140 少女3人組と怪しい密会
「も~! 毎度毎度、ダンスして座って、ダンスして座って、ダンスして…。ミーはもう飽きたでござる! こんな事している間にも、苦しめられている人がいるでござる。直ぐにでも助けに行くでござる!!」
先日の『試し』から、シスター・テレサに頭が上がらなくなったござる丸は、私達と共に稽古に参加する事になった。
…はずなんだけどね~。せっかちなんだか、飽きっぽいのか、数回の参加で音を上げた。
まぁ、マスター・テレサの指導はゴリゴリに強引だし結構厳しい。
ダンスの練習も注意が多いし、座禅ではないけど楽に座っての瞑想も、うっつらうっつらしたら即叩かれる。
スパルタといえばその通りだけど、その分、独学していた時よりもしっかりと実力が付いた。
訓練の都度、階段を1段飛ばししているような感じに跳ね上がっている気がしている。
それはマスター・テレサも実感しているからこそ、クレハを『試し』に選んだのだろう。
「あらまぁ。もう挫折ですか。クレハと同じ事をしているだけですのに、呆れたわね」
「飽きたのではないでござる。踊っても座っても世界は平和にならないでござる。剣を、魔法を教えるでござる!」
嗚呼、言っている事がチグハグだよ。本当に飽きたんだな。色々と想像を上回るよ。まったく。
私達3人、無言で頷いてから、ナーガが「修行が進まないから何とかなりませんか?」とマスター・テレサへ口添えをした。
「それもそうね」
と応えると、続いて
「私ではサスケへの指導は『役不足』でしたわ。要らぬ時間を掛けてしまった事は謝罪しましょう。ビリージェルが適任かと思いますので今後は彼にお任せしましょう」
「いえす。剣と魔法を教われるならOKでござる」
はー。ござる丸の『共通言語』能力はどんな翻訳していたんだか。
返事の仕方から『力不足』と翻訳した様な気がしてならない。だけどマスター・テレサも人が悪いな。
この言い回しは「ござる丸の能力は私の修行に耐えられない程に弱い。私の技量ではござる丸は未熟すぎて無駄だ」という意味だろうな。
なんで誤訳し易い日本語を知っているのか、テレサも姫様やトキザミ様と同様に謎が多いと思った。
結局、この後は修行にならないので、早くに切り上がったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ナーガは直ぐさま街の散策へと遊びに向かった。
街中を走り回りたいのか、コソ練の広場へ向かったのかは知らないが、塀の中は飽きたんだろうな。
出来れば一緒に図書館で読書すれば良いのに。
そう考えながら、クレハの着替えを手伝っていた。
やっぱり女の子だもんな。自由な時はみんなと変わり映えしない服よりも、オシャレな格好をしたいだろうし、私としても可愛く着飾ってあげたいと思った。
前の世界でのドール趣味の延長というと聞こえが悪いけど、可愛い盛りの年子に可愛い服で着飾りたいのは親心か孫を愛しむ心ではなかろうか。そんな言い訳を考えていた。
まぁ、クレハの希望でもあるので、利害の一致と思って欲しい。決して■リコンではない。
礼拝堂の元厨房な物置で着替えが済んで、さぁ図書館へ向かおうと外に出た時、少女3人組に呼び止められた。
理由が分からない。
仲は良くないが、悪くも無い。何時も3人で話し合っていて割り込む余裕が無いから、掃除とか必要最低限の付き合いしか無い。付き合いの浅さは孤児のみんなも同じだ。
恨まれる事も、虐められる理由も無いはずなのだけど、勘に障った事をしてしまったのだろうか? 無自覚で口にする事あるからぁな~。
と身構えていると、なんか3人ともモジモジしていて、「わたしは嫌だよ恥ずかしい。あなたから言いなよ」と言い合っていた。
なんだかな~。と眺めているとクレハがこっそりと耳打ちする。
「よかったねリト。これは告白タイムよ。独りだと恥ずかしいから一緒にいてね。って状況よこれは。やったじゃ無い。ラブラブチャンスよ。やった~。あ、でもアリアにどうやって言い訳しようか?」
この、ニタ~っとした薄ら笑いをする時は、弟を玩具にして愉しんでいる表情だ。笑顔でも全く嬉しくない。
「そんな訳無いだろ。漫画の読み過ぎ。ドラマの見過ぎ。パンを咥えて「遅刻する~」って走る位に有り得ないから。それになんでアリアが出てくるんだよ」
「この鈍感は、困ったモノだわ。で、彼女ら3人組だけど、わからないわよ~。現実は小説より奇なり。って言うじゃ無い。予想の斜め前の事が起きるかもよ~」
「はいはい。そうですね~」
これ以上からかわれたくないので、棒読みで返事をした。
風が冷えてきた屋外で、このまま引き止められても困るから、こちらから声を掛けるか。そうしないと進展が無さそうだからな。
「あのね、お姉ちゃん達は僕達に何かご用ですか? なにか困ってるのなら、できる事なら『協力』するよ」
「ほんと~」
「ありがとう」
「よかったわ~」
私からの声かけで、堰を切ったように話し出した。
そして、息を合わせたかのように声がハモった。
「「「お願い、リト。私達につ・・って欲しいの。お願い」」」
はい?!
