求心力
住吉。
織田信孝「えっ!?叔父上を!?」
蜂屋頼隆「致し方ありません。」
織田信孝「斯様な噂で……。」
蜂屋頼隆「確かにその通り。信澄様が明智に加担するとは到底考えられません。しかし……。」
世間はそうは見ていません。
蜂屋頼隆「信澄様は明智の娘婿である事に加え、父信勝は信長様に手打ちとされています。その明智が信長様を討つ。あの明智が。となればそれ相応の準備。担ぐ神輿を用意をしているに決まっている。それが……。」
織田信澄。
蜂屋頼隆「もし明智が信澄様と合流し、我らを10年に渡り苦しめた石山を拠点に構えたら、手出しする事は不可能。それどころか兵を南に動かして来る恐れもあります。」
織田信孝「……その前に叩く他無いのか……。」
蜂屋頼隆「これ以上の戦線離脱者を出さないようにするためには、信孝様の求心力を高める必要があります故。」
石山。
津田信澄「信孝様が!ここに!?」
「はい。間違いありません。」
津田信澄「使いの者は?」
「来ていません。物々しい雰囲気であります。」
津田信澄「斯様な噂に惑わされるとは情けない……。して敵の手勢は?」
戻って住吉。
丹羽長秀「手勢は心許ありませんが、残った者は皆精鋭。実戦で使える者ばかり。石山には弱点がある事は……。」
織田信孝「承知している。」
丹羽長秀「恐らく信澄もここに戦力を投入する事になる。そうなると攻め落とすのは難しい。しかし信澄が居る石山のすぐ北には……。」
明智の兵が控えている。
丹羽長秀「噂はあくまで噂。信澄が信長様の恩を忘れるはずは無い。信澄は明智の攻撃への備えを強化している可能性が高い。明智が攻めて来るのは北。我らが居るのは石山の南。丸裸の状態と考えて間違いない。しかも石山の南は……。」
石山。
津田信澄「南から攻められたら一溜りも無い。」
「はい。信孝勢は恐らく大手から攻め寄せて来る事は必定。」
津田信澄「明智への対応をしなければならないこの状況で兵を分けなければならないのか!」
「仕方ありません。」
津田信澄「斯様な戯言に乗るとは愚かだ!」
住吉。
蜂屋頼隆「これはあくまで信孝様の求心力を維持向上させるための戦いであります。事の真偽ではありません。」
織田信孝「……わかっている。」
丹羽長秀「ここで後れを取ってしまっては、肝心な御父上並びに兄上の仇を討つ事は出来ません。」
織田信孝「……わかった。皆に伝えよ。石山を攻める!と。」
丹羽長秀「御意。」
織田信孝は住吉に残る兵を集め石山目掛け北上。津田信澄との激闘が幕を切って落とされたのでありました。




