試験のあと
山の空に、花火のような光と音が炸裂し。
試験の終了が告げられる。
筆記、実技、サバイバル実地。
全ての試験を終えた、シエナ、ハルハ、エルテルッテの3人は、
他の冒険者に混じり、山を降りて帰路に就いた。
修道院跡の工事現場にも、全面に『工事作業員以外立ち入り禁止』の幕が掛けられ、もう暫くかかるという事で。
ハルハとマナは、都内の邸宅で。
シエナとエルテルッテは、プリムティスの自宅で、養生を兼ねて暫く待機することになった。
とはいっても、ほぼ毎日ハルハとマナはプリムティスの家に入り浸っていたが。
そして。
皆が集まるリビングで――。
「――リプル? ……さぁ。パーティーが解散になった後は、それぞれ選出された国の都市に戻っていった筈だけど。……それからリプルについてはあまり聞かないわね」
エルテルッテの質問に、プリムティスはそう答えた。
プリムティスは、リプルと別れてから一度も会っていない。
なにせ、プリムティスが居る『アディオール中央大陸』とは、大陸が違うのだ。
『ソルガント北部大陸・ノクスレギア帝国・帝都グリムロック』――。
それが、リプルを魔王討伐の勇者として選出した故郷に当たる。
プリムティスの考えでは、そこに戻っているはずだった。
しかしパーティーが解散してから数年が経過している。
どこかに行っている可能性はゼロじゃない。
しかし、リプルは大人しい性格だった。活発に行動するタイプじゃない。
なので、プリムティスは加えて答える。
「あの娘の性格なら、まだグリムロックに居るんじゃない?」
「そうですか」
残念そうな表情に、プリムティスは問う。
「リプルに何かあった?」
「いえ……」
海底神殿で囁かれていた噂程度の事。
不確かなことは言えない。
わざわざ、一線を退きつつある元勇者の心を煩わせる事も無い。
そう考えて、エルテルッテは何も言わなかった。
その話を聞いて。
プリムティスの隣で、静かにあまーいココアを飲んでいたマナが口を挟む。
「リプルって……確かテンペスタの双、……うっ」
私服姿のドワーフが、テーブルの下ですかさず横っ腹に肘打ちを叩き込み。
マナは咽た。
なにをするんだ、と咳き込んで抗議すらいえないマナに。
プリムティスは耳打ちする。
「アンタ、バカなの!? アンタが何者かバレかねないでしょうが!」
それを見ていたハルハとシエナは怪訝な顔になる。
「どうしました? マナさま? 大丈夫ですか?」
ハルハが、駆け寄ろうとするのをマナは制し。
「大丈夫よ……」
プリムティスは言う。
「ま、あの娘も蒼玉等級の勇者よ。そう簡単にどうこうなりはしない筈よ」
「そう、ですよね」
エルテルッテは浮かない顔のままだったが。
その話はそれっきりになった。
そうして、暫くあと。
戦士ギルドからは、屈強な筋肉が。
魔術師ギルドからは、鳥の使い魔が。
それぞれ。
シエナとハルハに。
『Gランクの戦士資格証章』と、『Gランク魔術師資格証章』を持って来た。
無論、居候中のエルテルッテの分の戦士資格証章もある。
「良かったわね。――服の襟にでも常に付けておきなさい。アンタたちの努力と実力を証明してくれる、大事な証なんだから」
「はい!」
三者三様の返事。
そしてさらに後日。
冒険者ギルドで、資格証を提示し。
晴れて三人は、鉄等級の冒険者となった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「やっぱり行くの?」
「はい。――噂が確かなのか、確かめてきます。私は、そのために冒険者になりましたから」
冒険者ギルドの前。
そこで、エルテルッテは皆に別れを告げた。
北部大陸の、グリムロックに行くと言って。
そしてマナも、店番に置いたままのミラが気にかかるから魔の森へ帰ると言って。
街中にお土産のお菓子を買いに別れ。
ギルドの前には、シエナ、ハルハ、プリムティスだけが残された。
「行っちゃったわね」
そんな独白の全身革装備姿。
その背中に。
「――ちょっと良いかね?」
声が掛けられ、プリムティスが振り返ると。
ギルド長が立っていた。
「……この前、とびきりの問題児を紹介してくれと言って居ただろ? 良いのが見つかったんだがね?」
そのギルド長の顔は、意地悪なにやけ顔で。
プリムティスは、なんだか面倒くさい気分になるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
章としては一段落になります。
次章も投稿を続けますので、応援などよろしくお願いします。
また、エルテルッテの今後の話は、スピンオフのような感じで、カクヨムのみに掲載していきます。
気になりましたら、カクヨムにお越しください。
ありがとうございました。




