだな」
「いや、いくら俺でも見えないって、ただ、何かが一直線に向かってきたことはわかったからな」
確かに動体視力はかなりのレベルまで鍛えている。しかし、上森はあくまで人間の範囲での強さ、だから人間の限界までは越えられない。
とはいえ上森では視力以外の五感すべてを鍛えている。
つまり、今見えたものは目で見たというより空気の流れを肌で感じ、それを耳で聞き取ったということだ。
「見ての通りわが国では諸君らのブースターより、倍の力を発揮することができる。この意味が分かるだろう、つまり、諸君ではこの者たちにどうあっても勝てないということだ。さぁ、おとなしくわが奴隷となるがいい」
なんだか、妙に自信たっぷりな発言だった。
「まじかよ、倍って!」
ブースターの真実を知る俺とフィーナ以外は驚愕していた。
「どうするんだ」
俺はこの場にいた全員に尋ねた。
「……決まっている。グリム」
「へい」
ブリネオが近くにいた部下に声をかけた。
「返事をしてやれ」
なんだかブリネオは悪い笑みを浮かべていた。
「了解」
グリムもまた同じく悪い笑みだった。
そして、グリムはおもむろに持っていた弓に矢をつがえた。
何かと見ていると弓の弦を引き絞り、ついには矢を射った。
その矢は、ものすごい勢いで突き進みついにはブリザリスの国旗の隣にはためいていた、たぶんカイネルの旗印に思いっきり突き刺さった。
すげぇな、那須与一みたいだ。
その腕前に感心した。
「す、すごい」
フィーナも同じく感心していた。
「いつ見ても、いい腕だな、グリム」
「なに、これくらい、軽いぜ」
グリムも褒められて少し照れていた。
旗を撃ち抜かれたカイネルは少しの間呆然としてから、何かをつぶやいてから言ってきた。
「な、なるほど、あくまで、逆らうというのか。いいだろう」
カイネルがそういってから、後ろの男たちに何やら指示を出すしぐさをすると、男たちが前に出てきた。
「来るみたいだな。そんじゃ、行くか」
肩を回しながらそういった。
「うん、了解」
「こっちは頼むぞ」
「ああ、任せろ、お前らもやりすぎるなよ」
「わかっているって」
ここにいる全員が俺とフィーナが負けるという考えは全く持っていなかった。
それから、俺たちは城壁から飛び降りた。




