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悪魔契約に縛られた異世界生活 第2幕(異世界生活編)  作者: 雨宮 白虎
第2章 トキザミの国(入国編)
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048 生活の規則とかマナーとか

 窓の戸板の隙間から、薄青い光が虚ろう様に差し始めた頃に目が覚めた。

 戸を開けると空が青みを帯び(しら)み始め、光芒が天を貫く様に広がり始めていた。

 ザッザザッと土が跳ねる音が響き渡っていたと思うと、少年達が何かを抱えながら捜し物をして駆け回っていた。

 そんな騒がしい少年達から避ける様に、放し飼いの鶏はケコッッコーと鳴きながら、ふくよかな体を浮かせようと必死に翼をバタつかせている。


 ちゃんと早起き出来て良かったと、光芒の輝きが増す空を見上げながら目を擦る。

 藁布団のチクチク感が減っていたおかげも有り、しっかりと眠れた様だった。まぁ暗くなるのが早かったので、その分早寝したのもあるのだが。

 布団の寝心地が良かったのは、昨日、アリアが布団を直す時に尖った所を整えてくれたからだろう。

 彼女にとっては当然の役目だったのかもしれない。しかし、私としては久しぶりに気持ちよく朝を迎えられたから、このお礼を何時かその内に彼女へ伝えたい。そう思った。


「さっむ~い~」

 クレハは悲鳴に似た声を上げて布団の中に潜り込んでしまった。

 朝の冷たい風がクレハの首に絡みついてしまったのだろう。日を遮らない程度に隙間を残して戸を閉める。「おはようクレハ。起きられる?」

「あ~、おはよう。リト」

 起き上がり早々い抱きついてきた。温かい。

 朝の冷えた風に凍えてしまっていて、そのままクレハを抱き返した。懐炉の代わりにしてしまって申し訳ないが、体が温もりをお求めて思う様に動かない。

「つめたい」

「ご、ごめん。すぐに離れるから」

「いいよ。このままで。からだがひえたままはどくだよ」

 そうして、暫く抱き合ったままでいた。

 普通ならここで「あたたかい」とか「うれしいよ」とか会話するのだろうけど・・・。

 雪山で遭難したら、こうやって凍えるのを耐えるのだろうか? とか考えていた。本当に悪い癖だな。連想ゲームみたいに無駄で余計な事を考えるのは・・・。



 そうだ、早起きしたのは食事の配膳係を頼まれていたからだった。着の身着のままで厨房へと向かう。

 もっとも、着た切り雀になっているのは、今着ている一張羅しか渡されていないのが理由だ。継ぎ接ぎなのはそれだけ衣服が貴重って事だろう。

 できれば普段着とは別に寝間着が欲しい所だけど、贅沢な事を言える立場じゃないし・・・当分はお任せかな?

 そして厨房に辿り着くとアリアと修道女(シスター)の・・・って誰?

 昨日、礼拝堂で先生していた方だ。名前は、シスター・レミアから教えて貰ったよな? え~と・・・。と、必死に記憶を辿っている所で、

「テレサー。はい、これ」

「テレサー。ボクも~」

「ありがと・・・。もう、・・・の姿の時、シスター・・・呼びなさいって・・・」

 先程庭を駆け回っていた少年達がやって来て、白い球を手渡して去って行った。

 そうか、少年達は卵を集めていたのか。

 それから、この方の名前はテレサか。良いタイミングで来てくれてありがとう、少年達よ。

「おはよう。シスター・テレサ。アリア」

「おはよ、テレサ、アリア」

「おはよう。リトとクレハ」

 挨拶を返したシスター・テレサは、修道服にシンプルなエプロンという、とてもシュールな格好をしていた。ちょっと違和感が・・・。

「おはよう。リト・・・、クレハちゃん。準備、できてる・・・」

 アリアが手をかざした先にはワゴン2台に食器と、鍋にパンが準備されていた。

 私達が食器の、アリアが食材のワゴンを押して礼拝堂へ向かった。



 食事も済み、片付けが終わった頃には、少年達は畑作業、少女達は洗濯という感じで受け持っている仕事をこなしていた。

 私達はというと、シスター・レミアから、部屋の掃除は各自で行うのがルールだからと、掃除道具の場所や雑巾掛けとか、要するに身の回りの掃除の方法を教わった。

 前の世界では汚部屋の住人だった私にとって、藁布団しか無いこの部屋を掃除する必要があるのか分からない。昨日、アリアが綺麗にしてくれたから尚更だ。

 通販の段ボールが山積みになってる訳でも、古本が積み上がってる訳でもないので、埃が気になった辺りで掃除する程度で良いだろう。部屋の管理は各自でという事は、裏返せば掃除しなくても叱られる事はそうそうに無いだろうって事だ。

 当然、おまるは毎朝掃除するのは必須だろうけど。



 昨日と同じく、木で木を叩く音が響き始めた頃。

 開放したままの扉をコンコンとノックして、部屋の前でアリアが何かを抱えて待っていた。掃除の邪魔をしない為・・・という訳では無いらしい。だって、私達は掃除が終わったつもりになって、くつろいでいたのだから。

 推測だけど、許可を得るまで入ってはいけない、というマナーがあるのだと思う。

「アリア。何?」

「アリア、なに?」

 そう言って詰め寄ると、

「リト、クレハちゃん。はい、これ」

 アリアから見覚えのある衣類を手渡された。昨日預けたお仕着せ衣装が洗い終わって帰ってきたのだ。しっかり乾いているのに驚いたが、気候によるものか、それとも、そういう生活魔法でもあるのだろうか?

 魔法があるなら色々と教えて欲しい所だけど・・・、その前に言葉だよな。

「ありがとう」

「ありがおう」

「どういたしまして」

 アリアが微笑み返してくれるが、会話続かない。言葉が分からないって辛い・・・。


 姿が見えなくなるまで、手を振り見送ってから、お仕着せ衣装を広げて見た。

 着替えにちょうど良いかも・・・と思った。

 しかし、今来ている服や皆の姿と比べると、お仕着せ衣装は継ぎ接ぎも擦れも無くてとても綺麗だ。綺麗過ぎた。

 コレ着て生活したら浮きそうだ。

 どれくらい浮くかというと、現代社会で喩えれば、結婚式場へ招待されたようなドレスを日常でも纏っている位に、違和感がある。

 寝間着ならどうだろうか? と考えたけど、ヒラついたエブロンやズボンの吊りバンドが邪魔だ。何より着替え難い。

 考察の結果、例のガラケーと一緒に封印する事にした。



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