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学校開始


 それから新築の校舎でのトレーニングが開始され。

 さらに幾日かが過ぎた。


 ある日。


「おはようございます、殿下」 


「おはようございます、ハルハちゃん、プリムちゃん」


 それに、プリムティスは、あのさぁ、と困ったような顔になる。 

「いつも言っているけど、奥に引っ込んでいなさいよ、アンタ。不用心でしょうが」


 お付きの者と、お城から派遣された警護の騎士1名と共に。

 校舎のエントランスに立って先生と生徒達(みんな)を出迎える王女の姿に、プリムティスは呆れるばかりだ。

 あまりにも、セキュリティ意識が低すぎる。

 自分の立場と、何よりプリムティスの負う責任の重大さを分かっているのだろうか。


 きっと何も気にしていないんだろうな。

 と、プリムティスは理解しつつ。


「……アンタたちも苦労するわねぇ」

 警護の騎士と、従者に同情していると。

 

「そういえば、シエナちゃんは? 今日もお休み?」

 王女が心配する通り。

 シエナは昨日から来ていない。

 その理由は、秘密にしておいてほしいと言われていたプリムティスだが。


「ハルハ、ハルハー!」


 噂をすれば影というべきか。

 その声の方を向けば。

 ハルハの見覚えのある小柄なエルフが、正門から真っ直ぐ走ってやってくるのが目に入る。


「なんですか、もう。恥ずかしい。こど……」

 

 大声で名前を呼ばれ、赤面するハルハは。

 なにをそんなにはしゃいでいるんですか、子供ですか。

 と一瞬思ったが。よく考えたら、シエナの年齢は90歳近いのだと思い出し。


「……いえ、おばぁちゃん……?」

 そんなハルハの呟きなど馬耳東風で。


 あっという間に目前にやってきたシエナの手には、何かが掲げられていて。

 それに注目したハルハは、驚く。


「はっ!? そ、それは……もしかして、魔術師資格証章ですか!?」


「うん、そうだよ?」


 しかも資格章は鉄製――Gランクのものだ。

 つまり、シエナが休んでいたのは魔術師試験のためだったのだ。

 同じランクの試験であれば、一度通ったサバイバル実地試験は免除になる。

 なので1日あれば、資格の取得は可能だろう。

 それに、もともと魔術にも長けていたシエナが魔術師資格を取れても不思議ではない。


「どぉ、どぉ?」

「休んでいたのはそういうわけだったんですね、シエナちゃん」

「おめでと、シエナ」

 皆から賞賛を受け。

 嬉しそうに見せびらかす様に、ハルハは少し嬉しくない。

 だって、これでシエナは戦士資格の他に、魔術師資格も持つことになる。

 それも両方Gランクだ。


 対して、ハルハはまだ魔術師資格のGランクのみだ。

 これではなんだか、負けているようではないか。


「ぐぬぬぅ……」


 許さない。

 絶対に魔術師のFランクを取得してやる。

 それだけではない、魔術師以外の資格だって取ってやる。


 闘志を燃やすハルハ。



 そうして――。

 みんなが入ってこないので、痺れを切らして出てくるマナとミラ。

 

「リンスレット、頼んでおいた(から)の書はどこかしら? 術式図の魔術記号(ルーン)の座学で使ってみるつもりなのだけど……」

 

「ああ、はい。今、案内しますねマナちゃん」


「ちゃんは辞めてって言っているでしょ?」




 そうして。




 そこにやってきた、今日が初陣の転入生。

 もとい、ギルド長推薦の問題児。

 獣人の弓使いである。


 その肩には白い大型の鳥を乗せ。


 けれども、校舎の入り口で戯れる賑やかな皆の様子を見て。

 割って入る勇気も必要性も感じないその少女は。


 こっそりと木の陰から見つめるのだった。


 

「……まさか」

(あのエルフちゃんと、魔法使いちゃんは、互いを高め合い、競い合う(ライバル)なのではッ? それに、先生方は先生方で、何かありそうな予感――。良い、すごく良い……! 初日から、美味しそうなモノを見ちゃいました、じゅるり)


 なんて、よだれを垂らしているのは。

 すべての手続きを終え。

 プリムティスの冒険者育成計画に参加しにやってきた。

 ランターナ・マグノリア、そしてその相棒の鳥、ベンヌなのである。


 

  

 


  

 



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