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129 リトのたんこぶと古代魔法

「お~い、クレハ。ちょっと手伝ってくれないか~」

「は~い。いまいくよ~」

 ぱたぱたぱた…。クレハちゃん登場!っと。

「何時も貴方(リト)のお側におりますクレハちゃんで~す」


ぺちっ


 あれれ? なんで? どうして? 指に弾かれなくちゃいけないのっよ。


「なんでって、「ズット背中でフワフワしてますよ~」みたいな雰囲気で言うからだよ。普通に返事だけで良いんだからな。まったく、誰に似たんだか」

「鏡が欲しいの?」

「そ・う・い・う・ところだよ。…まぁ冗談はこの位で良いだろう。それで手伝って欲しいのは、アレを見てくれ」

「なになに?高くて良く視えないわ」

「題名が書かれた名札というか短冊がぶら下がっているのあるだろ。本の劣化と比較して結構新しくて気になったんだ。どんな本だと思う?」


「ん~…」

 と、丸めた指を望遠鏡みたいに右目に当てて覗いてみたけど、ちょっと高すぎるわね。

「駄目よ。全然視えないの。リトは分かっているの?」

「比較的に新しくても数十年は経ってる様だから、色褪(いろあ)せて詠みにくいけど、『古い魔法』っぽい感じに思ってる。願望入ってるかも知れないけど」

「成る程ね。あの本を取り出したいけど、届かないのね。ほんと、チビは大変だね~」

「クレハの方が、ズット、モット、おちびちゃんです~」

「はいはい。(くちばし)みたいにしないの。 そうねぇ、先ずは肩車から試してみましょうか」



「ん~しょ。よ~いしょっと。やっと手が届いたけど、引き抜けなかったらごめんね」

「そうか。分かったよ。期待しないで待ってるから、頑張ってくれると嬉しいな」

「なんてチグハグな事を言ってるのよ」

「じゃぁ、怪我しない程度に頑張って」

「はいはい。期待しないで待っててね~」


 肩車で、本の下部にやっと届いたって状況なのよね。

 リトの肩に乗って立ち上がれば充分に手が届くけど、片手は本棚でバランスを取る支えになるから、片手で取り出す事になるんだけど…

 この小さい手では目的の本を(つか)むには小さすぎるの。

 両手だと、間違いなくバランスを崩して落ちてしまうでしょうね。容易に想像できてしまって、脚に力が入らないわ。

 両脚をしっかり支えられた、この状態で頑張るしか無いわね。


「ん~、ん~んしょ。もう少し、もう少しで引き抜けそう………。 えいっ!」


 スポ~ン!

 って感じに本を引き抜く事が出来たの! 出来たんだけど…。

 勢いが付いてしまっって、本を真上に放り投げてしまっての。

 わたしは、リトの首根っこを引っこ抜いてしまいそな程、後ろにのぞけってしまったわ。


「あー!!」


 思わず悲鳴、と云うよりは奇声をあげてしまったの。自分の背丈より高い所から頭から落ちてしまうなんて最悪だわ! 

 そう、熟れたスイカを落としてしまったイメージが浮かんでしまい、目の前が真っ暗になってしまった。そんな気がした瞬間に、


 ガクン!

 と、体の方が先に落ち…た? あれ? 普通に起き上がっている?

 え? 何が起こったの?

 訳が分からず視線を降ろすと、リトが前屈みに倒れ込んでいたの。それに尻餅を突いてしまったみたい。

 リトの後頭部を見て、状況は直ぐに分かったわ。

 わたしよりも先に『落ちる』事でクッションの代わりになろうとしたのよ。

 腰と首に相当な負担を受けたでしょうに、わたしの事をかばってくれたのよ。


 思わず胸熱になってしまったじゃないの!

 照れと恥ずかしさと嬉しさで、冷や汗がお湯になってしまいそうな程、顔が熱くなっていたわ。

 本当は直ぐにリトの心配をしなくては駄目だと分かっていたけど、それ以上に『守られた』嬉しさの余韻に浸りながら、つむじ辺りを眺めてしまったの。

 自分でも恥ずかしいと思いつつ、ぽや~ってしていたら、突然に目の前から


 ぼこん!


