ともしび
入り口から遠ざかるにつれて、差し込む光が無くなっていく。
ごつごつした岩場は、視力を奪われると脚を取られることは必至だった。
「くっ……」
ゴブリンの洞窟だということもあって。
ビビリながら歩くハルハが、躓きかける。
その前を行くシエナと、ランターナはその様子に気づいていない。
そして、その全てをプリムティスは最後方から見ていた。
「待った」
プリムティスは、全員を呼び止める。
脚を止め、振り返る三人。
「アンタら、忘れてるのかもしれないけど、パーティなのよ……?」
それに、三人は「はい?」ときょとんとした顔だ。
察しが悪そうなので、プリムティスはさらにいう。
「他のメンバーの事も、ちゃんと気遣いなさいよね、って言ってんの――。あと」
プリムティスはハルハを見る。
「アンタも、良くない状況はほっとかない! それとも、面倒なわけ?」
これも、洞窟に入る前にプリムティスが言った事に通じている。
『面倒かどうか』で判断をするなという事だ。
しかしそれでも、三人は良く解らない様子で。
プリムティスは、溜息を吐く。
プリムティスは思い出す。
――かつての魔王討伐パーティにもエルフは居た。
だから、プリムティスは知っている。
ドワーフや夜行型の獣人種ほどではないが、エルフも暗がりでそれなりに見えるらしい。
つまり、シエナは現状の暗さが気にならない状態だろう。
それはドワーフであるプリムティスも一緒だが。
しかし今現在、全員の中で、一人だけ良く見えていない者が居る。
こういう、パーティで誰か一人が難を抱える状態が良いはずがない。
それの状況を改善できる方法があるのに、放っておくのも良いはずがない。
これは、駆け出しの種族混成パーティだとよく陥る事だが。
……それではダメなのだ。
自分達で気が付けないのならば。
しょうがない、ハッキリ言おう、と。
プリムティスは言う。
「……灯ぐらい用意しなさいよ?」
確かに今はまだ薄暗い程度だが。
奥に進めば、さらに暗闇になるだろう。
その状況は恐らく、以前のハルハの失敗に通じているのではないかと。
あの洞窟を後から辿ったプリムティスは推察している。
故に、プリムティスは酷だろうがさらにハルハを咎める。
「……また、おなじ轍を踏むわよ、ハルハ?」
それに、ようやく自分が油断していることに、ハルハは気づいたようだった。
プリムティスの言葉は当然、他のメンバーにも聞こえていて。
夜目が効くエルフと獣人も、人間族は暗闇に弱いことを思い出す。
「ゴメン、ハルハ、気づかなかったよ」
「あ、あたしもです……」
「いえ、プリムさまの言う通り、これは私の油断です」
反省したハルハは、カバンから携帯式の松明を準備する。
けど、近くに火の現象核が見当たらないため、魔術で着火は不可能だった。だから、火打石での着火を試みるが、使った事が無いハルハは、とても手こずった。
そこに。
見かねたベンヌが火の魔術式【着火用術式】を行使して、松明に火を点け、明かりを作り出す事に成功する。
そのうえで。
「――ハルハさん、これ、どうぞ。予備ですけど」
ランターナは、古い型の半自動着火具をハルハに差し出す。
「これは……?」
「以前、念のために街の錬金術師から買ったモノです。あたしには、もうベンヌも居ますし、夜の視界には困りませんから」
どうぞ、とさらに差し出すそれを。
ハルハは手に取って。
「あ、ありがとう」
少しそっぽを向きながらも、おずおずと受け取ったのだった。
そうして。
「――解った? こんなこと、敵に遭遇してからやってちゃ間に合わないでしょ?」
結局、火の準備に10分を要した。
プリムティスの言う通り、敵の気配を察知してから準備するということは難しかっただろう。
「助かりました、プリムさん」
ランターナを筆頭に、皆が礼を言う。
それにプリムティスは、ふん、と。
「私は、このためにあんた達と一緒に来てんのよ。――だからって、私が後ろに居るってことを、意識すんのは辞めるのよ? 良いわね?」
「はい!」
そうして、皆は改めて進み始める。




