引率勇者
基礎トレーニングの後。
「さて、3人目も来たことだし。アンタ達ももう、依頼を受けられる冒険者なわけ。ってことで、今後の目標は、もっと上のランクの資格の取得と、新しい技能の獲得。それと並行して、『依頼』も受けてもらうわ」
プリムティスは、出来立てでピカピカの教室でそう講義を始めた。
ランターナの分の教材が準備出来ていないので、本日のマナの魔術講義は無しになった。その代わりである。
「わ、私もですか?」
シエナとハルハの座る席。
その後ろの席で、二人の背中を見ていたランターナが手をあげる。
「当然よ。この3人でパーティを組んでやってもらうんだから」
それに。
シエナとハルハも、え? と声をあげる。
「まぁ、最初は遺失物探しとか、土建の手伝いとか、魔物の言葉の翻訳とかでも良いけどさ……。どっちにしろ、銅等級になるには魔物を退治したという実績が幾つも必要だから」
ハルハは、一度ゴブリン退治で失敗した記憶がよみがえる。
今居る3人で、問題が無いだろうか?
その視線は、シエナやランターナを交互に見て。
特に、まだ実力が未知数なランターナは、ハルハにとって不安要素だ。
「……そんな簡単に、いけますか? プリムさま?」
ランターナとはさっき会ったばかりですけど、と。
皆までは言わないけれど。
プリムティスを見つめるハルハの瞳には、やはりランターナに対する懸念が見え隠れしていた。
その言葉に。
プリムティスは、心底感心する。
なぜなら、最初のハルハは依頼を受けるという事について舐めていたからだ。
会ったばかりの冒険者に、何の疑問も抱かず。
魔術に長けている私なら何とかなるだろう。
そうやって、あらゆるものを過信し、軽々しく請けた依頼でハルハは失敗した。
けど。
今のハルハは、なんとかなるだろう、ではない。
なんとかならないかもしれない、と言うハルハなのだ。
この感覚は、冒険者に大事な感覚だ。
言わば、油断を生まない考え方だからだ。
だから。
プリムティスは言う。
「良い事を言うわね、ハルハ。冒険者らしくなったじゃない」
「え?」
なぜか褒められた。
しかもプリムさまに。
その事に、どぎまぎするハルハだが。
「確か、ランタナはFランクなんだよね?」
シエナが、プリムティスに問い。
その視線は、後ろに座っている獣人に向けられる。
「つまり先輩ってことでしょ? 頼りにしても良いんじゃないかな?」
シエナの何気ない言葉が、ランターナを突き刺す。
「うっ」
(その真っ直ぐな瞳が、キラキラで美しくて、痛い)
「ね? ランタナ先輩?」
(せ、せんぱい!? 嬉死)
どこかへ旅立ってしまったランターナを尻目に。
プリムティスは付け加える。
「今回は、依頼に私もついて行くわ」
「プリムも!?」
シエナが驚いて声をあげる。
そして。「ちゃんと敬称をつけなさいよ、プリムさまがどんな方だか忘れたんですか!」
なんて噛みつくハルハをさておき。
そんなやり取りの最中。
マナの視線はずっと、ランターナの横の席、その机に留まっている白い鳥に向けられていた。
そして、ベンヌもまた、マナを睨んでいた。
お互いがただ者ではないと、確信しているかのように。
やがて。
ベンヌが根負けしたか。
バサバサと羽ばたき、ランターナの肩に場所を移す。
そんなタイミングで、ランターナは言う。
「でも、プリムさんは等級が……」
「――ええ、その通りよ。高い等級の冒険者が同伴すると、『実績』としてはカウントされなくなるから、今回は実地研修、のようなものだと思っておいて。――というわけで、特別にギルドから、見繕ってきた依頼がここにあるのだけど」
そう言って、プリムティスは、巻物のようなモノを広げる。
それを見て、ハルハは少し青ざめたのだった。
-------------------------------
【依頼内容】
『ゴブリンの掃討』
位置:西岸地区南東の森林地帯
依頼主:スカイ村林業経営者(代表者名:ダルトン・ゴックーザ)
村の食料や女性を狙うゴブリンを退治してほしい。
今は、なんとか自衛出来ているが、このままでは仕事に支障が出る上に、皆疲弊してしまう。
恐らく、南東の森を拠点にしていると思われる。
頼む。
提示報酬:銀貨15枚
-------------------------------




