黒幕は?
「なにこれ……」
プリムティスが戻ると、修道院跡地にはたくさんの資材が積み上がっていた。
切り出された木材、パイプ、セラミック素材。
そして、幾人もの職人が出入りし、雇われた土木作業専属の魔術師が、地面を成形し直したりしていた。
作業の行われていない片隅で素振りを行っていたシエナが、戻ってきたプリムティスに気づき、走ってくる。
続いてハルハも。
プリムティスは2人に問う。
「どうしたの、これ?」
「さぁ、急にいっぱい人が入って来て……」
プリムティスは、まだこの土地に何かを建てる契約は結んでいない。
街の職人ギルドに、こういう計画を立てている、という話しかしていないのだ。
確かに、欲しい備品や、欲しい設備、手書きの簡単な見取り図のようなものは渡した。
けど、まだ二人しか育成もしておらず、まだ上手くいくかも定かではない。
まだお試し期間、やってみよう、という段階なのに。
この規模は……。
「何、まるで学校でも立てようってわけ?」
プリムティスは、誰の仕業か少し思い当たる。
むしろ、その人しかありえない。
「そうか……。リンスレット……あの娘の仕業ね……」
まだこじんまりやるつもりが。
早速規模が倍々に膨らんでしまった。
……口は禍の元か……。
少し後悔していると、ハルハが尋ねる。
「訓練、どうします?」
確かに、今修道院の跡地は工事が始まってしまい、組み手や模擬戦闘をするには手狭になってしまった。
「そうね……」
プリムティスは考える。
そして思いつく。
「ねえ、あんた達、野営したことある?」
ハルハは首を振り、シエナは聞き返す。
「野営、って外で寝泊まりするってこと?」
「そう。サバイバル試験は、他の受験者と協力することも承認されているけど、基本的には一人でやることになる。野営用のテントとか、必要な備品は揃えておかないといけないのよ」
「つまり野宿でしょ? 野宿は旅の途中でやったことあるけど……テントは持ってないね」
ハルハは驚いて。
「ええ、何? もしかしてエルフはそのまま寝るんですか?」
「うん。簡単な敷物を敷いてね」
そこで、プリムティスは思い出す。
魔王討伐パーティーにもエルフの弓兵が居た。
その娘は、目が良く、夜中でも目が見える練気を習得しており、気配に敏感だったため、よく夜番を担当していた。
交代の時間になっても、皆がテントで眠る中、木の上や、草の上や、雨の日でさえ、木の幹にもたれ掛かって寝ていたことがある。生い茂る枝葉で多少マシとはいえ、殆どずぶぬれになっていた。
だが、気にしている素振りも無かった。
おかしな奴だと思っていたけど。
「……エルフの習性だったのね」
まぁでも、今の時代ならばコンパクトになる一人用のテントくらい幾らでも売っているはずだ。
あとは、登攀用のロープ、フック、ナイフ、松明かランタン、小型の火起こし器具、調味料など、有って損はない物は幾らでもある。
「何か考えがおありなのですか、プリムさま」
「ええ、ハルハ。今日はこのまま、野営用の道具を買いに行って、明日から東の山――は、よく試験会場になっているから――もうすこし北の山地で少し野営をしてみましょ。そこで訓練も続ければいいし。いきなり山に放り出されて3日間生きろって言われても、困るじゃない?」
「確かに、わたしは1日たりとも生きていけないです。さすがプリムさまです」
それじゃ困るのよ、ハルハ。
――というわけで。
「じゃあ、そうしましょ。……ちょっとその辺のやつにいつまでこんな状態か聞いてくるわ」
そうして、3人は一時的に、山暮らしを始めるのだった。