 音が鳴り響いた。

 そう、放り投げた本がリトの頭に落ちちゃったのよ。

 不幸中の幸いか、表紙面だったのでホッとしたけど、背か角だったらと思うとゾットするわ。


「リト、大丈夫…」

「あっ!痛っ…」

「あ、ごめん」


 恐る恐る手を触れたら、見事にたんこぶになっていたわ。うわ~痛そう。痛そうで可哀想。

 わたしがもっともっと注意していればこんな事にならなかったのに、ごめんなさい。


「い…、痛いの痛いの飛んで行け~」

 申し訳なさからか、なんとかしてあげたいと思ってからか、無意識に祈りと共に頭を撫でていたの。


「プー、ハハハハ…」

「な、なによ。笑い出して。ビックリしたじゃないの」

「いや~、素の話し方でも、子供っぽい言い方するんだな~って思ってさ。なんか可愛いなって思ってさ。ハハハッ」

「止めてよ。恥ずかしいじゃないの。リトのバカ!」

「うん。いつも通りのクレハだ。もしかしたら本棚に頭を打ち付けたのかと思ったよ。無事で良かった」


 顔の火照りは増し、体中をくすぐられる様なもどかしさを感じ、照れ隠しに頭を叩こうと手をかざしてしまったけど、たんこぶ、痛いよね。ゆっくりと手を下ろしたの。


「うん。ありがとう。心配してくれて」

「なんだよ。急にしおらしくなって」

「そ、そんなんじゃ無いわよ」

「うんうん。大丈夫で安心した。元気なら降りてくれないかな。流石にこの体勢は辛いんだ」

「あ、ご、ごめんなさい。直ぐ降りるから」


 リトが震えていたのは、痛いから、辛かったからかしら。

 でも、横顔からのぞけた口端が何となく嬉しそうに見えたの。なんだろう? わたしが何時もと違って見えたからかしら? なんか笑われているようで恥ずかしいわ。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 あの後直ぐに掃き溜めた埃を館の外へ出して、部屋の藁布団で横になる事にしたの。

 そうよ。リトの体中が痛いそうだから、半ば無理やりに部屋へと送ったのよ。

 声は出さなかったけど、口が辛いって言っていたから。

 無理は駄目よ! この後に夕食の仕度が待っているんだもん。体は(いたわら)らなくっちゃね。



 リトはうつ伏せになって本をめくっているわ。「へ~」とか「なるほど~」とか、呟きながら。

 わたしはそんなリトの腰を撫でているの。

 だって、わたしがバランスを崩してしまって、リトの背中に落ちてしまったから。尻餅と一緒に腰を痛めてしまったから。

 リトは口にはしないけど、部屋に戻る時の歩みに力が無かったの。

 擦って治る訳じゃ無いけど、痛みがやわらぐようにと祈りながら。


「痛たたたた!」

「あ、ごめん。痛い所に触れちゃった? 大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ。心配してくれているって分かってるから。私こそ大きな声を出してごめんな。でも、ありがとう。だいぶ楽になってきたよ」


 嘘言わないでよ。楽になったら叫ばないでしょ。無理、していなきゃ良いけど…


「あ~、あれあれ、何処まで読んだっけ。話しの前後が分からないや。もう一度この辺を読み直さなくっちゃ」

「ごめんなさい。わたし…、余計な事しちゃったかな…」

「気にしなくって大丈夫だって。でもさ、物語というか読書を遮るのって『読書の腰を揉む』って言うのかな」

 え?突然、何を言っているの?

