046 敷地の案内と反省会
シスター・レミアに連れられて・・・え~と、宿舎と呼ぶのかな?
そこから外に出て、簡単に敷地の間取りを教えてもらった。
もちろんチートアイテムと呼んでいいのか微妙だけど、フューチャーフォンっていうか、ガラケーが入った鞄は忘れず携えた。
大雑把だけど、
・道路が南側。
・南西には時計塔がある礼拝堂。
・北西に図書館。
・礼拝堂と図書館に間に個室の宿舎があって廊下で繋がっている。
・中央の北、図書館の東には大部屋という大体、4人部屋か6人部屋の宿舎。
・ほぼ中央に掘り井戸があって、南東に畑が広がっていて、北東角に鶏舎・・・と肥溜め?
と、まぁこんな感じだろう。少し細かく言えば、個室は修道院の人達で、大部屋が孤児達の部屋となるらしい。
そういえば、先程まで剣の稽古をしていた人達が畑仕事をしている。一目瞭然ではあるが、ここでの生活をもっと教えて貰える様に、あえて聞いてみた。
「みんな、何、してるの?」
「中休み、終わ・・。畑、仕事、戻ったのよ」
中休み? って何だろうか。
「中休み、なに? 『お昼』、違うの?」
「『お昼』? ・・・? 。今は、朝、夕の真ん中。だから、『中』なのよ」
どうやら『昼』という言葉は無いらしい。その代わりに『中』なのか。時間や暦はこの世界独自のな数え方があるのだろう。世界が違うのだから当然といえば当然か。
言葉はもちろんだけど、それ以上に、この世界で生まれた設定なのだから生活のリズムは当然知っていなければならない。
生活に馴染むのは大変そうだ。下手な事を口にしてボロが出ない様に注意も必要だな。それ以前に満足に会話出来ていないけど。
施設の説明をもう少し詳しく教わりながら、畑というか庭を半周して礼拝堂の近くに辿り着いた。
人の声がするので、お祈り中なのかな? と窓から覗くと子供と大人が数人、入り口の方に向かって座っている。 お祈りをしているにしては不可思議な光景だった。何故なら本来祈りを捧げる方向とは真逆に向かっているからだ。
「何? してるの?」
「今日・・・、算数。先生、テレサ」
「算数? 何?」
「色々、教えて・・・。また、後で、・・・・」
良く見れば学校っぽい感じだった。この修道院は寺子屋の真似事もしているのだろうか?
あまりジロジロ見ては失礼だと思ったので、案内へと踵を戻す。
残り半周をして北東の鶏舎の奥に辿り着いた。
そこにはトイレ・・・と言うよりは『厠』って感じの建物があり、肥だめらしい何かに繋がってた。
「夜の・・・、ここ、・・・捨てる・・・」
臭いが強めなのもあり口を噤んだまま軽く頷いた。『おまる』のをどうすれば良いのか分かったのでこれで十分だ。
入る物があれば出る物があるのは当然だけど、今は詳しく知りたいとは思わなかった。
こんな感じで簡単にこの修道院の敷地をおしえてもらった。クレハの歩みに合わせたので時間は掛かったけど、その分敷地内をゆっくりと眺める事ができた。
そして部屋へと帰って着た。
戸を開けるとシスター・レミアと一緒に来た少女、え~と、名前は何だったかな? 私達が着ていた服を畳み抱えて待っていた。
出る時の惨状が、嘘の様に綺麗になっていて驚いた。もちろんあの少女が掃除をしてくれた事を確認するまでも無かった。
「ムゥルタン、ダァンコン」
イントネーションは微妙かもしれないけど、できるだけしっかりとありがとう言葉の言葉を告げる。
「・・・だぁんこん。ありあ」
クレハも続けてお礼を言った。そうだ、名前はアリアだった。本当に名前を覚えるのが苦手だな、私は・・・。
アリアは微笑みを返して、シスター・レミアに何か話してから去って行った。残念ながら何て言ったのかは早口だったのか聞き取れなかった。
「なんて、言った、?」
「服・・・、洗う・・・返す・よ。・・・夕食に・・・来ます。待っていて・・・」
シスター・レミアそう答えて去って行った。彼女の言葉は聞き取り易いけど、まだまだ分からない単語が多いなぁ。
とりあえず夕食までクレハと『反省会』の時間が出来た。当然だけど2人きりだと日本語での会話となる。
「・・・それで、リトはかんがえすぎなのよ! ひとのかんがえをよそうしすぎ!」
藁布団に寝転びながら、私の腕を枕にするクレハが語る。
「そんな事言っても、相手に合わせるのは必要な事じゃないか」
前の世界では、周囲の人の目を気にしなければならない環境で培ってしまった共感力という能力、というか癖が付いてしまった。役に立つのかと問われると微妙で、先回りし過ぎて空回りした事も多い。
「私達の存在はバレてはいけないのだろう。注意に越した事は無いと思うけど」
「そうよ。バレてはだめとおもう。でもね、このくにでは、がいこくじんなのよ。わたしたち。がいこくじんは、しゅうかんのちがいで、はじをかくのは、とうぜんなの。きにしてたら、いきていけないよ」
「旅の恥は掛け捨てって言いたいのかい?」
「そのまんまだよ。えっせいまんがに、そうかいてあったよ。わすれたの?」
「忘れたっていうか、そもそも覚えて無い。記憶力良いな」
「リトが、おぼえなさすぎ、な、だけだよ」
確かに、ゲーム理論とかいう最適解を無駄に考える事が多い分、覚えるのは苦手だ。特に人の名前とか。
そういう意味ではクレハは真逆な存在に思える。いや魂か。
「それじゃ、記憶力の高いクレハに質問。なんで腕枕なんて強要する訳? 腕が痺れて辛いんだけど」
「だから、スキンシップよ。ふれあうことで、しあわせをかんじることができるの。こどものいまだからできる、たいせつなこと。おとなになったらできないのよ」
そう云えば生き苦しくて、心の許し方とか調べた事あったっけ。
子供の時に親との触れ合いが薄いと、愛情不足になって辛いんだとか。大人になってからでも間に合うって事だけど、衆目を考えたら、そう簡単に触れ合いなんてできる状況じゃない。
こういう場合は、アニマルセラピーという、動物との触れ合いで心を癒やす方法もあるらしい。ペットを看取れる事が条件ではあるけど。
「そうか、愛情を満たして人生やり直したい。という事で良いのかな。もちろん例えとしての意味だけど」
「そうよ。リトもいっしょに、だよ。だからこうしてるの。リトずっとくるしんでたから・・・」
「成る程ね。だからベタベタしてた訳って事か。始めの頃は不自由があって伝えられなかった。と言う事か。納得しまよ。なんとなく・・・」
「・・・いや・・・だった?」
「まとわりつかれるのは苦手だから、本音、鬱陶しいと思った。だけど・・・」
口だけの心配なんていう薄いモノでしか経験が無かったから、全身全霊で心配しされた事に心揺さぶられて不意に目が滲む。「年を取ると涙もろくなっていけねぇ」とか自分に言い訳をするが、表情が麻痺した様に緩む。
「・・・ありがとう」
呂律が回らないので端的に感謝を伝えた。
「どういたしまして」




