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107 魔法の練習をしよう1

「ナーガが魔法を使えるようになれるように、色々試してみようよ」

 そう言って『休日の日』と決めてた今日、西の塀門の空き地に練習用の小道具を揃えてやって来た。



 姫様から『お手伝い』というよりも勅命な一件から、ナーガは落ち込んでいた。

 無理に気丈な振りをしてはいるのがとても痛々しく見えた。

 しかも同じ部屋で生活してるのだから、明るく振る舞う程に不憫に感じて辛い。

 きっと、「冒険者になりたいけど、魔法が使えないから無理なのかもしれない」と、こんな気持ちでいるのだろう。

 正直言ってジメジメとした湿った雰囲気で居心地が悪いのは嫌だから、ナーガを元気づける方法を色々と考えてみたが、結局は魔法が使えなければ進展は無いだろう。という考えに至ったのだ。

 そんな訳で、試行錯誤に考えた小道具を揃えて空き地にやって来た。

 失敗して街中で暴発させる訳にはいかないからな。



「これから何をするんだい」

「そうだね、先ずは僕の魔法を見てよ」

 人差し指を立てて

「火の精霊よ、呼びかけに応じ、指先に集え!」

 と唱えて、指先がロウソクの灯火程度に輝いた。

「と、まぁ、これが僕の魔法なんだけど、呪文の通り、火の精霊さんに集まってもらって、力を貸して貰ってるんだよ」

「それで? 自慢する為にここまで来たって訳かよ」

「違う! 違うよ。僕は弱いから精霊さんに助けて貰ってるんだよ。だけどね、ナーガは前に教えてくれたよね。神様から『魔法の祝福』を授かったんだって。ナーガは精霊さんの助けが要らない位に大きな力を持っているんだよ。だから精霊さんが集まらないんだと思うんだ」

「何時も何時もだけど、リトの言葉は難しくて何が言いたいのか分からないよ」


 困った。どうやって例えて教えようか?

 言葉を選んでる時に、クレハが説明を始めた。

「あのね~、ナーガはちからもちの人が、にもつをはこぶのを、お手伝い、しようと、おもう?」

「きっと、手伝わないと思うよ」

「どして~? どうしてお手伝い、しないの?」

「だって、子供の俺じゃ、逆に邪魔になっちゃうんじゃないかな」

「そう。そう、だよ~。だからね~、ナーガが魔法をつかいたいっておもっても、精霊さんはじゃまになるって、おもってるんだよ。だと~おもうよ」

「クレハは、『俺は力持ち』って思ってるの」

「うん。そ~だよ。すっごいちからもち、だと、おもうよ~」

「だってさ。リトはどう思ってるんだい」


「・・・ん、ああ、凄く力があるって思ってる」

 クレハの謎かけのお陰で、ナーガの魔力についての仮説を伝える切っ掛けができた。

 小道具の鞄から竹筒の水筒を持ちだして、自分の手の平に少し水を垂らした。

「例えば、というか、魔力をこの水としてイメージして欲しいんだ。僕の魔力は片手に収まる程しかないんだ。だから、魔法を使う時は、この少ない量を少しずつ使うんだ。少しずつ使う時に、精霊さんに集まって貰う。こんな感じかな~と思ってる」

 こう言いながら手の平から一滴々々と雫を垂らした。

「だけど思うんだ。『魔法の祝福』を受けたナーガの魔力はこの位大きいんだよ。これだけの量が体の中に入ってると思うんだ」

 今度は竹筒の水筒を揺らして説明をしてみる。

「ん~・・・。水の量がが魔力の量というのは分かったけど、水筒の水が体の中にあるって言うのが今一分からないんだ」

 もちろん『魔力が体の外にある』とイメージが湧かないだろうな。予想はしてた。それで、これからの説明だけど、汚いというか行儀悪いけど実演するしか無いよな。

 クレハの肩を軽く叩いてから

「これからの説明はクレハに任すから、よく聞いていてよね」

「は~い。それじゃ、ここからあたしが言うよ」

「うん、わかった」



 私は少々躊躇いながらも、水筒の水を口いっぱいに含んだ。

「あのね~、これだと、水が、魔法が、からだのなかに、はいってるよでしょ~」

「あ、うん。そうだね、口の中・・・じゃなくって、体内に魔力が満たされた。っでいいんだよな」

「そうだよ~。それでね、まえに、ナーガが魔法をつかおうとしたときは、魔力のだしかたがわからなかったから、こうなったんだよ~よ、おもうよ」

 クレハが言い終わり、私は体を軽く叩かれ合図を受け取ってから、口内の水を霧吹きの様に『ブワーッ』って吐き出した。

「ふは~・・・。息苦しかった~。・・・と、こんな感じだったんだと思うんだ」

「うわっ汚な! じゃなくって、それってどういう事?」

「あのね~、ただただ魔力を、はきだしただけ、なんだよ~」

「え~と、つまりだよ。魔法を使う目的がハッキリしてなかったから、爆発したという感じだと思うんだ。例えば、あの石を見ていてよ」

 もう一度、水を含んで、今度は指差した石に向けて、ピューって吹き出した。

「魔力をあの石に当てる。って目的があれば、こんな感じになるんだよ。暑い日に、穴を開けた竹筒で水を飛ばして遊んだのを思い出して欲しいんだ。ナーガも同じ様にやってみてよ」

