第17話 終結
「なっ!!」
「おい!!」
城壁から飛び降りると後ろからそんな声が聞こえてきた。
それはそうだろう、何せ城壁は高さにして大体3階ぐらいあり、その下には深い堀、幅も結構あり、10メートル以上はある。
そして、それを越えても敵兵がひしめき合っているからだ。
そんなところに飛び降りたら普通は無事では済まないだろう。
それでも、俺たちが飛び降りたのは、当然策があるからだ。
その策とは……
「お、おい、おいおい、まじかよ」
「飛んでやがる。ファルターのやつ飛行魔法も使えたのかよ」
「何でもありだな」
そう、俺たちは今、飛行魔法によって空を飛んでいる。
飛行魔法というものは、風魔法の応用で、風を発生させて揚力を生み出し持ち上げつつ、進む方向とは別の方向にも風を起こし、推力を作って移動している。
つまりヘリコプターと同じ原理だったりする。
とはいえ、この世界にはヘリコプターはなく、この原理も理解されていないために、この魔法を使えるのは俺だけだったりする。父さんも原理を理解できずこの魔法を使えない。
まぁ、たとえ原理を理解できても、これ、風を常に発生させているだけあって結構魔力使うから普通の人には無理だろうと思うけど……。
といった理由から俺以外誰も使えない魔法だ。
この魔法のおかげで俺たちは難なく城壁から飛び降り敵兵たちを飛び越えることができた。
「……」
そんな俺たちを見たブリザリス軍は絶句していた。
「どうする、半々で行くか」
「うーん、いつも通りでいいんじゃない」
「だな」
そんなのんきな会話をしながらブースター部隊のもとへと向かった。
「なんか、ガキが来たぜ」
「気をつけろ、いくら子供でも飛行魔法を使う。かなりの魔法使いのはずだ」
「へっ、魔法使いごとき、俺たちの敵じゃなねぇよ」
「まったくだぜ。それにあの小娘のほうも、ブースターをつけているみたいだけどしょせん通常出力だろ、倍の出力を持つ俺たちにはかなわないからな」
「当然だな。それにしてもあ小娘はずいぶんといい感じじゃないか」
「お前、女なら何でもいいのか」
「奴隷だぞ、あれは」
「バカ野郎、奴隷なら奴隷としてかわいがればいいんだよ。へへへっ、今からどんな声で泣くのか楽しみだぜ」
「ヒャッハー、あの魔法使いは殺していいんだよな」
「好きにしろ、あいつは生かしておくと面倒そうだ」
ヒャッハーって、いつの世紀末だよ。それになんだかフィーナに対して不穏な発言をしたやつもいるしな。
「なんか、気持ち悪いわね」
フィーナは生理的に受け付けないでかなり引いていた。
「とっとと片付けるか」
「そうね」
そうこうしているうちにお互いの距離が20メートルぐらいとなった。
「さてと、お前ら、死にたくなかったら、おとなしくここは引いておけ」
俺がそういうと一瞬何を言われたのか分からなかったよな顔をした後笑い出した。
「あはははっ、ははははっ」
「おいおいおい、今、こいつ、なんて言ったよ」
「死にたくないなら、引けとよ」
「きゃはははっ、それは、お前らだぜ。あははははっ」
「ぎゃはははっ、ははははは」
「受けるー」
「お、おい、ふふ、お、お前らふっふふ、笑いすぎだ」
「お、お前だって笑っているじゃないか。あっははは」
大爆笑であった。そんなに受けること言ったっけ、俺、まぁいいや。
「それで、どうするんだ」
「そ、ははは、そんなの、ありえねぇよ」
「ああ、帰るのはお前らだぜ。早く帰ってママに甘えていろよ。きゃはははは」
「引く気はないみたいだな」
「……そうみたいね」
「そんじゃ、行くか」
「了解」
俺たちはお互いに目で合図を送りつつ、一気にそれぞれ近くにいた男に肉薄した。
「ぎゃはは、……ぐはぁ」
笑っていた男は俺の一撃を受けてうめき声をあげた。
「笑いながら死んでみるか?」
俺は男たちの殺気を放ちつつ尋ねた。
「なっ、こいつ」
「ダイル、スベン」
「この野郎」
男たちはようやく構えをとった。
こうして俺とフィーナVSブリザリスブースター部隊との戦いが始まった。
「魔法使いは武術が苦手なはずだ。接近戦に持ち込め」
なんだか1人冷静そうなやつが司令塔となりそう指示を出していた。
しかし、その指示は間違っている。何せ、俺は武術も得意だ。
それに最初から魔法を使うつもりはあまりない。
だからこそ、俺はあっという間に3人の男たちを沈めていた。
「なっ、まさか、お前は魔法使いではないのか」
「くそっ、さっきの飛行魔法は、別のやつがかけたのか」
「だましやがって」
「別にだましてはいないぜ。俺は魔法使いだからな」
俺はそう言って、少し距離のあるやつに向かってファイアーボールを放った。
「ぐわぁぁあああ」
ファイアーボールを受けた男はもんどり打って倒れた。
「……魔法だと、こいつ、ほんとに魔法使いかよ。それじゃ、一体この強さは何だよ。大体俺たちは倍ブースターを使っているんだぞ」
「確かに、お前らはなかなかいい才能を持っている。そのブースターを扱うにはそれなりの才能が必要だからな。だが、お前らはそれに胡坐をかいて技を磨くことをしなかった。それが敗因だ」
俺は簡単に答えてやった。
「磨くだと、ふざけるな、俺たちは天才だ。磨く必要なんかねぇんだよ」
そういいながら攻撃を入れてきたが簡単によけられるものだった。
「あいにくだがお前らは天才じゃない。天才っていうのはあれのことを言うのさ」
俺はそう言ってフィーナを指さした。
見るとフィーナは喜々として敵を圧倒していた。
「まぁ、そういうわけだ、覚悟するんだな」
それからはあっという間に10人を倒した。
「さて、カイネルだっけ、どうするんだ、切り札は亡くなったぜ」
「くっ、まさか、ブースター部隊がやられるとは……だが、貴様ら奴隷の好きにさせてたまるか」
そういって、カイネルは腰の剣を抜き放ち俺めがけて斬りかかってきた。
「いいぜ、相手になってやるよ」
そういって俺もまた腰の刀を構えた。
そして、カイネルが迫ってきた瞬間、一線カイネルを切り伏せた。
「……終わったな」
「うん、終わったわね」
こうして、ブルックリム要塞での戦いは終わりを遂げた。
ブリザリス軍は前線にいる奴隷たちを置いて敗走、しかし、ビリックの追撃で大半が死亡した。
おいて行かれた奴隷たちはどうしたらいいのかわからない風体だったが、希望したものをそのまま逃がすか、ブリネオの部下として雇い入れた。
その後、俺とフィーナはミドクリグで領主からバカの仇をとったことなどの功績をたたえられ表彰。
ガイはブリネオにかくまわれながら傭兵となり、その家族はその世話役としてついていくことになった。
こうして、思ったよりも長かった戦争が終わり、俺たちはようやくセルミナルクに帰り着くことができた。
「ただいま」
「ただいまー」
「おかえりなさいませ。旦那様、奥様」
マドリスの顔を見たらやっと帰ってきたと思いなんだかほっとした。
フィーナは適当なメイドを見つけては愚痴をこぼしまくっていた。
「しばらくはのんびりとするか」
かくして俺はそう誓うのであった。




