第15話 救出作戦
バカが暗殺されたせいで、なぜか副司令官が罪を擦り付けられ、処刑されることを知った俺たちだが、俺とフィーナなら全力で走れば何とかその処刑に間に合う、そこで、緊急依頼として俺とフィーナはミドクリグに走ることになった。
「それじゃ、行ってくる、後は頼むぜ、ああ、それと、俺がいないんだから無茶するなよ。ケガしても治療できないからな」
「ああ、わかっている、バカじゃないんだ、そうそう無茶はさせねぇよ。むしろ、お前らが返ってくるまでに片付いているかもな」
「それは、それで、いいことじゃねぇか」
「うん、確かに、早く終わったほうがいいしね」
「だな、それじゃ、行くか」
「了解」
それから俺たちは全力で走りだした。
「ぬぉ……」
何やら後で妙な声が聞こえたが走り出した俺たちはもはやそれを聞くことはできなかった。
そうして2時間ぐらい走ったところでようやくミドクリグが見えてきた。
「見えてきたな、フィーナ、そろそろいったん止まるぞ」
「うん」
そういって俺たちはミドクリグを囲む城壁の前で止まった。
「んじゃ、手はず通りに俺が副指令を救出するから、フィーナはその家族を頼む」
「わかった、気を付けてね、ファルター」
「ああ、そっちもな、んじゃ、後でな」
「うん、後で」
俺たちはこうしてすぐに城壁を飛び越えつつ別れた。
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ファルターと別れた私はブリネオから聞いていた、副指令の家に向かって気配を消しながら走っていた。
そして、今ようやくその家を見つけた。
私は玄関の扉をたたいた。
コンコンコンッ
「はい、どなた?」
中からは若い女性の声が聞こえた。娘さんかな?
「あの、ブリネオから言われてきました」
「えっ、ブリネオさん!」
中の女性は勢いよく扉を開けた。
「あっ、えっと、あ、あなたは?」
中から出てきたのはきれいな人で、確か年齢は17歳って聞いているから、私より少し年上かな。
「えっと、ちょっと失礼しますね」
私は事情も事情なので無遠慮に中に入った。
「えっ、あっ、ちょっと」
家の中には40代ぐらいの女性もいて、たぶん奥さんだと思う。
「すみません、事情がありまして、えっと、私はフィーナっていいます。セルミナルクで冒険者をしているんですけど、今回特別依頼でブルックリム要塞の籠城戦に参加していまして、副司令官やブリネオにお世話になっています」
「えっ、あなたが、だって、どう見ても……」
多分私が子供だって言いたいんだと思う。
「はい、14歳ですけど、一応ランクは10なんです」
「えっ、14って、うそでしょ、だって、普通冒険者って14歳からよね」
「はい、当然私も1から始めて、まぁいろいろありまして、ランクを上げることができたんです。えっと、まぁ、今は置いておいてください、それより、今日はお2人を救出するために来たんです」
「救出? それはもしかして主人のことと関係が?」
「はい、そうです。ブリネオの要請で私とファルターで副指令を救出することにしたんです。私もお世話になったし助けたいっていう気持ちはあります。何より、あんな司令官のために副指令が処刑されるなんておかしいですから」
「ああ、ありがとう、そういってくれるだけでうれしいわ、でも、主人は……」
「大丈夫です。副指令はファルターが救出に向かっています。彼ならどんなところでも問題ありませんから」
私は自信満々に言ってのけた。
「で、でも、領主の館にとらわれているんですよ。私たちも会えないんです」
「すぐ会えます。今はとにかく私を信じてください。それがだめならブリネオを……」
私がブリネオの名前を出すと2人は少し考えました。
「私、信じます。ブリネオさんが信じて託したんですよね」
「はい」
「そうね、彼が信じて託したのなら、私たちも信じましょう」
「ありがとうございます。それでは、すぐに行きましょう」
「はい、すぐに荷を……」
ここで奥さんが荷物を作ろうと部屋に行こうとしたけど私はそれを止めた。
「いえ、急ぎますし、何より荷があると邪魔ですから、そのまま」
「えっ、で、でも、着替えとか。その、大事なものも」
「いいえ、フィーナさんの言う通りね。ターナ今はそんなことを言っている時ではないわ」
「で、でも」
「大丈夫ですよ、ターナさん、後で、ファルターが荷物を全部持ってきてくれますから」
「えっ、全部って、どうやって」
「ファルターは特別な魔道具を持っています。それを使えばこの家にあるものをすべて持ってこれますから」
「??」
2人の頭に疑問符が浮かんでいるのがはっきりと分かった。
まぁ、知らなければそうなるよね。
「とにかく、行きましょう」
「は、はぁ」
こうして私たちはミドクリグを脱出した。
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フィーナと別れて俺は一路、副指令がとらわれている領主の館に向かっていった。
