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悪魔契約に縛られた異世界生活 第2幕(異世界生活編)  作者: 雨宮 白虎
第2章 トキザミの国(入国編)
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045 新しい朝が来た

 カンッ! カカンッ!! ・・・ドザッ、どざざざー。

 木が叩き合う音と、何かが泥を滑る音で目が覚めた。


 見覚えの無い木目の空と、チクチクする布団。

 そして半開きの窓から吹き込む冷たい風の奏でが、この状況が現実なのだと(さえず)る。

 天井さんと(だんま)りでお見合いしていてもしかたないか。「もう少しお近づきになりませんか」っと。

 そんなくだらない事を囁きながら起き上がろうとしたが、あれれ? 体が重くて動かない。これは金縛りというのだろうか。

 オカルティックな状況で無いのなら、昨日の疲労が原因だろう。正直言って藁のチクチクで眠りが浅かった。要するにレム睡眠(※)の最中って事だ。

 そうか、今までの出来事は夢の中だって事か。それで、この後に目が覚めたら何にも変わらない社畜な日常に戻るのだろう。それなら、もう一度異世界の旅路の続きをしようじゃないか! と必死に瞼を閉じた・・・と言えば格好いいのかな? ぶっちゃけ言ってしまえば、コレは二度寝をする言い訳だだったりするんだけどな。


※レム睡眠:

 浅い眠りで、脳が活動している反面、身体が休息していて動けなった結果、金縛りと呼ばれ現象となる。


 ぺちん、ぺちん、キュウキュウと頬の痛みが増してきて、流石に、流石に・・・

「痛い、痛い、痛いって!」

 耐えかねて痛みの原因を探すと・・・

「リト~。おはよう・・・じゃなくって、おそよう~」

 クレハが体の上に乗り上がっていた。道理で体が重くて動かない訳だ。

「なぁクレハ。何故私の上に乗っているのか、説明を求めてもいいかな」

「むふ~(。・ω・。)。スキンシップだよ~。心を近づける大切な事だよ~」ごろんごろん。

 なんというか、不可解な出来事よりも、今の状況を冷静になって眺めている自分に驚いた。

「もしも、今が夢じゃ無いなら降りてくれませんか? クレハちゃん」

「えへへ~。「ちゃん」つけだと、てれるね~。てれかくしに、もうすこし、こうしてる~」

「そうか。やっぱり夢の続きだよな。異世界とか兄妹とか、有り得ない事が多すぎるよ。それじゃ寝直すとしますか。目覚まし鳴ったら起こしてくれると嬉しいよ。じゃぁ、おやすみ~」

 そう言って目を閉じたら、体の重さは無くなった代わりに、こじ開ける様に瞼を引っ張られた。

「ほら~。どいたから、おきてよ~。リト~」



 起き上がって眺める遠い天井に近い床。短い手足とお仕着せ衣装、それとエプロンドレスの幼女の姿が、これは現実なのだと裏付ける。

「凄いなぁ。異世界転生って本当にあるんだ。やるぞ~↓冒険してやるぞ~↓」 

 大きなため息の後にやる気無く呟いた不抜けた言葉に

「なぁに? 空島でも探検するつもりなの」

 と、口裏でも合わす様にてクレハは返事をしてくれた。

 思わず可笑しな事を口にしてしまったの、てっきり「なに馬鹿な事言ってるの!」と罵られるのかと思っ

た。

「じょうだんはおしまい。それよりもごはん、たべよう。いりぐちのよこに、よういされてるよ」

 パン! と叩いてクレハは入り口を指さした。

 入り口の脇にパン切れにスープが2杯用意されている。

「どうしたの? あれ」

「シスター・レミアがおこしにきてくれたけど、リトはぜんぜんめざめなかったんだよ。だから、おきたらたべられるように。ってもってきてくれたの」

 ん~・・・迷惑掛けちゃったかな? 気遣いしてもらって罪悪感が湧き上がる。

 とはいえ、頂いた親切は正面から受け取って、しっかりとお礼を伝えるのが私の信条だ。それに何度か遠慮してから「それ程勧めて頂けるなら」というやり取りは苦手だ。

 意地汚いとか浅ましいとか思われてしまったこともあるが、準備してくれた事に対して否定的な素振りの方が失礼じゃないのかな~とか思ってるし、精一杯に喜びを表現した方が嬉しいんじゃないのかな? と考えてる。逆の立場なら、申し訳無いって姿より、喜んでいる姿の方が嬉しい。もちろん時と場合によるけど。

