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合格の真相



 試射場は、屋内想定と、屋外想定の2カ所が存在する。

 ギルド内を、ギルド員、プリムティス、ランターナと鳥。

 皆で、その方角へ向かう途中。

 外へ出る扉を素通りしたのにランターナが気付く。

 はじめプリムティスは、屋内のつもりだったが。


「あ、あの……ゆ、ゆゆゆ、勇者様……。で、出来れば外が……」


 そうランターナが言うので。


「そぉ? じゃあ、そっちにしましょ」

 それにプリムティスが踵を返し。 

 屋外になったことでランターナは、狐耳をへにょりとさせ、少し安堵した顔になる。

 しかし。

「――あと、勇者様って呼ぶのは辞めて」

 プリムティスの意外な申し出にランターナは、「へぅ!?」っと、耳を物理的に(そばだ)てた。

 重い鉄扉に手をかけ。

 さらにプリムティスは言う。

「あんまし、大仰な呼ばれ方は好きじゃないのよ」


「――え? ……では何とお呼びいた、いたし……すれば?」


 話しながら。

 皆は、石作りの床、柱、屋根の並ぶ回廊に出る。

 周囲は自然に満ち。

 日差しの差し込む遺跡のような景観だ。


「そうね、プリムと呼ばれていることが多いから、それで」


「な……!?」

 それに、ランターナは黙ってしまった。

 黙って考える。

 それは超高速思考の早口モードで。

(――銅像が立つほど有名な英雄様だというのに、なんという謙虚! あまりにも謙虚ォォォ! こちらは毎日携帯用の銅像(フィギュア)を拝み倒している身だというのにぃぃぃ!? し、しかも名前呼びを許されるというのか、おお神よ(ジーザス)! 恐れ多すぎるぅ!!)


 しかし、少しこのチャンスを強欲につかみに行くランターナは。

 尻尾を振り、狐耳をぴくぴくさせ。

 俯き加減のまま。


「で、ででで、では……ッ プ、プリム――……、 ……――さん……?」


(ダメッ、さすがに呼び捨てはむりぃぃ!)


 プリムティスは、そんなランターナの心情などいざ知らず。

 いつも通り。

「ええ、それで頼むわ」


 思考が焼き切れる寸前のランターナを尻目に。


 そうして、到着する。

 短く長さを整えられた草地。

 その草地を設計通りに削って土肌のさらされた地面は、遠くまで続き。

 その最後に的が置かれている。

 土の地面には、一定距離ごとに目立つ石床が置かれていて。

 かなり広く、かなり縦長の区画だ。


 プリムティスは、的と最遠との、ちょうど真ん中くらいの石床に立ち。


「じゃあ、頼むわ」

 ランターナに顔を向ける。

 けど。


「……こ、この距離からで、すか?」


「ええ」

 プリムティスは当然だろうと頷く。

 だって、鉄等級のアーチャー試験はこの距離での実技の筈だ。

 もっと上の等級なら、さらに遠くから撃つことになる。

 そして、撃ったうちの何割が命中するのか。

 さらに、命中させた的の、どこに刺さったか。

 それが、ランクによって定まっているだけだ。

 鉄等級でFランクならば、10発も撃てば1発、2発くらいは的に当たる。

 たとえ、的のど真ん中でなかったとしても、端にくらいは引っかかるだろう。


 しかし、ランターナは自信がなさそうだ。


「1回はやった筈よね? いえ……Fだから少なくとも2回は」

 そうよね、と傍に立っているギルド員に視線を向けると。

 はい、と頷かれる。


 少し渋々ながら、ランターナは。

(致し方ありますまい。勇者様――もといプリムさんの御命令とあらば。このランターナ、恥を忍ぶくらい造作もない事!)