「あれが、ほんとになんで領主ってやつは自分の館をあんなにでかくするかな。それに、セキュリティも厳重だな」
俺は自分が住んでいる屋敷を棚に上げながらつぶやいた。
「さて、フィーナもそろそろ助けだしたと思うし、俺も急ぐか」
俺はそうつぶやくとすぐさま館に忍び込んだ。
俺が館に入ると思っていた通りかなり厳重だ。とっても俺にとってはザルだったが、たぶん暗殺ギルド対策だろう。まぁ、連中ならこの網にすぐにひっかかるだろうな。でも、上森はかつて、日本で忍たちに数多くの技を伝えた一族だ。当然俺も忍の技を習得していた。
その俺に言わせればものすごく難易度の低いダンジョンだった。
その証拠にあっという間に地下牢にとらわれた副指令を見つけた。
「副指令」
俺はかなり小さな声で副指令に声をかけた。
「なんだ、食事ならさっきもらったぞ」
「いえ、俺です、ファルターです」
「なに、ファルターだって……なっ、お」
ここで大声を上げそうになって慌てて口をふさいだ。
「ファルター、なんで、ここに、それにどうやって」
「忍び込みました」
俺は簡潔に答えた。
「しのっ……って、いや、そんなことより、早くここから出るんだ。そうしないと君まで……」
「出るのは、副指令も同じです」
「何を言っているんだ、俺は、処刑されるんだぞ」
「ええ、だからこそここから連れ出すんです。これは要塞のみんな全員からの要請です。それに、俺自身も、フィーナも世話になった。だからですよ」
「そうはいっても、ここから出るなんて無理だ。君だけでもすぐに引き返すんだ」
「いいえ、俺が副指令を助けたいのはそれだけではないんですよ」
「どういうことだ」
「ブリネオから聞きました、副指令は昔死にかけたことがあるんですよね」
「ああ、そうだ、忘れもしない、あの時の2人には感謝している」
「だったら、なおさらです。父さんが救ったその命を、俺が拾わないわけにはいかない」
俺がそういうと副指令は一瞬驚愕の表情をした。
「と、父さん、それじゃ、ファルター、君は、まさか、マルスの」
「まぁ、一応、ちなみに母さんはその時に一緒にいた槍術使いですよ」
「ははっ、そうか、そうか、道理で、いや、確かに、あの2人の息子なら、納得か、よし、わかった、ファルター、君にすべて任せる」
ここでようやく副司令官に生気が宿った。
「任せてくれ、ああ、そうそう、家族ならフィーナが救い出しているから、安心してくれ」
「そうか、ありがたい」
「といっても、この後、副指令の家によるけど……」
「ん、どういうことだ」
「まぁ、それはそれとして、少し下がってください、本来なら錠前でも破りたいところですけど、俺にはそれ、できないので」
俺がそういうと副指令は少し下がった。
「そんじゃ」
俺はそう言いながら、腰に差した刀を素早く抜き鉄の格子を切り裂いた。
俺が素早く切ったのでいまだそのままの状態の鉄格子を手に取りそれを外した。
「なっ、い、いつの間に」
副指令はまた驚愕していた。
「とりあえず、行きましょう」
副指令はなんだかわからないといった感じに俺に続いた。
こうして、俺たちはあっさりと領主の館を出たのだった。
「ま、まさか、こうもあっさりと出られるとは……」
あまりにあっさりと出れたので副指令はセキュリティに不安を覚えたようだ。
「大丈夫ですよ、まぁ、俺たちは鍛え方が違うので、簡単なだけです」
「そうか、まぁ、そういうことにしておこう、しかし、マルスは、こんなことできなかったような気がするが……」
副指令が何やらつぶやいていたが俺は聞かなかったことにした。
「さてと、それじゃ、副指令の家に行きますよ」
「ん、あ、ああ」
その後、俺と副指令は副指令の家に行き、そこにあった家財道具など荷物を魔法の袋に入れていった。
そこでも副指令は驚愕していた。
それから、来た時のように城壁を乗り越えたわけだが、そこでも驚かれた。
「きょ、今日は、驚いてばかりだ」
思わず副指令もそういったぐらいだった。
「フィーナと落ち合うのはあと少しのところなんで行きましょう」
「ああ、頼む」
それから数分歩いたところで、前方に3人の人影が見えてきた。
「……そっちもうまくいったようだな」
「そっちもね。副指令、また会えてよかったです」
「うむ、フィーナも私の家族の護衛をありがとう」
「いえ」
「お、お父さん」
「あなた」
「お前たち、すまない」
「いいえ、あなたは、何も」
「そうよ、領主が悪いんだから」
「そうか」
こうして、俺たちはとりあえず副指令と家族を合わせることができた。あとは、無事この3人をブルックリム要塞に連れていくことだけだ。
それから数日、だいぶ時間がかかったが俺たちはようやく無事に副指令をブルックリム要塞に連れ戻すことができた。
その際、何やらブリネオと副指令の娘ターナがなんだか怪しい雰囲気になり、フィーナがそれを見て微笑んでいたのが印象的だった。




