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迎撃と提案


 手にした槍で、ゴブリンを威嚇し、へっぴり腰の村人と。

 近場の畑を好き勝手されかけているような状況。


 数は1匹ではない。

 10匹近くはいそうな状況。


 緑色の矮躯に、不気味な顔をさらに嘲笑に歪ませて。

 弱腰の村人に戦意が無いのを良いことに。

 

 嘗め腐ったその態度と顔。



 それが、ベキリと、拉げ。

 苦悶の声と共に。

 その矮躯が吹き飛ばされ、土の地面に激突し、ゴロゴロと転がって倒れ伏す。


 

 代わりに現れるのは――。

 伸ばし切った脚を折りたたみ。

 全身のバネで反動を殺し。

 ズザリ、と着地を決める、おっきなキツネ耳の獣人。

 

  

「――だ……、大丈夫……ですか?」


「あ、ああ……!」


 対応していた村人は、自警団では無かった。

 人手が足りないため、駆り出された村民だ。


 獣人は言う。


「……ひ、引き受けます。自分の身を守ってください」


「助かった、よろしく頼む」



 暗闇で光る金色の瞳が捉える。

 数は、全部で12匹。

 そのゴブリンの群れの前に、ランターナは立ちはだかる。

 背中の長弓を手に取り。

 

 棍棒を手に突っ込んでくる一匹を再び、強靭な回し蹴りで吹き飛ばす。

 獣という物は、そもそも後脚が発達しているモノだ。

 

 大気に混じり始めた魔素(マナ)の毒性に適応するため。

 この世界の生物はそれぞれに進化を果たしてきた。


 その過程で人の形を得た獣人とて。

 以前の名残は色濃く。

 獣人の後ろ脚も太く強靭だ。


 人で言えば、特に腰回りから膝までが、一回り二回り大きく、どっしりしているのが特徴で。


 そこから繰り出される蹴りは、人間のソレとはレベルの違う破壊力を生み出す。


 それを存分に生かし。

 ランターナは自身のおぼつかない弓術を補ってきた。


 ハイキック、ミドルキック、回し蹴り、カカト落とし。

 加えて、至近距離での矢。


 

 ランターナはそれで、3匹のゴブリンを戦闘不能に追いやった。


 そして……。


 バサバサと、黒い鳥が、ランターナの肩へ合流し。

 シエナと、ハルハも走ってやってくる。

 


「ランターナさん、襲撃は北側だけですか?」


「はい。ベンヌの哨戒の限りでは……」

 例外があるならば、地面を掘って迂回されるパターンだ。

 それはさすがに、空からでも気づかない。

 でも、この一帯は丘で。

 作物を育てられる土壌はあるが、すぐしたが岩盤の地層だったり、岩が埋まっている事も多い。


 地面を掘るのは効率の悪いに違いない。


「……了解です」


 早速魔力を練り始めるハルハ。

 そんな魔法使いは、挟撃された経験から、後方や側面からの強襲を気にしていたのだ。


 さらに。

(みず)に芽吹き、瓊葩綉葉(けいはしゅうよう)()に燃ゆる――、走れ、凶刃成る言の葉よ――」


 小柄なエルフは――。 


「――『木葉短剣(リーヴスエッジ)』!!」

   

 作り出した短剣、左右一本づつの二刀流で、ゴブリン一体を斬り伏せ。 


「おまたせ、ランタナ」

 シエナのその言葉に、ランターナは真剣な面持ちで頷き。


 さらに後方から放たれる、ハルハの魔弾が、さらに2体を貫いて絶命させる。 


 その状況に、ランターナは感無量だ。   

(――駆け付ける仲間……! シエナさんとハルハさんの阿吽のコンビネーション……! 熱い! この空気、吸える!)


 そして敵は――。 

「あと6匹! ……いえ……」


 残りは5匹だ。


 なぜなら、自分自身に雷の魔力を纏わせて吶喊するベンヌが、一体を吹き飛ばして昏倒させたからだ。


 そうして。

 双剣で華麗に舞うシエナ。

 強力無比な魔術で多数を仕留めるハルハ。

 

 強烈な蹴りで骨ごと砕き伏せるランターナ。


 さらに……。

 長弓の放つ矢が、最後の一体に突き――刺さらない。



 明後日に飛んでいった。


「あ……」


 だから最後の一体は、シエナが左右の短剣を投げつけ。

 それにより、喉元と頭蓋を穿たれた最後のゴブリンが、膝から崩れ落ちる。


 

「思ったより、問題なかったね」


「ええ、でも油断は禁物です」


 そんなシエナとハルハ。


 最後の矢を外してしまい、カッコ悪くて二人を見れないランターナ。


 そのランターナに、シエナは声をかける。


「……ランタナ。キミの戦い方だと、その弓は取り回しが悪いんじゃないかな?」


 今の戦いで、シエナは思っていた。

 キックで戦うランターナは、長い弓を持つと、邪魔になっているんじゃないかと。

 その上、長弓は長めの射程が売りの弓だ。それは、ランターナの戦闘レンジと噛み合わない。


 だから、シエナは自分の腰に刺している短弓を差し出す。


「もしよかったら、こっちで試してみたら? 代わりに、キミの弓を頂戴」


 シエナは、エルフだ。

 弓は本業でなかったとしても、それなりの目利きはある。

 

 それに、ランターナは恐縮しつつも。


「……い、良いんです、か?」


 短弓はショートレンジ用の小型弓だ。

 しかしながら、エルフの手によって作られたそれは、確かな技術の籠った良品。

 受け取っても良いのだろうか、とランターナはシエナを見上げるが。


「うん。どうせ私は、ショートボウの距離なら、投擲で事足りるしね」


 そうして、シエナは矢と矢筒も差し出す。


 だから代わりに、ランターナは自分のロングボウと、矢と矢筒を差し出した。

 あまり出来の良くない弓で申し訳ない、と思いながら。


「……ありがと」


「い、いえ……こちらこそ、気を遣わせてしまい……!」


 再び恐縮しつつ。

 エルフの短弓の出来栄えや、見た目に――。

(か、軽いし、見ただけで洗練されてると解る。こ、これがエルフ直伝の弓……!? しゅごい……。それにちょっと、シエナさんの香りがするぅっ!)

 

 シエナの優しさと温もりに感涙のランターナ。


 そこに。


「――まだ来ないとも限りません。もう一度、警戒のローテーションに戻りますよ」


 そんなハルハの言葉に。

 再び三人と一羽は、配置に戻るのだった。


 無事、次の日の朝を迎えるまで――。


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