 って思ったけど、言いたい事は分かったわ。良くも悪くも同じ人生歩んだからかしらね。

「もしかして『話の腰を折る』って言いたい訳なのね。そんな冗談言ってると、本当に折っちゃうかもよ」

「ははは。それは困るな~」

 冗談の意図を直ぐに(かい)した事が嬉しかったのかな。痛さを忘れたみたいに笑うのね。



「それで、何か面白い記事でも見つかったの?」

「面白い? そうだね、興味深いのは、どうして『古代魔法』とか『ロストマジック』『禁断魔法』とか言われるの理由かな」

「『禁断魔法』って、それ、やばいんじゃないの?!」

「今使っている火とか風の魔法だって、昔からあるけど『古代魔法』って呼ばないよな」

「…そうね、呼ばないわね」

「この本は、そういう稀少な魔法の研究書って所だな。魔法を使う方法は書かれていないんだ。それで例えば『空間魔法』と云うのかな? 『収納魔法』が書いてあったんだ」

「『空間収納魔法』? それって『アイテムボックス』の事! 異世界の物語じゃ『共通言語』と同じく鉄板な魔法じゃないの。使えるの? 使い方書いてあるの?!」

「待った。そんなに興奮するなよ。結論から言えば、『使いモノに成らない』で良いかと思う。常に収納空間を意識しなくては駄目らしい」

「ず~っと意識するのが必要って、それじゃ、忘れちゃったらどうなるの?」

「収納した物を忘れる。つまり消えて無くなるって事だな。使えれば便利かも知れないけど、ハイリスクって訳さ」


「そうそう『アイテムボックス』って言えば、ナーガが与えられた『神様の祝福』の1つじゃないの。使ったのを見た事無いけど、何か理由があるのかな」

「使えるはずなんだよな。それで、切っ掛けになる何かが有ればと思ったけど、サッパリだよ」

「そっか~。残念ね。…でも、物を捨てるのには使えたりしない。 例えば、オマルとか」

「無理だよ。方法までは書いていないから」

「そっか~。使えたら便利なのにね」

「まぁ、仕方が無いと諦めよう」


「他には、何があるの」

「他に…か。同じ『空間魔法』で『空間移動魔法』とか『瞬間移動魔法』『転移魔法』が有ったけど」

「『転移魔法』ですって。使えたら凄いじゃない! …って、この話の流れだと、やっぱり無理なのかしら?」

「ご明察。難しくは無いらしいけどハイリスクなんだよ」

「ハイリスクって言うと?」

「移動する先の場所。座標って言って良いのかな。その場所をしっかり意識出来ないと駄目なんだ。一度行った事が有るからって、気軽に使えない。もしかしたら崖崩れで埋もれているか、空中に放り出されるか。あるいはダム湖になっているかもしれないし…」

「あ~、なるほど~。『ツチノナカイニル』とか『ミズノナカイニル』みたいに成っちゃう訳なんだ」

「そう言う事。それに、コントロールがとても難しい」

「コントロールって何かしら。例えば?」

「石とか弓矢を的に命中させる精度が必要って所かな。

 ゴルフなら、どんなコースでもグリーンへワンオンさせる程に、

 野球やサッカーなら、9マスのパネル抜きのゲームで、全てのパネルに当てる程に、

 それ程に、魔力と精度が求められるんだ。失敗したら言わずもがな」

「うっわ~。それって、無理って言っているのと同じじゃ無い。 …って、あれ? 難しく無いって言わなかった?」

「言ったよ。魔方円同士を繋いで、転移魔方陣というのは有るらしいんだ」

「場所が決まっているなら可能なのね。 でも、見た事無いわよ」

「この国では無いけど、他の国には存在しているんじゃ無いかな。それとも夢物語だったりして」



 結局、魔法の使い方は書いて無くて、本を書いた人の見聞録の様なモノだった訳だったのよ」

 危険を冒してまで期待して手に入れた分、ガッカリな気持ちは強いわ。

 ただ、リトの見解としては「使い勝手が悪いとか、難しくてハイリスクな理由で、これらの『古代魔法』を身につけようとする人は居なくなった」という結果、『失われた魔法(ロストマジック)』になったという、身も蓋も無い話しで終わったわ。

 リトなりに満足しているみたいだから、結果的に満足したと、締めくくった方が良いかしらね



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして、腰の痛みは落ち着いた様で、夕食の準備と片付け当番は何とか済んだけど「お尻は未だ痛い」と云うので、今晩は早めに休養というか、寝る事にしたのよ。


「…そういえば、あの著者・

  「アイテムボックス魔法の使い手に会った。私は嬉しく無った。私もその魔法が使いたいと

   願っているのでだ。この御方に弟子入りできれば、夢がなかうのではなかろうか」

 と云う事があったらしい」

「良かったじゃ無い。沢山万で、沢山度録して、使える様になったんでしょ」

「それが…、

  「僕達は使えるけど、学び方をしならないんだ。悪けど」

  「ちょっとまってくれ。法を知らず字何故使えるのだ?」

  「ただ何となく、使えるって感じなんでね。教え方なんて知らないのさ」

 そんな結果で、著者は相当ガッカリしたそうだよ」

「もしかして疑ってるの? アイテムボックス使えるのが異世界の人かも知れないって事」

「使えるも何も、今は仮定だよ。他の国なら教育する施設があるかも知れないだろうさ」



「…ただ…、クレハの言う通り、間接的だけど、本を通して『神様の祝福』を受けてた『迷子』…

 、はこの国の呼びかただな。

 異世界に転移・転生してきた者がいる。

 今回の事は書籍を通してだけど、『迷子』は居るんだよ。って気持ちがと疑問が湧き上がるんだ」


『……ふーん。エンカウント率高そうね。でも気のせいじゃ無いの? 世界は広いわよ。特異に好きな事は人それどれなんだから。もしかしたら好きが講じて凄い能力身につけたんじゃ無いかしらね」


「そうだね、今の所は確証が無いから。偶然って異にしようか。著者も冒険の途中ですれ違っているって感じだったし」


 

「納得した。ならもう大丈夫よ。は・や・く~今はゆっくり休みなさいよ。とっても疲れているんでしょ」

「それもそうだね。では、お休みクレハ」

「おやすみ、だよ。リト」


 変な謎を残されると、逆に気になるけど、今日は早くねしょうね。

 そして、早く良くなってね、リト。



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