ノーサバイバルノーライフ
――エルフであるシエナは、山の暮らしもすぐに慣れた。
登攀も、渡河も、山の中で食材を探すことも。
そして、火をおこし、調理をし、野営の陣地を設営することも。
シエナにはお手の物だった。
問題は、ハルハだ。
プリムティスは、魔法は教えてあげられない。
けど、他の事であれば幾らでも可能だった。
「まずは、ロープの使い方からよ。結び方が幾つかあるから覚えて。あと、フックをうまくひっかけられるようになれば、渡河にも利用できる時もあるわ」
説明しながら、プリムティスは実演する。
振り回す遠心力を使って、フックを木の枝に引っ掛ける。
その横で、シエナも同じように実行し、容易く成功させる。
ハルハは、
「――なんで、私が、こんな肉体労働を……!」
見よう見まねでやってみるが、上手くはいかなかった。
「冒険者ってのはね、大半は道なんてないとこを行かないといけないのよ。崖は登るし、河は渡るし、お腹がすいたら現地の獣や魚や山菜を調達する。そのための技術と知識は、必須でしょ?」
「それはそうですけど。魔術で何とかしたらいいじゃないですか」
「まぁね。出来るならそれでもいい。でも、魔術しかできない冒険者は、魔術が使えない状況になったら、何も出来なくなるわよ?」
「ううっ!」
小言を言われながら、文句を言いながら。
ハルハは、冒険するための技術の練習を続けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
次は、食料の調達だ。
これもシエナは魔術禁止が解けていないので、携帯している短弓と手作りの矢で簡単に獣や魚を調達できる。
しかしハルハはそうはいかない。
野営地の見張りをシエナに任せ。
プリムティスはハルハと食料を狩りに出る。
「さて、あそこの狼が見える? 今日の夕食にしたいところなんだけど……」
「解りました」
ハルハが、魔力を練ろうとする。
「ストップ。アンタの魔弾じゃ、木っ端微塵になるわよ?」
「うっ……」
本当の駆け出しくらいの魔術師ならば、丁度いい威力だったかもしれないが。
すでに、ハルハの術の威力はその領域ではない。
魔法陣型なので、臨機応変な調整も難しい。
さて、どうするのか。
プリムティスは手を貸さない。
たとえ、すがるような目で見られてもだ。
プリムティスは首を振る。
「試験に私はついていけない。私には頼れないわよ」
本当はとても簡単な方法があるのだ。
けど、ハルハはそのことに気が付かないだろう。
「……あの、狼じゃなくても良いですか」
「例えば?」
「キノコ、とか……。木の実……とか」
まぁ、食料が調達できれば何でも構わないだろう。
そう思い、プリムティスは「良いわよ」と返事をする。
ハルハは、シエナやプリムティスが採取していたのを見て、聞いて覚えていたらしい。
食べられるキノコや山菜や木の実であれば、調達することができるようだ。
身体を使った技術は、なかなかうまくいかないが。
頭脳を使った知識は、すぐに出来るらしい。
プリムティスの期待とは少し違ったが。
一応、食べ物さえ調達できれば、なんとかなるだろう。
まぁ、しかし。
起こした火を囲んでの夜の食事の時。
シエナは、料理が盛られた皿を見て固まった。
「こ……、これは……何?」
「ただのソテーですけど?」
「ソ、ソテー……? ……自然への冒涜では……?」
そんなハルハが作った料理は死ぬほど不味かった。
採取した食材は、何一つ生かされていなかった。
「……料理もちょっとづつ練習したほうが良いわね」
プリムティスは、そんな二人に苦笑していた。