 そう言って水筒を手渡した。問題なく出来たので「ナーガって、ねらうの~、とってもじょうずだね~」とちょっと大げさに褒められて嬉しそうだ。

 ここで水筒は空になったので、用意してきたもう1本を取り出して「今度は口いっぱいに含んで、同じく、あの石を狙ってみてよ」と手渡した。

 ナーガは自信満々に、今度は沢山当てるぞっ! て力を込めた。



『ブバハッッ!!』

 勢いがつきすぎて、暴発、と言って良いだろう。顔が水浸しになってしまったので、ボロ布で顔を拭ってあげた。

「どうかな。水が、魔力沢山有ると扱うの難しいって分かったかな」

「ゲホッゲホッ。は~ふ~・・・。ビックリした~。2人は大丈夫だった?」

「うん。大丈夫だよ」

 もちろん、こうなるだろって、予想してたから。

「それで、ナーガは沢山ある魔力を少しずつ出すイメージの練習が必要なんだと思うんだ」

「イメージの練習って、どうやったらいいんだよ」

「大丈夫。僕に案があるんだ」

 今度は『麦わら』のストローを取り出した。


 以前に『お手伝い』した時に夫人がオシャレに(わら)というか『麦わら』をストローにして飲み物を口にしていたのを見て知ったのだ。

 ストローというとプラスチックな細い筒をイメージしてしまうが、元々は麦の穂を取った麦稈(ばっかん)という、言ってしまえば『麦わら』の事だ。

 麦わら(ストロー)のストローと呼ぶと、頭痛が痛い感じがして微妙な気分だけど、近代社会的な表現を考えると、ここでは『麦わらのストロー』と呼んだ方が良いだろう。と、思う。


「まぁ、先ずはやって見せるから」

 今度はクレハが、口に含んだ水を『麦わらのストロー』から吐き出した。

 吹き出す力が弱いから、ヨダレっぽい印象があるのは、まぁ仕方が無いだろう。

「こんな感じで、初めの内はそーっと水を吹きき出すんだ。絶対に強く吹いたら駄目だよ!強く吹くと・・・」

 今度は私がやって見せた。

 勢いの為に、(もろ)い『麦わらのストロー』は直ぐに亀裂が入り、口元から割れて、吹き出した水と一緒に飛んでいってしまった。

 当然、水浸しになった顔を拭いながら、

「・・・って、なっちゃうから、駄目だよ!」



「あれ?どうしたの? 考え込んじゃって?」

「魔力を少しずつ『出す』練習が必要だって分かったけど、だけど・・・水を吹き出して魔力が使えるようになるなんて、全く思えないんだ」

 ナーガの疑問。

 まぁ、そうだろうな。魔力って『実際に使わないと』分からないもんな。見えないモノをどうやってイメージトレーニングしたら良いのか、ずっと考えていた結果、今の『麦わらのストロー』を使う方法を考えた訳なんだけど。

 そう、水なら目に見えるからイメージい易いのだから。


「魔力の流れって見えないから、イメージ出来ないでしょ。でも、水なら見えるからイメージし易いでしょ。この練習ができたら、今度は同じように、体の中にある魔力を指先から吹き出すイメージの練習をすれば良いと思うんだ。どうかな?」

「ん~・・・、本当に使えるようになれるのかな?」

「とりあえずは挑戦してみようよ。水を吹き出すだけなら、院の中でも練習できるでしょ。魔法の練習の度に遠いこの西塀門まで来るのは大変だからさ」

「そうだよ~。まずは、やってみようよ~。あたしもいっしょに、れんしゅうするから、だいじょうぶだから~」

「そうそう。みんなでやれば恥ずかしくないって」

「ん~・・・。そうだな。折角考えてくれたんだから、少しのは試してみようか」

「そうだよ~。いっしょに、れんしゅう、だからね~」



 ま、練習の段階や方法は色々と考えているから、その時折に方向性を教えてあげれば良いか。

 それよりも、最初に「僕達は魔力が弱いから精霊に手伝って貰ってる」とは言ったが、魔力チートなナーガの場合は『精霊を使役』出来てしまう心配がある。

 使役出来てしまったら、その威力がどうなるか想像がつかない。

 今は『精霊の助け」は無いんだと考えるように誘導しておかないといけないな。注意して見てあげなくては。

 チート能力者相手には心配事が尽きなくて大変だから、早く制御出来るようにしてあげようと、改めて決意を固めたのだった。




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