ハモって、重要な所が良く聞こえなかった。「つ・・って欲しい」って、え? 本当にクレハの言う通りに告白タイムだった訳???
クレハも同じく聞こえたのだろう。肘でツンツンしながら
「良かったわね。両手に花、いいえ、花束じゃ無い。この年でハーレムなんて、このっ。このっ」
と、からかいが再開した。
100歩、いやいや万歩下がって、これが告白だとしても、間違いなくド修羅場確定だろ。これって。他人事だと思って愉しむなよ。
兎も角、良く聞こえなかったのだから、聞き直そう。勘違いしたら恥ずかしいのは私の方だ。
「ねぇお姉ちゃん達。声が重なって良く聞こえなかったの。ごめんなさい。僕達に何をして欲しいのですか?」
少女達はそれぞれ、台詞に役割が有るように、順々に話し始めた。
「ごめんねリト。繰り返すね」
「お願いがあるの。私達に…」
「つくろって欲しいの」
「「「そうそう。クレハちゃんみたいに」」」
「可愛い服が」
「私は大人びた服が」
「私は綺麗な服が」
「「「着たいのよ。お願い、リト!」」」
口を半開きにしたまま、唖然としてしまった。
告白は有り得ないだろう。とは思っていたけど、「服を繕って欲しい」とは、クレハの言った通り『予想の斜め前』の事態となった。
流石にこれはクレハも予想してなかったようだ。唖然としたまま固まっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
動転した心を落ち着かせるのに、少々時間が掛かった。
「あのね、僕よりも街の衣服屋さんの方が綺麗で可愛い服が沢山有るよ。衣服屋さんに相談した方が良いと思うんだ」
「私達はリトにお願いしたいの」
「だって、衣服屋さんのはサイズ合わないし…」
「それに、衣服屋さんの高いし…」
「自分用に仕立てて貰うのなんて、更に高くて、絶対無理なの」
「「「だから、お願い。ねぇ『協力』してくれるよね」」」
軽く断るつもりが、見事に言葉尻を捕まえて言い換えてきた。ちょっと失敗したな~。出来ない言い訳考えないと。
「僕、男の子だよ」
「うん。知ってるよ」
「仕立て服って、採寸する必要があるんだよ」
「それも知ってるよ。『お手伝い』先で学んでるから」
「採寸は裸にならないと出来ないんだよ。男の子の前で」
「でもクレハの服はリトが仕立ててるんでしょ」
「それなら、何の問題も…」
「危惧も…」
「杞憂も…」
「「「まったく何も無いわ。大丈夫よ」」」
クレハが袖を引いて耳打ちをする。
「良かったね。幼い少女の裸を見放題、触り放題だよ。やったね! リ・ト!」
ゴツン!
あまりに赤裸々な台詞を聞いて思わず頭頂を小突いてしまった。
「いった~い~。もう、なにするのよ~。って、あら、おかお、まっかっか。いいすぎちゃった? ごめんね~」
もう恥ずかしいやら何やらと、色々な感情が押し寄せてきて、赤面のまま声が出せなくなっていた。クレハの馬鹿! 変な事言うなよ!!
「ねぇリト。私達は大丈夫」
「オシャレの為なら何でもするわ」
「一肌でも二肌でも脱いでも構わないわ」
「「「だからお願い! 私達に服を繕って欲しいの!!」」」
「は…、はい。協力、させて…、いただきます…」
3人組の息の合ったの迫力に負けて、請け負う返事をしてしまった。
あ、そうだ、これだけはハッキリさせとかないと。
「その代わり、条件があります」
「「「な~に?」」」
願いを受けてくれると分かってか、嬉しそうに返事が返ってきた。
「古着、生地等の材料は自前で用意する事。
何度も採寸する事になるから、協力してくれる事。
そして、
『お手伝い』の時間が減るから、その分の仕立てる手間代が欲しい。
これが条件だよ」
「「「もちろん、良いわよ。でも手間代はお小遣いで払える程度でお願いね」」」
ちゃっかりと値切ってきた。
いや、打算と言うより、お小遣いが少ないからお願いに来たんだよな。当然だな。
「それじゃ、色々と準備が必要だから、用意できたら部屋へ行くからね」
「「「は~い。待ってるからね~」」」
何となく危険な約束をしてしまった気がする。
どうしよう…




