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「うらぁ!」


 ドワーフの咆哮が響き。

 振るった戦槌(ウォーハンマー)が命中し。

 強烈な打撃音とともに、人型の腹部の肉が、骨が、中身が、弾け飛ぶ。

 

 しかし。

 その肉も骨も、魔剣から伸ばされた触手のようなものであり。

 飛び散った中身は、詰まっていた闇色の魔気(オド)でしかない。


 くそったれ!

 ドワーフは、心で悪態をつき。

 身体を遠心力のままに、回転させる。


 魔剣は、宿主の肉体を盾にして、刀身(じぶんじしん)を防衛していた。 


 けど。


 今、身体のど真ん中を失って、巨体はバランスを崩している。

 わずかに残った背骨と。

 地面に突き刺した大剣を支えに、転倒をこらえて踏ん張りを利かせている。



 だからこそ。


 そのタイミング。



「――練気・三式・『気炎万丈(きえんばんじょう)』、八式・『獅子奮迅(ししふんじん)』!!」


 筋力強化。

 短時間筋力超強化。


 その練気技術を行使しつつ。


 遠心力と共に、左の大盾を叩きつける。

 

 ――その、手にしている大剣に向けて。


 がぎぃん

 と、甲高くも鈍い残響が轟き。


 腕と地面で、支えられていた大剣のどてっ腹にそれは、ぶち当たった。


 ずごぉん。

 

 さらなる轟く大残響。


 地面に刺さっていた反動。

 ぶち切れた腕の反動。


 その全てを受けた大剣は、『く』の字にへしゃげて、凄い速度で空洞の壁にぶちあたった。


 がらん、とそれが落ちて地面に転がり滑る。



 ドワーフは歩く。

 ゆっくりとその倒れた大剣の元へ。


 魔剣は、宿主を失って、曲がった身体を再生すべく。

 生きた金属のように気色悪く蠢いていた。



 ドワーフは、その刀身を、洞窟探検には不似合いな可愛い靴で踏みつける。


「――観念するのね。『鋼瘴菌(メタロファジア)』」


 実際。

 その魔剣の真の正体は、武具に宿る霊的な寄生体であり。

 武具の無念や怨念を原動力として、宿主を支配する邪霊とも魔物とも言えないモノだ。 


 そして、その心臓は、柄と鍔の中間点。

 そこに備えられた、宝玉である。 


 およそ、金属とは思えぬ動きで、往生際悪く、蠢くそれに。

 ドワーフは、戦槌を振り上げる。


「死ね……!」


 がきり。

 打ち付けられるハンマーが、その宝玉を粉々に砕き。


 それで、魔剣は動きを止めた。

 

 ドワーフは呟く。



「……変な形で固まっちゃったわ……。ちゃんと売れるかしら」


 クリスナーガのような形状で固まってしまった剣の価値を心配しつつ。

 

 振り向いたドワーフは。


「あっちも、どうにかカタがついたようね」


 同時に、オオムカデが粉砕された場面を視界に捉えていた。


 

 弟子たちは健在だ。

 エルフの軽戦士は一人満身創痍だが。

 獣人の弓使いも、人間の魔法使いも、謎の鳥も。


 全員、生きて、立っている。


 それを確認して。 


 はぁ。


 と、胸をなでおろす。

 

 本当に良かった。

 駆け出しの鉄等級には、厳しすぎる状況だった。


 ドワーフは思う。

 依頼を先に偵察できれば、こんなグレード違いのような依頼は無くなるのだけど。

 そういう手間を割いていられないという実情がある。

 それに、冒険者とはそもそも、そういう扱いなのだ。

 消耗品、死んでも仕方がない存在。


 だからこそ、強さこそが正義の世界なのだ。


 

 ドワーフは、大盾の裏に戦槌を仕舞い。

 背中に大盾を背負い。

 転がっている大剣を拾い上げる。


 それを肩に担ぎつつ。


 弟子たちの元へ歩き出す。




「シエナ、ハルハ、ランターナ……あと、ベンヌ……」

  

 一人ひとり名を呼び。


 ドワーフの勇者、プリムティスは労う。


「――お疲れ様、よくやったわ!」


 そう、笑顔で。




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