 プリムティスは、真剣な面持ちで位置に着くランターナを見守る。


 白い鷹(ベンヌ)は、羽ばたいてランターナを離れ、宙をホバリングし。

 ランターナは背中に背負っている長弓(ロングボウ)を構え。

 矢を番える。


 その様子は、しっかり様になっていた。

 

 そして、ギリギリと弦を引き絞り、放たれる第一射。


「……ふむ」

 プリムティスに冷や汗が滲み、ランターナの耳がふにゃりとする。


「外れですね」

 ギルド員の女性の無慈悲な判定が空気を伝う。

 プリムティスが、「続けて」と言うので。  

 ランターナは、何度も撃ち続ける。


 第二射も、三射も、四射も。

 というか全部。


 当たりはしなかった。

 ギルド長に聞いた通りだ。  


「……いったいどうやって合格したのよ」

 プリムティスは、信じられないという表情だ。


「そ、それは、ですねぇ……」


 そう。

 アーチャーギルドの実技試験は、的に当たれば良い。

 一度に三本撃とうと、雨のように降らせようと。

 まぁ、さすがにそんな暴挙に出る者はほぼ居ないだろうけれど。

 弓使いでも様々な種族が居て、手作りの矢も、魔法の矢も、市販の矢も、石器のようなものですら。

 番えて撃つ者が居る。

 それに、必ず投擲物、投射物で、百発百中を求められる狙撃手(スナイパー)の試験では無いため、何を命中させるのかまでは気にされていないのだ。

 


 

 だから、ランターナはカバンから何かを取り出し。

 それを、矢の先端に取り付ける。

 細い円柱形の筒のようなものだ。


 そして、弓を構え、番え。


 白い鷹(ベンヌ)が、弱い火の魔術を使用する。

 それに驚いたのはプリムティスだ。

 この場には、火の現象核(オリジン)は殆ど無い筈だ。

 なのに、術を行使した。

 大気の魔素(マナ)に動きも見られなかった。


 つまり――。

 この鳥は、魔物なのだ。

 生来、産まれ持った魔核。

 それが、魔素(マナ)現象核(オリジン)の扱いを本能的に行う。

 そういうシステムを有する、魔力を扱える魔物なのだ。

 きっと、この鳥は体内に火の現象核(オリジン)を蓄えるか、生成する機能を持っている。


 ――その炎が。

 矢の先端に付けられた物体を着火させ。

 導火線の様なモノが火花を散らす。


「爆薬!? ……だから、外を望んだわけ?」


 

 プリムティスの呟きと同時に。

 撃たれた矢が、的の傍に着弾し。


 ドォン、と爆発を巻き起こした。

 その衝撃、飛び散る土砂、破片、吹き上がる炎。

 乱れ狂う風にあおられ、閃光に目を細めるプリムティス。

 

 しかし見た。

 その全ては、紛れもなく的を打った。

 的を撃ち砕いた。


 弄ばれる髪を押えつつ、プリムティスは言う。

「……なんてピーキーな……」 


 屋内の射撃場では、壁が壊れるかもしれない。

 だから、外が良いと言ったのだ、ランターナは。


 しかし、ギルド的にこれは合格の判定なのか。

 そんなプリムティスの疑問に。

 ギルド員の女性が答える。


「あの仕掛けは、ヤジリとして取り付けられたものです。……一応、ギルド内でも議論を重ねましたが、これは狙撃手(スナイパー)の資格試験ではありませんので……」



 あの爆薬のような仕掛けのヤジリ。

 あれも、アーチャーの技術の一つ。そういう判断になったのだろう。



「……なるほどね」


 しかしプリムティスは思う。

 本人も自覚の通り、これは屋外じゃないと使えない。

 そして、前衛もただでは済まないだろう。

 おいそれと使える物ではない。


 とすれば。


「アンタ、実は、体術の資格証も持ってるんじゃない?」


 そうプリムティスはランターナに問うと。


「……ランクFの、体術資格証章、でしたら……」


 やっぱりね。

 そして、やばいのだろうか、と。

 ランターナは、すこしビビっていた。


 そうして結局、約束通り引き受けることにしたプリムティスだが。

 ランターナの各ギルドでの手続きがあることもあって。

 修道院跡地が完成してからの合流ということで、合意を得たのだった。

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