「そうだね、シスター・レミアの心遣いに感謝して頂こうか」

「うん。でもそのまえに、きがえ。このふく、よごしたくない」

 土埃まみれなのに今更ってきがするけど、こう言うのが乙女心なんだろうか。

「てつだい、よろしく。ひとりじゃむり!」

 そう言ってクレハは背中を向けた。


 エプロンドレスは背中開きの仕様なのでクレハ自身では脱ぐのは大変だ。なによりファスナー式じゃなくって隠しボタン式だから尚更だ。

 『神様の空間』・・・じゃなくって『メフィストの空間』の時、着付けに苦労させられたボタン式。

 あの時は何でファスナーじゃないんだって焦れていたけど、考えてみれば中世の世界ではファスナーなんて存在していない。たしか19世紀の発明だった気がするから、この世界ではオーパーツ扱いだ。下手な疑い掛けられなくて良かったと安心しつつ、メフィストの気遣いには今更ながら恐れ入る。



 窓の景色を眺めながら食事を取り始めた。

 お日様の高さから既にお昼って頃合いか。「新しい朝が来た」じゃなくて「新しい朝が過ぎていた」って所だろう。

 本当なら『ながら』での食事はマナー違反なんだろうけど、庭でチャンバラ・・・って今はこんな言葉使わないのかも知れないな。

 大人2人に見覚えのある子供が2人、剣の稽古をしているのだろう。木を叩く音の原因が分かったし、興味が尽きないのでついつい見入ってしまう。

「リト。パンおねがい」

 パンは固いのでクレハには千切れない様だ。

 昨晩と同じく千切ったパンをスープに浸してから口元へ運ぶ。なんか親鳥になった気分がしてならない。

 もしかしたら甘えているだけのかもしれないけど、当面はこのままで良いのかな? まんざら悪い気もしないから。


 スープの残りをパンで拭ってから最後の一口を頬張っていると、トントンと扉を叩く音が響いた。

 口に物が入っている私に代わってクレハが扉に向かったけど、ドアノブに届かなかった。

 慌ててモゴモゴしている口に手を添えなが扉を開くと、シスター・レミアと昨晩の少女が1人、姿を現した。

「まぁ、カタスツロフォ(大惨事)!」

 シスター・レミアが驚き呆れていた。

 それもそのはず。部屋中に布団の継ぎ目から溢れた藁が散乱していたのだ。

 私の寝相は悪いって自覚はあったけど、この惨状を改めて見渡すと本当にとんでもないなと自己嫌悪になった。

「ごめ・・・・」

 っと、日本語じゃ駄目だった。

「ミ、メダユーラス」

 と、この世界の言葉でごめんなさいをした。


「アリア。・・・よろしくて・・・」

「はい。シスター・レミア」

 クレハがアリアと呼ばれる少女へ駆け寄り手を伸ばした。私もクレハの後を追いアリアの元に駆け寄った。

「おね、ちゃん。なま、え、おし、えて」

 手を握る挨拶は万国、いやどの世界でも通じればいいな。もしも駄目な国が有ったら教えてほしい。失敗しないように注意したいから。

 少女は私の手を握り、クレハの手も持ち上げて答える。

「アリア。わたしは、アリア」

 腰を落とし目線を同じ高さにて、私とクレハの顔をしっかり見つめながら、ゆっくり丁寧に話してくれた。

 「ア・リア、ア・リア」

 クレハが話した。

 アリアの表情が明るくなった。少々早口だったので聞き取れ無かったけど、多分こうだろう。

「そうよ。アリアよ。上手に言えたね。クレハちゃん」

 アリアはクレハを抱き、頬と頬を合わせて嬉しそうだ。

 小さい子は得だなぁと羨ましく思いつつも、私の中身を考えたら怪しい絵面になったので頭を振って、考えを振り払う。

「おねがい、します」

 今日、お世話になる方だからとお辞儀をする。

 そして顔をあげると、アリアは正面に座っていて顔がとても近かった。

 近い近い近いっ。嬉しさと恥ずかしさと、なんとなくくすぐったさで、顔が熱くなってしまった。

「あはは、赤くなっちゃって、かわいい~」

 アリアがとても嬉しそうに笑う。 

 表情から言葉を推測するけど、木っ端恥ずかしくて、私の顔は更に赤くなってしまった。


 深呼吸して落ち着いてから、改めてアリアの姿を確認する。

 10・11歳位。体型は女性らしさある柔らかいライン。瞳はブルー。色白な肌。

 髪はゴールドのボブカット。軽くウェーブがかっている。

 ここにはヘアードライヤーというものは無いだろうから、もともと癖っ毛なのだろう。

 ボリュームを赤いヘアーバンドの様な物で押さえている。

 毛先までいくと広がってしまうのだろうか。縦にハサミが入っていて先端を薄くしている。

 それから、クレハの扱いから子供が好きなのは見てとれた。



 アリアと呼ばれた少女は掃除を始めてたけど、色々と迷惑かけてばかりで申し訳ない。

「リト、クレハ。案内・・・するわ」

「あの・・・掃除、手伝いを・・・」

「大丈夫よ。それより・・・案内が・・・先よ」



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